底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂

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第5章

第13話

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第13話

 新しいパーティ申請にメンバー加入にと、今日だけで色々あったものの、新しいメンバー加入の歓迎会としてシロヤマがお勧めする、街一番の料理と酒が楽しめる飲食店にきているのだが、どうも冒険者に向いてない店のようで、俺たちのパーティ全員が浮いて他の客にジロジロと見られている雰囲気であった。
 しかしシロヤマだけが、そんな空気なんぞ知ったことかといわんばかりに、次々と沢山の料理と酒を注文してシーバスに分け合って楽しんでいる。

「ねえミーツさん、僕たち場違いじゃないですか?」
「うん、それはちょっと俺も思ってたけど、シロヤマは次々に注文してるし、今日は彼女の歓迎会だし、彼女の好きにさせるしかないね」
「おじさんおじさん、あたしもう別の所でもいいよ。ここ、絶対高いよ。シロヤマ姉ちゃんは沢山頼んでるし、食べれば美味しいけど、なんかあんまり食べた気がしないよ」
「ですです。私もいつも行ってるような酒場がいいです」
「なあにぃ、アマとアミはボクが選んだ店が気に食わないって言うのお?」


 彼女はヒソヒソと話しかけてくる、アマとアミの背後に回り込んで両肩に手を回して絡んできた。 この店の酒は高いわりにはそこまで美味しいとも思えないものの、酒を水のように飲むシロヤマに合わせて飲むものだから、酔いが早めに回ってくる。
 しかし、こんな所で記憶がなくなるまで飲んでしまったら、恐らくだがとんでもないことをしてしまうと危惧し、体内の酒の成分を分解するべく、想像魔法を使って自身の体内のアルコール成分を除去した。
 ただ、いくら彼女も水のように飲んでいても、酒は酒なため、飲み過ぎによって完全に酔っ払って彼女と同じくらい飲まされていた彼氏のシーバスも、酔い潰れてテーブルに頭を乗せてイビキをかいて寝ている状態だ。

 もうこの辺りで締めないと終わりがなさそうだと判断して、シーバスは俺が背負って酔っ払いの彼女はシロに背負ってもらって店を後にしたが、会計の時、飲食だけなのに、ちょっとした魔道具を買えるほどの金額になってしまった。
 そのときアマとアミも俺の側にいて、目をまん丸にして口をパクパクとしているのは少し面白かった。 店を後にした後のシーバスの介抱はとても大変だったが、それ以上に大変なのがシロヤマだ。

 シーバスはまだ起きてすぐ、ひたすら嘔吐しているだけで済んだが、シロヤマは街中で魔法を俺に向かって放ち出したのだ。 まだ水の魔法で、そこまで被害があるわけではないが、彼女の頭を冷やすためにも、シーバスはシロに任せて彼女を街の外に転移魔法で連れ出すのに成功した。

「うー、ひぃっく、あれ?ミーツくん、ここ何処ぉ?さっきまで街にいたのに、あれシーバスもいない」
「さっきから俺に水の魔法を放っていたから危ないと思って、頭を冷やすために外に連れ出したんだよ」
「ふえ、あー、なるほどね!ミーツくんのその膨大な魔力は伊達じゃないってことだね。つまり転移魔法を使ったんでしょ?普通、転移魔法って物凄くMP消費が激しいから、効率がよくないんだよね。でもその効率が良くない魔法をポンポン使えるミーツくんは何者なの?」

 つい先程まで酔っ払っていた彼女は、魔法のことを考えると急に饒舌になり、目が座った状態で俺のことを問い詰めるように聞いてきた。


「何者って言われても普通のおっさんだよ」
「へん、そんなの嘘だね。普通のおじさんがこんな魔力を持ってるわけないじゃんか!
ボクはシーバスたちと同じ馬車で、ミーツくんが街に入ってきたときから気が付いていたよ。
とんでもない魔力の化物がやってきたってね」

 彼女は仲間になったんだ。特に隠すことでもないが、ここまで言われたら仕方ないと思って、想像魔法のことを話した。それから想像魔法についてと、今までここまでくるまでの経緯を話したら、彼女はうんうんと頷いたまま眠ってしまった。 どこまで覚えているのだろうかと思いながらも、彼女を抱きかかえて転移魔法で街に戻り、俺が泊まっている部屋のベッドに寝かせて、外でまだ吐き続けているシーバスの元に向かって、彼の体内のアルコール成分を除去する想像魔法を使って、スッキリさせたあと彼とシロは一足先に宿に帰ってもらって休んでもらって、あの高級な店で碌に食べてなかったアマとアミと一緒に安い酒場で食事を済ませた。

「おじさん、今日はどうするの?ベッドはシロヤマ姉ちゃんに取られちゃったし、あたしと一緒に寝る?」
「アマ、ダメだよ!ミーツさんがベッドが無いっていうなら私がミーツさんと寝るからアマはベッド使ってよ。アマは寝相が悪いんだから、ミーツさんが一緒に寝たら困るよ」


