アイドルの元彼

冬田シロクマ 

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最初、声のトーンから傷付いているのかと思った。
だがゆうの顔は、声のトーンとはかけ離れていた。
好戦的で、イラついてるようで……

これ、ぼくが言う言葉によっちゃこぶしが飛んでくるな…

ゆうに殴られたこともないのにそう思う。
だが半ば強引にされたりと、昔のゆうとは違った。
昔からよく他人には攻撃的で、当たり散らしていた。
よく物に当たっていた。
が、その苛つきをぼくに向けたことはなかった。
ぼくに会うと苛つきは収まっていった。
だけど今は……周りに対する態度と変わらず機嫌の悪さを俺に伝える。
………

嫉妬だと思った。
酷く魅力的な彼に向けて。
妬ましく彼の整った容姿、危うさに魅了された。
自分だけ見てほしいと思った。
ゆうを取り巻く人間とは違い、ご機嫌取りはまったくせず、無関心な態度をとり続けた。
ゆうすけの周りにはいない人間を一生懸命演じた。

そういうとき、ぼくはふと疑問を感じた。
こんなに彼の気を引いてなにをしたいのか。

お金目当てでも無い。
ただほしいと思った人間の注意を引きたい。
だが、身体の関係までになるとは思わなかったが…

それで絆されていった。
疲れてきたのもあるかもしれない。
彼と距離をとりたい。
重く感じていたんだ。
問題なのは、ぼくがゆうのためとか言いながらほんとうは自分の感情を最優先にしていることだ。

飽きられるのが怖くなったのかもしれない。
自分から切り、ゆうすけの距離を取る。
華やかな世界でゆうの熱愛が出ようとも、過去に自分からゆうを切ったという事実だけはぼくの中に残る。
しょうもないことだが、それによってぼくはまだ自分を保てる。
中身が薄っぺらいとゆうに知られると、真っ先にぼくは飽きられ切られるだろう。

「ソラは…冷たいよね。」

そう言われたことがある。
身体の関係が続いてあるとき。

否定しなかった。
たしかにそうだと思ったから。

「ソラのそばにいられるなら、俺はなんでもするよ。」

そう笑うゆう。
ぼくは固まった。
別れを切り出そうとしているときだった。
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