197 / 261
第5章
第14話
しおりを挟む
第14話
「ほらほらほら、おじさん起きてよ!
起きないとチューしちゃうよ」
「それはダメー!」
あれから今度は早めに休むことになって、この日の昼からは酒厳禁で、それぞれが適当に遊んだり、装備の点検やダンジョンに持ち込む道具の買い出しなどの準備をおこなって、士郎の新しい服や武器に防具を買ったあと宿屋にて、パーティ全員が泊まることができる大部屋が空いたとかで、全員で大部屋に移ったものの、男と女が一緒の部屋で何かあってはいけないということで、男女のベッドの間に仕切り板を設置したときまでは意識はあったのだが、急な眠気で眠りに付いて目を覚ますと、仕切り板が無くなっている。
寝起きでアマが口を尖らせて迫って来ているのを、必死にアミが止めているのを目を覚ました途端に見て、吹き出して笑ってしまった。
そのあとシロヤマがシーバスを起こしている声が聞こえて、シーバスが寝ているベッドに視線を向けると、シロヤマがシーバスの布団の上に乗って身体を揺さぶっている。
「あ、おじさん、なに笑っているのぉ?
でも、起きたならいいや。
シロヤマ姉ちゃん、おじさん起きたよー。
もう、アミったら、あたしが本気でおじさんにキスするわけないじゃん」
「でもでも、今さっきのアマは本気でミーツさんの口を狙ってたもん」
「はいはいはい、アマとアミは士郎くんと一緒に馬車を出す準備を終わらせて!ボクはシーバスを手荒な方法で起こすからさ」
シーバスはこれだけ騒いでいるなか、未だにイビキをかいて眠っているのをシロヤマは鼻と口を手で塞いで呼吸を止めるという、本当に手荒な方法で起こしにかかり、シーバスは息ができない苦しさで飛び起きた。
「ぶはあ、ぶはあ、ハァハァハァ、い、一体なにが起きたんだ。一瞬、夢で死んだ曾祖父さんが見えた。ん?シロヤマ、何で俺の上に乗っているんだ?」
「可愛い彼女が優しく起こしてやったんじゃない。でも、早く準備しないと出発するよ。早くしないと置いてっちゃうからね」
彼女は手荒な方法で起こしたことについては何も言わず、起きたシーバスの上から降りて、そそくさと自分の荷物を取って部屋から出て行った。
部屋内は既に俺とシーバスしか残っておらず、他の仲間たちのそれぞれが持っていた荷物が消えている。
「シーバスが最後に起きるのって珍しいね。
という俺もアマに起こされたばかりなんだけどね」
「多分だけど、シロヤマの仕業だ。
ミーツさん昨晩の寝るときの記憶はあるか?」
「いや無いね。シーバスも寝る直前のことは覚えて無いのかい?」
「ああ、だからシロヤマの所為なんだろう。
あいつは数多くの魔法を憶えているって前に言っていたから、俺たちに眠りの魔法を使っても不思議ではない。ただ何のために使ったのかが気になるところだが、あとで問い詰めなければならないが、ミーツさんは手出ししないで欲しい」
「分かった。でも手荒なことはしないようにね」
「もちろんだ。ただ、その間、俺の妹たちが邪魔をするかも知れないから、ミーツさんは妹たちに抱き付くとかして、止めて欲しい」
「ちょっと!兄ちゃんにおじさん!何やってんの遅いよ。女の子じゃないんだから早く用意してよね!」
彼と昨晩について話し合っていると、部屋に遅いとアマがやってきて、シーバスの荷物を投げつけて、床に落ちていたであろう俺の服を手渡されて、初めて俺が半裸でいることに気が付いた。
気が付いたものの、目の前で腰に手を置いて怒っているアマをシーバスが着替えるから出て行けと言うと、アマはそんなの今更じゃと言いかけたまま、無理矢理部屋から退室させられた。
「ミーツさんのその反応じゃ、脱いでいたの知らなかったんだな」