 食事を済ませたあと宿屋に帰って、ベッドが足りない現状をどうするか考えていると、俺と一緒に寝ると言い出したアマにアミはストップを掛け、俺と一緒に寝るのは自分だと言い出したところで俺は黙って部屋から出て、他に空室の部屋はないか宿の女将に聞くも、流石に夜にそう言われても用意が出来ないと言われ、仕方なくシーバスたちの部屋に無理矢理想像魔法で出したベッドで休んだ。

 次の日に無言で部屋から出て行ったことで、アマとアミにシーバスの部屋で寝ていたところを見つかり、ベッドを収納させられ、床に正座させられた状態で叱られてしまった。

 俺の年の半分にも満たない子たちに叱られて、気まずい気持ちになりつつも、何も言わずに出て行った俺が悪いと思って、仕方なく説教を受けた。シーバスとシロヤマが俺が叱られているのを、ニヤニヤと笑って見ていたのが、少々気に食わなかったが、そんな彼らをシロが怒ってくれたからよしとしよう。

「結局、シロヤマは昨日渡した金は何に使ったんだい?」
「ああ、あれか、ミーツさんがくれた金は、彼女が色んな所での飲み食いして借金していた所に返済しに行ったんだ。それで残った金で屋台で食った肉串で使い切ったんだ」

 俺はシロヤマに聞いたつもりだったが、代わりにシーバスが答えてくれたが、金貨三十枚ものツケを考えると、彼女は普段から金に対してズボラなのかも知れないが、依頼で請け負るときの報酬を考えると、報酬で貰える金は、そんな簡単に使い切れるものではないのに一体何に使っているのだろうか。

「うーん、もう仲間だし、話してもいいかな。
ミーツくん、今ボクが報酬での金を何に使っているか考えているでしょ?」
「うん。何で分かったんだい?」

「それくらい、そんな顔を見れば分かるよ。
シーバスにはだいぶ前にバレてるから言うけどね、ボクが貰ってる報酬で、色んな所に奴隷として売られてしまった家族と友達を買い戻しているんだ。もう随分と前になるけど、エルフの所有する神聖な木を巡って、人間のと争いになっちゃってね。 その争いにエルフは負けちゃって、奴隷として、生き残りのエルフのほとんどが連れて行かれちゃったんだ。
 そのときボクはまだ小さかったから、見逃してもらったけど、ボクの兄さんや姉さんたちが捕まって、奴隷として連れて行かれちゃったんだよね。それで、ボクが大きくなって、それなりに力を付けてようやく結構な額のお金を稼げるようになったとき、とある街で酷い扱いをされてるエルフを見かけたとき、記憶にあった知ってる人がいたんだよね。
 それからは巨額の大金を使って譲ってもらったり、どうしようもない所有者には多額のお金を使って暗殺を依頼したりしたんだ。
少なくない人数の人たちが、既に亡くなっちゃってたりもするけど、大分集まってあともう少しで終わりそうなんだよ。
こういうわけで、ボクの巨額の報酬は家族たちと仲間たちを買い戻すために使っているんだよ。
納得してもらえたかな?」


 彼女の事情を知っているであろうシーバスは腕を組んで時折頷いて黙っているが、アマとアミにシロは涙を流して彼女の話を聞き入っていた。


「あ、あとね。シロくんにお願いがあるんだけどいいかな?」
「へ?僕ですか?いいですけど、ミーツさんやシーバスさんじゃなくていいんですか?」
「うん。もちろんだよ。むしろシロくんにしかできないお願いなんだよ。あのね、お願いってのはね。シロくんの名前を変えて欲しいんだよ。
シロとシロヤマって微妙に被ってて、咄嗟のとき紛らわしいでしょ?だからシロくんは、元の名前の士郎で名乗って欲しいんだ。
もちろんボクたち、仲間内だけでいいからね」
「え?なんで僕の名前が士郎だって…」
「そんなの鑑定スキルを持ってるからに決まってるじゃん!でもミーツくんのは、絶対持ってるスキルや、ステータスの表示が違うスキルや数値で見えるから、ミーツくんは、偽装の魔道具を装着しているんだろうね」

 彼女は唐突にシロの本名である士郎の名を言いだして、俺が偽装の魔道具を装着しているのを言い当てた。


「ボクの鑑定のレベルが高くても、ミーツくんの本当のステータスは見えないから安心していいよ。シロくんは、普通にシロくんの名前の横に川野士郎って表示されてるからね。それで、どうかな?ボクたちの呼び合うときだけ、士郎くんって呼んでいいかな?
 漢字については、ヤマトで時々教えてもらったりしているから多分合ってるはずだけど、もし違ったら言ってね」
「も、もちろん僕はいいですけど、なんか本名なのに久しぶりに呼ばれると恥ずかしいですね」
「じゃあ、決まりだね。皆んなもシロくんのことは士郎って呼ばなきゃだよ」
「別に俺はどっちでもいいけどよ、シロも士郎も変わらなくないか?ミーツさんはどう思うよ」
「俺もどちらでもいいかな。シーバスの言う通り、大して変わらないと思うし、シロが嫌ならこの話は変わらないってことで、終わりにするし、シロが変えてもいいと言うなら、シロヤマの案通りにパーティ内のみで呼び合うのを変えてもいいと思うよ」
「僕はシロヤマさんが呼び方を変えたいなら、全然構わないですよ。ただ、ギルド証に記載登録してあるのがシロなんで、公の場でさえ言わなければ、呼び方変えてもいいです」
「じゃあ、それで決まりだね。皆んなはシロヤマの案の通り、たった今からパーティ内で行動するときのみ、シロのことを士郎と呼ぶこと。
ギルドなど、周りに他人が複数人いる所ではシロと呼ぶことでいいね」

