仕方なく開拓者になったけど、膨大な魔力のおかげで最高の村ができそう

Miiya

文字の大きさ
2 / 27

第2話 溶解液すげえ

しおりを挟む
 「なんでスライムが自ら攻撃をしてくるんだ。」

スライムは何かから襲われない限り自ら攻撃することはない。それでもこのスライムは攻撃してきた。溶解液は当たった草を溶かしてシューと言いながら蒸発して行った。

 「やばいやばい、とりあえず剣を構えないと、」

急いで腰につけていた剣を握りスライムに体を向ける。スライムもまたこちらの方に向いている(?)

!?

 「なんだ?」

スライムが何かに気がついたような反応をする。するとこっちにぴょんぴょん跳ねてくる。

 「ち、ちかづくな!」

そう言って剣を振る。だがいつまでたっても溶解液を出してこない。どういうことだ?ついには俺の足元にまで来てしまった。しかし、

 「敵意が……無い?」

足元にスリスリと自身の体をなすりつけ始めた。よく懐いている犬がするような行為だ。

 「懐いているのか?でもなんで?」

スライムはずっとスリスリしている。

 「そうだ。」

カバンからパンを取り出してみる。

 「これ食べるか?」

スライムは肯定するようにぷるんと跳ねる。そしてちぎって地面の上に置くと、そこにぴょんと跳び乗ってパンを吸収し始める。吸収しきると満足そうに跳ね、俺の胸元に跳びついてくる。

 「うわっと、」

俺は慌ててキャッチする。そして抱きしめてみる。うーーん、すべすべでプニプニだ。最高級クッションのような感触だ。

 「よし、お前の名前はスーだ。これからよろしくな。」

スライム、もといスーは肯定するようにぴょんと跳ねる。

 「とりあえず何から手を出せばいいかがわからないな。広場みたいなのを探すか。」

スーを抱き上げてリュックを取りに行き、森の中を散策する。森の中はかなり入り組んでいて、ちゃんと整備しないと迷いそうになる。しばらく歩いていると、ひらけた場所に着いた。

 「やっと広い空間に着いたー!お腹すいたな。」

広場に着くともう正午あたりになっていた。とりあえずリュックからパンと干し肉と水を取り出す。

モッシャモッシャ

 「うーーん、あんまり美味しくないな。いつかまたスープとかのみたいな。あ、スーの分ももちろんあるよ、はい。」

スーの分と、干し肉とパンを渡す。とりあえず一人分を渡したが、半分ぐらいにちぎると残りを俺に返してきた。どうやらそんなにいらないらしい。代わりに水はごくごくと飲む。

確か本の知識だとスライムは魔力と水が合わさった生物で、水を非常に好む、だったかな。それでかすごい飲んでいる。どっかで川とか探さないとな。

 「リュックから斧出して木を切ろうかな。」

リュックにあった斧を取り出し、近くにいる木を切る。いずれ家を作るためには必要だからな。頑張って切るがあんまりうまく切れない。

 「はあ、はあ、はあ、もう少し簡単に切れると思ったんだけどな。」

少し手を休めていると、触手を伸ばし、ぴょんぴょん跳ねながら応援してくれていたスーが切っていた木に近づくと触手を伸ばしておもむろに木に当てた。

 「スーどうしたの?それは俺が、え?切れてる?なんでだ?」

スーが触手を器用に動かすと、どんどん木が切れていく。そして完全に切れると木がギギギと倒れた。

 「どういうことだ、……もしかして溶解液?」

聞いてみるとそうだと跳ねる。木は一旦はそのまま置いておく。今何かに使えるわけではないからな。

 「木も切れたし、今度はここを畑にしていこう。種は一応入っていたし、スーは俺がピッケルで叩いたところをどんどん鍬でならしていってほしい。できるか?」

地面があまりにも固いため、ピッケルで壊すことにした。そして質問に肯定するように跳ねるスーを見て、ピッケルで地面をいじり始める。

~~~~~~~~

 「ふー、これぐらいできたらいいかな。」

2時間近く畑づくりに集中した結果、30メートル近くの畑ができていた。スーは鍬を二本の触手を使って頑張ってやってくれた。

 「さて、それじゃあ今度はこの土に種を入れていこうか。こうやって入れるんだよ。」

実演して見せると、スーも種を埋め始める。一度指で押したところに入れて、その後に土をかぶせてやる。

 「よし!これで畑づくりは完璧にできたかな?………あ!?水が無いんだった!!どうしようどうしよう。」

 水が無いと育つものも育たない。どうしようどうしよう。そう頭を抱えて悩んでいたら、スーが優しく触手を伸ばしてくる。

 「ん?落ち着けって?そうだな。一度落ちつこう。とりあえずもう少し森の中を探索してみようか。」

スーを抱き上げて、そのたまらない感触を楽しみながら森の奥に進んでいった。

 「ぶう!」

 「うわ、オークだ。どうしよう、」

俺なんかがオークに勝てるわけもなく、逃げようとすると、スーが腕の中からぴょんと跳んで離れる。そしてオークに体を向ける。

 「スー、危ないよ!!オークだよ!早く逃げよう。」

オークはランクE級のモンスター、スライムはF級モンスター。1つ違うだけでも差は明確にある。はっきり言って勝てるわけがない。なのにスーは全く怖じけずむしろやる気に満ち溢れている。

ぴょん!

 「ぶう!」

 「スー!!」


しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

処理中です...