「うん、知らなかった。だからシーバスは急に昨晩のことを話し出したんだね。さっきの話だけど、流石にあの子たちに抱き付くのは、ちょっと考えさせてもらうよ」
扉の向こうから再度、怒った声が聞こえたことで、急いで服を着て部屋から退出したら、腕を交差に組んで頰を膨らませているアマがいて、膨らんでいる頰をシーバスが押さえて空気を出した。
「もう!兄ちゃんなにやってんの!早く行くよ!」
彼女はシーバスの腹を殴ったあと、下に降りて行き、俺たちも付いて行くと、宿屋の前に馬車が既に止められており、御者席に士郎がいて荷台から覗き込むようにアミとシロヤマが顔を出した。
「ミーツくんにシーバス遅いよお。
男二人で何やってたのお?」
「兄様とミーツさん早く乗って下さい」
急かされるように馬車に乗り込み、空が完全に明るくなる前に出発して、出発した直後のしばらくは御者は士郎からシロヤマに交代し、シーバスも彼女の横に座って昨晩のことを色々聞き出そうと尋問している。
尋問をしだしたときは俺も聞き耳を立てて、チラチラと彼らを見ていたものの、シロヤマは話をはぐらかせてシーバスの身体を触ったりして褒めちぎり誤魔化した。
そんな彼女にシーバスも最初は誤魔化すなと怒っていたものの、次第にデレデレとしだしたことで昨夜のことは無かったことになってしまった。
俺もどうしても聴きたい訳ではなかったため、シーバスのデレてる姿を見て、仕方ないと思って諦めた。
昨夜の話のことは完全に無くなったころ、シロヤマは本格的に案内をする気になったのか、馬に鞭を打ちだした。
案内の最短ルートなだけあって、最初こそはシーバスとイチャイチャしていたとき、街道を通っていたのが、いつの間にか街道から外れて森の中を走っており、シロヤマが叫ぶ魔物という声に度々外に駆り出された。
その頃にはシーバスも、一冒険者の顔になって魔物を倒していた。
「シロヤマ!こんな道しかないのかよ。
道なき道で、こんなところをいつまでも走ってると、馬も疲れちまうぞ」
「もう!シーバス、しょうがないじゃん。これが最短距離なんだからさ!それにもうしばらくこのまま走ったら、大きな崖があるから、崖下で休憩が取れるから我慢我慢ね」
この辺りの魔物は俺にとって見たことがない魔物で、熊ほどのサイズのアリがいる。最初こそは楽に倒していたのだが、段々と群れをなして追いかけてくる数が手の付けようがないほどになっていた。
森の中ってこともあって火を使うわけにもいかず、かと言って水で流そうと群れに向かって出すも、水に対する耐性が強いのか、泳ぐように向かってくる姿は少しの時間稼ぎにしかならなかった。
「シロヤマ、このままでは追いつかれるよ」
「ミーツくん分かってるよ!もうちょっとだから!」
数が数なだけあって、接近戦で戦う士郎とシーバスは役に立たない。かといってアマとアミも水や土の魔法を放つも、少量の水はアリの身体を弾くだけで意味がなく、土魔法も鋭利な石を浴びせるように放っても、アリの外殻が頑丈であるため弾かれて、弾かれた石が馬車に当たってボロボロになってしまってる始末だ。
「仕方ない、森が燃えても直ぐに消せばいいだけだし、一気に燃やすしかないね」
アリが馬車の荷台に今にも噛みつきそうなところまで迫って来ているのを見て、このままでは、掴まれて馬車を止められ、否応にも足を止めて戦わなくてならなくなって、パーティの誰かが怪我をすると思い、迫り来るアリの大群を想像魔法でシールドで囲い込んで、一気に高温度の炎を想像して燃やした。
目の前に迫り来るアリまではシールドで囲んで無かったため、燃やしたときに目の前まで炎もやってきて、バチバチといった音とともに、アリも溶けだした。
「え、え?な、なに、なにやったの?
