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第3話 鳥人?

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 「スー!」

スーはオークに向かって思いっきり跳ねてぶつかりに行った。オークは舐めているのか、何も防御していない。

ポヨーン

パガン!

 「………え?」

スーがぶつかった瞬間オークは向こうにある大木まで一気に吹っ飛んでった。スーは俺の足元に戻ってきていつものように足元をスリスリとしている。

 「あ、ああ。ありがとう!すごいなスーは。」

とりあえずそう声をかけるが野生のモンスター間では絶対にありえないことが起きた。スーはまだ野生から仲間になって間もない。それなのに差があるどころか圧勝してしまった。

ポヨンポヨン

 「ん?どうした?何かそっちにあるのか?」

スーが跳ねて何かがあることを示している。導かれるように着いて行くと、そこには何かが倒れていた。

 「これは………鳥人族?」

倒れていたのは10歳ぐらいの女の子、だが腕は鳥人族特有の羽がついていた。そして足の部分は鳥の足で少し茶色感じだった。

 「どうしよう!とりあえず、干し肉を渡せばいいのかな?」

そう言ってリュックから干し肉を取り出そうとするが、それをスーが触手を伸ばして止めてくる。

 「え、こんなに苦しそうだけどあげない方がいいの?どうしたの?」

疑問に思ってると、スーはその倒れている鳥人にぴょんと跳ねて近づくと触手を伸ばして撫で始める。そして撫で終わると俺に向かって触手を伸ばしてきた。 
 
 「俺も撫でろって?わかったよ。」

スーに促されて、女の子に近づいてその頭を撫でる。さわり心地は普通に女の子の感じだ。


ピカーーーーーン!!

 「うわ!?なんだ!!」

なでると、突然女の子が光りだした。それはもう目をあけられないほどの光だった。

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(ここからは作者視点)

この森はとても魔力濃度の高い。その上その魔力には狂化作用も含まれている。そしてスライムは知能が低い。だが言い換えればそれだけ本能が強いスライムは他のモンスターよりも魔力に敏感である。そのため襲うことのないスライムが襲うようになった

さてスーのことを思い出してみよう。スーも例外ではなくエルのことを襲ってきた。しかし途中であることに気づき襲うことを止めた。それどころか彼になついてしまった。理由は一つ、エルの膨大魔力に気づいたのだ。

この世界の最強の賢者の魔力量は約20万。一般人を150人集めてようやく対抗できる量。しかしエルの魔力量は賢者をゆうに超える200万。だがこのことに気づいたものは誰もいなかった。兵士長もましてやエル自身も気づいてはいなかった。

しかし、スーはスライム特有の本能によってエルの膨大な魔力に気づいたのだ。今まで森の魔力に酔いしれていたスーが新たに来た魔力に反応した、さらに言えばこのエルの魔力には安らぎに満ち溢れている。そのためスーはスリスリと足元に寄り添い、信頼を示していたのだ。スリスリするのが好きな理由は、彼、または触れているものに当たることでその魔力を得ていたのだ。

そしてスーがエルに撫でるように指示した理由は、手から直接魔力を与えることで彼女を助けようとしていたのだ。

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光が収まった。そして光っていた鳥人の女の子の姿が少し変わっていた。さっきまで模様にすら見えていた大量の赤い血は綺麗になくなっており完全な純白になっていた。見えていた傷口も完全に消えて治っていた。

 「大丈夫?」

 「ピイ!ピ!!」

 「おお、大丈夫なようだね。スーの言うとおりになでたら治ったよ。すごいな。」

そう言ってなでると、スーは喜んでいるのかとんでもなく触手を揺らし始める。するとその様子を見ていた鳥人の女の子が頭を俺の体にスリスリとなすりつけ始めた。

 「ああ、ごめん、ほっとくつもりはなかったよ。」

鳥人の女の子は満足したのか、ぷはっと頭を上げる。立った姿を見てみると彼女は145センチぐらいだった。他の箇所も基本人間と変わらなかった。

 「とりあえず、さっきの広場に戻ろうか。歩けるかな?」

 「ピイ!」

大丈夫だと鳴く。その場でジャンプをしたりと普通に動けることを教えてくれた。戻ろうと振り返ると忘れていたことがあった。

 「あ、オークのこと忘れてた。」

大木にずっと倒れこんでるオークを見て思い出した。もって帰ろうと足を持つと、あまりに重くて全然運べない。

 「ふんぬーーーーーー!!ハアハア、全然運べん。どうしよう。」

 「ピイ!」

 「どうしたの?それは俺が何とか持っていく...え!?」

鳥人の女の子がオークに近づく。なんか張り切って鳴き声をかけるので、もしかしてオークを運ぶつもりなの?と思い止めようと声をかけたが、なんと平然とオークを引きずっていた。

 「大丈夫なの?」

 「ピイ!!」

どうやら平気らしい。あんまり鳥人族のことを知らないが自分の中で力持ちの種族なのだろうと解釈しておく。

 「それじゃあ、改めてさっきの場所まで戻ろうか。」

 「ピイ!!」

スーは触手を動かしてアピールをしていた。
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