「シロさんってカワノシローって名前だったんだね」
「シロヤマ姉様にミーツさん、それならカワノさんって呼んだほうがいい気がしますけど」
「ノンノンノン、分かってないなあアミは。
カワノだったら、苗字呼びでよそよそしいじゃない。もうボクたちは仲間なんだから下の名前でよばなきゃ。あ、もちろん、士郎くんは苗字があるからって、貴族なんかじゃないよ。
ヤマトに辿り着いて、学園に入ることができればその辺りのことを学べるからさ」

 彼女はアミの前で指を振り子のように振って、カワノ呼びではよそよそしいと言って、アミのカワノ呼びは却下された。
 正直どうでもいい話が集結したころ、窓から差し込む太陽を見て、窓から顔を出して外を見たら、外は昼前くらいの時間になっていた。

「あちゃ~、随分と時間が経っちゃったね。
もう出発は明日にしよっか。大丈夫、ダンジョンの案内も、もう何十回もしているから、なにも心配せずにボクに付いてくればいいよ。
余程運が悪くない限りはだけどね」

 窓から外を見たとき、シロヤマも俺の顔の下から潜り込んで一緒に空を見上げ、出発は明日にしようってことになったものの、案内について少し気がかりができた。それは運が悪くない限りとは一体…。

「シロヤマ、運が悪くない限りってどういうことか聞いてもいいかい?」
「ん?いいよ。うーんとね、案内は最短ルートで魔物が強いルートと、安全だけど少し遠回りなのに、弱い魔物が沢山出現するルートがあるんだよね。 どちらのルートがいいかはミーツくんが決めていいんだけど、どちらのルートも運が悪ければ、ボクでもどうしようも出来ない魔物がいるんだ。特に強い魔物がいるルートの方が確率は高いね」
「お前はミーツさんにくっ付き過ぎだ!
ミーツさんも彼女から離れてくれよ」


 彼女が俺の顔の側で案内するダンジョンについて、真面目な表情になって話してくれたものの、シーバスが彼女の身体を引っ張って彼女を叱り、俺も何故か一緒に怒られた。
 彼女は彼氏のシーバスに妬いてもらって、嬉しいのかシーバスをからかって俺にピタッと身体を擦り寄ったりしたら、シーバスはまた怒ったものの、今度はアミも一緒に怒ってシロヤマと並んで床に正座をさせられた。


「ねえ、ちょっと俺は完全に関係なくないか?」
「だよね。ボクもちょっと、シーバスをからかっただけじゃんか。床に直接座るのって足痛いんだけど」
「ミーツさんは隙があり過ぎだ!俺の彼女なんですから、ちょっとは距離を取ってもらいたい」
「そ、そうですそうです!兄様の言う通りです!
ミーツさんは、女の子だったら誰でもいいんですか!」
「うーん、兄ちゃんもアミもなんでそんなにムキになって怒るのかねえ」


 アマの言う通りである。シーバスはシロヤマに告白して、付き合うとなった途端に、彼女に対する独占欲が強くなり、近くに別の異性がいるだけでヤキモチを焼くようになって、かなり面倒な男に変わってしまったようだ。
 アミもシーバス同様にめんどくさい女の子に変わりつつあるが、まだ彼女は可愛い方だし、アマがいるから問題ないだろう。

 結局、アミはアマに宥められ、シーバスはシロヤマが折れて軽く謝ることで、この話は終わり、明日から案内してもらうヤマトまでの道なりと、ヤマトまで続くダンジョンについての質問や、作戦を練ることになった。


「で、話は脱線したけど、シロヤマが手に負えない魔物を聞いてもいいかい?」
「もちろんだよ。その前に、明日この街からダンジョンに向かって出発するんだけど、ダンジョンまでの道のりが最短で二~三日かかる道と、安全な道で五~八日の道があるけどどうする?」
「二~三日の道だと、どういう道を通るんだい?」
「結構な獣道だったり、崖の登り降りをしなきゃいけなくなるよ。実力が足らない人たちだったら、その最短の道で命を落としたり、大怪我を負ったりするよ」


 彼女の説明を聞いて、俺自体は問題ないものの、他のメンバーはどう思っているかを聞いてみると、俺の意思に従うとシーバスと士郎は言い、アマとアミも危険なことがあれば、俺が助けるでしょうということで、最短の道で行くことに決定し、次にダンジョンについての説明を聞こうとしたら、それは入る前に確認するとして、話を逸らされた。







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