急にアイアンアントが燃えちゃってるけど」
「多分、ミーツさんだ。こんな大規模なことをやってのける人はミーツさんしかいない。
そうだろ、ミーツさん」
「そうだね。あのままじゃ掴まれてしまうのは時間の問題だと思ったからね。ちょっと大規模になっちゃったけど魔法を使ったよ」
御者をするシロヤマが、急に燃え出したアリを見て、馬車を停止させて混乱しているのを、シーバスが俺がやったことにすぐに気が付いて、彼女に俺がやったことを教えている。
段々と遠ざかるアリを見ながら、囲んでいるシールドの中に水を流し込んでシールドを解除させたら、溶けたアリや溶けかけのグロイ奴が流れてきて、それを見た士郎は馬車の外に顔を出して吐いている。
「ミーツくんがどんな魔法が使えるのかが、気になるけど、もう少ししたら安全な所に行き着くから、とりあえず先に進むよ。士郎くんは顔を出したままだと舌噛んじゃうよ」
「うえ、す、すいません。アマちゃんたちはよく平気だね」
「ここまで気持ち悪いのは中々ないけど、士郎さんみたいに吐くまではないかな。アミは大丈夫?」
「う、うん。でもずっと見てたら私も具合悪くなっちゃうかも」
シーバスに俺がやったと説明を受けたシロヤマは驚いている。そんな彼女を見る限り、俺の想像魔法を教えたあの時はやっぱり、酔っ払って記憶になかったようだ。
でも、ここで再度言わなくてもいいだろうと思い、沈黙していると、シロヤマは崖に着いたから何処かに掴まっていてと声を荒らげた。
どういうことだろうかと、前の方に行って御者席から外を見ると、目の前に大きな崖があり、彼女は嫌がる馬を叩いて無理矢理崖に進ませると、馬は絶壁の崖の垂直に走り馬車は思いっきり傾いた。 何処かに掴まっていろというのはこういうことかと思っていると、軽くしか掴まっていなかったのか、士郎が崖下に向かって落ちてしまった。
「もう、だから掴まっていなって言ったじゃん。
しょうがないなあ」
彼女はそう言うと、懐から細長い杖を取り出して軽く振ると、落ちた士郎の身体がぽわっと紫色に光って遠ざかっていく。
「これで大丈夫。あとは下で待っているはずだよ」
「シロヤマ、士郎に何したんだい?」
「落ちる速度が緩やかになる魔法だよ。これはそういう杖だから、無詠唱でもいいんだ。この道を案内するときは必ず用意するようにしてるんだよ」
「流石、俺の彼女だ。可愛いだけじゃなく、こういうことも事前に用意できるなんてな」
こういう道具もあるのかと思い、彼女の行動に関心したが、彼氏のシーバスも彼女の有能に自慢げに語り出した。
そんなシーバスの語りは無視して、見えなくなった士郎も、まだまだ見えない底を見つめていると、掴まる握力が無くなったアマとアミが落ちてきたことにより、今度は俺が両手で彼女らを掴んで、そのまま俺も想像魔法で緩やかに落ちる想像をしようとしたら、先にシロヤマが杖で俺に光を当てて紫色に発光したのち、緩やかに落ちていき、手を振るシロヤマを見ながら落下していく。
「やっぱりおじさんはあたしたちの事が好きで大切なんだね。だって、士郎さんは見捨てたけど、あたしたちは身を投げてまで来てくれたもんね」
「ミ、ミーツさん、本当ですか?本当に私のこと」
俺の両脇にいるアマがニヤニヤしながら、茶化すようにそう言ってきたものの、アミはアマの言うことを本気に捉えたのか、真っ赤な顔をして見上げながら聞いてきた。
「違う違う。士郎も助けるつもりだったけど、先にシロヤマが動いたってだけで、お前たちを助けるために動いたのも、シロヤマよりも俺が早かったってだけだよ。シロヤマが同じ魔法を使わなくても俺は空を飛べるし、転移もできるからどうとでもなると思ったんだ。
アマも茶化すのはほどほどにしなよ。アミが本気にするからさ。それに、大切な仲間だから動いたんだからな」
「ぶ~、このくらい別にいいじゃん。ていうかね。あれあれぇ?アミったら本気にしたのぉ?
あたしがこんなこと言うのは、しょっちゅうじゃん」
「べ、べ、別にアマの言うことなんて、本気で信じてないもん!」
俺は彼女らが好きでとかではなく、仲間だから守ったことを言うと、アマは頰を膨らませたあと、アミにちょっかいをかけ出したものの、アミもアマから顔を晒して頬を膨らませた。
こうして見ると双子の彼女らは性格や話し方こそ正反対だが、仕草がそっくりで面白いと思った。
「あー!おじさんアミ見て笑ってるぅ!なになに?何が面白いの?」
「え?え?私、何かしました?」
「ふふふ、アミの頬を膨らませたのがアマにそっくりでおかしかったんだよ。と、そろそろ下が見えてきたね」
俺がそう言うと、アミは恥ずかしそうに俯いたものの、崖の底が見えてきたことで、下で大きく手を振っている士郎を見つけ、彼女らは笑顔になって士郎に手を振りかえしている。
「ほらほらほら、おじさん起きてよ!
起きないとチューしちゃうよ」
「それはダメー!」
あれから今度は早めに休むことになって、この日の昼からは酒厳禁で、それぞれが適当に遊んだり、装備の点検やダンジョンに持ち込む道具の買い出しなどの準備をおこなって、士郎の新しい服や武器に防具を買ったあと宿屋にて、パーティ全員が泊まることができる大部屋が空いたとかで、全員で大部屋に移ったものの、男と女が一緒の部屋で何かあってはいけないということで、男女のベッドの間に仕切り板を設置したときまでは意識はあったのだが、急な眠気で眠りに付いて目を覚ますと、仕切り板が無くなっている。
寝起きでアマが口を尖らせて迫って来ているのを、必死にアミが止めているのを目を覚ました途端に見て、吹き出して笑ってしまった。
そのあとシロヤマがシーバスを起こしている声が聞こえて、シーバスが寝ているベッドに視線を向けると、シロヤマがシーバスの布団の上に乗って身体を揺さぶっている。
「あ、おじさん、なに笑っているのぉ?
でも、起きたならいいや。
シロヤマ姉ちゃん、おじさん起きたよー。
もう、アミったら、あたしが本気でおじさんにキスするわけないじゃん」
「でもでも、今さっきのアマは本気でミーツさんの口を狙ってたもん」
「はいはいはい、アマとアミは士郎くんと一緒に馬車を出す準備を終わらせて!ボクはシーバスを手荒な方法で起こすからさ」
シーバスはこれだけ騒いでいるなか、未だにイビキをかいて眠っているのをシロヤマは鼻と口を手で塞いで呼吸を止めるという、本当に手荒な方法で起こしにかかり、シーバスは息ができない苦しさで飛び起きた。
「ぶはあ、ぶはあ、ハァハァハァ、い、一体なにが起きたんだ。一瞬、夢で死んだ曾祖父さんが見えた。ん?シロヤマ、何で俺の上に乗っているんだ?」
「可愛い彼女が優しく起こしてやったんじゃない。でも、早く準備しないと出発するよ。早くしないと置いてっちゃうからね」
彼女は手荒な方法で起こしたことについては何も言わず、起きたシーバスの上から降りて、そそくさと自分の荷物を取って部屋から出て行った。
部屋内は既に俺とシーバスしか残っておらず、他の仲間たちのそれぞれが持っていた荷物が消えている。
「シーバスが最後に起きるのって珍しいね。
という俺もアマに起こされたばかりなんだけどね」
「多分だけど、シロヤマの仕業だ。
ミーツさん昨晩の寝るときの記憶はあるか?」
「いや無いね。シーバスも寝る直前のことは覚えて無いのかい?」
「ああ、だからシロヤマの所為なんだろう。
あいつは数多くの魔法を憶えているって前に言っていたから、俺たちに眠りの魔法を使っても不思議ではない。ただ何のために使ったのかが気になるところだが、あとで問い詰めなければならないが、ミーツさんは手出ししないで欲しい」
「分かった。でも手荒なことはしないようにね」
「もちろんだ。ただ、その間、俺の妹たちが邪魔をするかも知れないから、ミーツさんは妹たちに抱き付くとかして、止めて欲しい」
「ちょっと!兄ちゃんにおじさん!何やってんの遅いよ。女の子じゃないんだから早く用意してよね!」
彼と昨晩について話し合っていると、部屋に遅いとアマがやってきて、シーバスの荷物を投げつけて、床に落ちていたであろう俺の服を手渡されて、初めて俺が半裸でいることに気が付いた。
気が付いたものの、目の前で腰に手を置いて怒っているアマをシーバスが着替えるから出て行けと言うと、アマはそんなの今更じゃと言いかけたまま、無理矢理部屋から退室させられた。
「ミーツさんのその反応じゃ、脱いでいたの知らなかったんだな」
「うん、知らなかった。だからシーバスは急に昨晩のことを話し出したんだね。さっきの話だけど、流石にあの子たちに抱き付くのは、ちょっと考えさせてもらうよ」
扉の向こうから再度、怒った声が聞こえたことで、急いで服を着て部屋から退出したら、腕を交差に組んで頰を膨らませているアマがいて、膨らんでいる頰をシーバスが押さえて空気を出した。
「もう!兄ちゃんなにやってんの!早く行くよ!」
彼女はシーバスの腹を殴ったあと、下に降りて行き、俺たちも付いて行くと、宿屋の前に馬車が既に止められており、御者席に士郎がいて荷台から覗き込むようにアミとシロヤマが顔を出した。
「ミーツくんにシーバス遅いよお。
男二人で何やってたのお?」
「兄様とミーツさん早く乗って下さい」
急かされるように馬車に乗り込み、空が完全に明るくなる前に出発して、出発した直後のしばらくは御者は士郎からシロヤマに交代し、シーバスも彼女の横に座って昨晩のことを色々聞き出そうと尋問している。
尋問をしだしたときは俺も聞き耳を立てて、チラチラと彼らを見ていたものの、シロヤマは話をはぐらかせてシーバスの身体を触ったりして褒めちぎり誤魔化した。
そんな彼女にシーバスも最初は誤魔化すなと怒っていたものの、次第にデレデレとしだしたことで昨夜のことは無かったことになってしまった。
俺もどうしても聴きたい訳ではなかったため、シーバスのデレてる姿を見て、仕方ないと思って諦めた。
昨夜の話のことは完全に無くなったころ、シロヤマは本格的に案内をする気になったのか、馬に鞭を打ちだした。
案内の最短ルートなだけあって、最初こそはシーバスとイチャイチャしていたとき、街道を通っていたのが、いつの間にか街道から外れて森の中を走っており、シロヤマが叫ぶ魔物という声に度々外に駆り出された。
その頃にはシーバスも、一冒険者の顔になって魔物を倒していた。
「シロヤマ!こんな道しかないのかよ。
道なき道で、こんなところをいつまでも走ってると、馬も疲れちまうぞ」
「もう!シーバス、しょうがないじゃん。これが最短距離なんだからさ!それにもうしばらくこのまま走ったら、大きな崖があるから、崖下で休憩が取れるから我慢我慢ね」
この辺りの魔物は俺にとって見たことがない魔物で、熊ほどのサイズのアリがいる。最初こそは楽に倒していたのだが、段々と群れをなして追いかけてくる数が手の付けようがないほどになっていた。
森の中ってこともあって火を使うわけにもいかず、かと言って水で流そうと群れに向かって出すも、水に対する耐性が強いのか、泳ぐように向かってくる姿は少しの時間稼ぎにしかならなかった。
「シロヤマ、このままでは追いつかれるよ」
「ミーツくん分かってるよ!もうちょっとだから!」
数が数なだけあって、接近戦で戦う士郎とシーバスは役に立たない。かといってアマとアミも水や土の魔法を放つも、少量の水はアリの身体を弾くだけで意味がなく、土魔法も鋭利な石を浴びせるように放っても、アリの外殻が頑丈であるため弾かれて、弾かれた石が馬車に当たってボロボロになってしまってる始末だ。
「仕方ない、森が燃えても直ぐに消せばいいだけだし、一気に燃やすしかないね」
アリが馬車の荷台に今にも噛みつきそうなところまで迫って来ているのを見て、このままでは、掴まれて馬車を止められ、否応にも足を止めて戦わなくてならなくなって、パーティの誰かが怪我をすると思い、迫り来るアリの大群を想像魔法でシールドで囲い込んで、一気に高温度の炎を想像して燃やした。
目の前に迫り来るアリまではシールドで囲んで無かったため、燃やしたときに目の前まで炎もやってきて、バチバチといった音とともに、アリも溶けだした。
「え、え?な、なに、なにやったの?
急にアイアンアントが燃えちゃってるけど」
「多分、ミーツさんだ。こんな大規模なことをやってのける人はミーツさんしかいない。
そうだろ、ミーツさん」
「そうだね。あのままじゃ掴まれてしまうのは時間の問題だと思ったからね。ちょっと大規模になっちゃったけど魔法を使ったよ」
御者をするシロヤマが、急に燃え出したアリを見て、馬車を停止させて混乱しているのを、シーバスが俺がやったことにすぐに気が付いて、彼女に俺がやったことを教えている。
段々と遠ざかるアリを見ながら、囲んでいるシールドの中に水を流し込んでシールドを解除させたら、溶けたアリや溶けかけのグロイ奴が流れてきて、それを見た士郎は馬車の外に顔を出して吐いている。
「ミーツくんがどんな魔法が使えるのかが、気になるけど、もう少ししたら安全な所に行き着くから、とりあえず先に進むよ。士郎くんは顔を出したままだと舌噛んじゃうよ」
「うえ、す、すいません。アマちゃんたちはよく平気だね」
「ここまで気持ち悪いのは中々ないけど、士郎さんみたいに吐くまではないかな。アミは大丈夫?」
「う、うん。でもずっと見てたら私も具合悪くなっちゃうかも」
シーバスに俺がやったと説明を受けたシロヤマは驚いている。そんな彼女を見る限り、俺の想像魔法を教えたあの時はやっぱり、酔っ払って記憶になかったようだ。
でも、ここで再度言わなくてもいいだろうと思い、沈黙していると、シロヤマは崖に着いたから何処かに掴まっていてと声を荒らげた。
どういうことだろうかと、前の方に行って御者席から外を見ると、目の前に大きな崖があり、彼女は嫌がる馬を叩いて無理矢理崖に進ませると、馬は絶壁の崖の垂直に走り馬車は思いっきり傾いた。 何処かに掴まっていろというのはこういうことかと思っていると、軽くしか掴まっていなかったのか、士郎が崖下に向かって落ちてしまった。
「もう、だから掴まっていなって言ったじゃん。
しょうがないなあ」
彼女はそう言うと、懐から細長い杖を取り出して軽く振ると、落ちた士郎の身体がぽわっと紫色に光って遠ざかっていく。
「これで大丈夫。あとは下で待っているはずだよ」
「シロヤマ、士郎に何したんだい?」
「落ちる速度が緩やかになる魔法だよ。これはそういう杖だから、無詠唱でもいいんだ。この道を案内するときは必ず用意するようにしてるんだよ」
「流石、俺の彼女だ。可愛いだけじゃなく、こういうことも事前に用意できるなんてな」
こういう道具もあるのかと思い、彼女の行動に関心したが、彼氏のシーバスも彼女の有能に自慢げに語り出した。
そんなシーバスの語りは無視して、見えなくなった士郎も、まだまだ見えない底を見つめていると、掴まる握力が無くなったアマとアミが落ちてきたことにより、今度は俺が両手で彼女らを掴んで、そのまま俺も想像魔法で緩やかに落ちる想像をしようとしたら、先にシロヤマが杖で俺に光を当てて紫色に発光したのち、緩やかに落ちていき、手を振るシロヤマを見ながら落下していく。
「やっぱりおじさんはあたしたちの事が好きで大切なんだね。だって、士郎さんは見捨てたけど、あたしたちは身を投げてまで来てくれたもんね」
「ミ、ミーツさん、本当ですか?本当に私のこと」
俺の両脇にいるアマがニヤニヤしながら、茶化すようにそう言ってきたものの、アミはアマの言うことを本気に捉えたのか、真っ赤な顔をして見上げながら聞いてきた。
「違う違う。士郎も助けるつもりだったけど、先にシロヤマが動いたってだけで、お前たちを助けるために動いたのも、シロヤマよりも俺が早かったってだけだよ。シロヤマが同じ魔法を使わなくても俺は空を飛べるし、転移もできるからどうとでもなると思ったんだ。
アマも茶化すのはほどほどにしなよ。アミが本気にするからさ。それに、大切な仲間だから動いたんだからな」
「ぶ~、このくらい別にいいじゃん。ていうかね。あれあれぇ?アミったら本気にしたのぉ?
あたしがこんなこと言うのは、しょっちゅうじゃん」
「べ、べ、別にアマの言うことなんて、本気で信じてないもん!」
俺は彼女らが好きでとかではなく、仲間だから守ったことを言うと、アマは頰を膨らませたあと、アミにちょっかいをかけ出したものの、アミもアマから顔を晒して頬を膨らませた。
こうして見ると双子の彼女らは性格や話し方こそ正反対だが、仕草がそっくりで面白いと思った。
「あー!おじさんアミ見て笑ってるぅ!なになに?何が面白いの?」
「え?え?私、何かしました?」
「ふふふ、アミの頬を膨らませたのがアマにそっくりでおかしかったんだよ。と、そろそろ下が見えてきたね」
俺がそう言うと、アミは恥ずかしそうに俯いたものの、崖の底が見えてきたことで、下で大きく手を振っている士郎を見つけ、彼女らは笑顔になって士郎に手を振りかえしている。
89
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。