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第7章 王と再会編

第80話 シンジと国王の再会

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 「久しぶりだな、国王。」

俺はそう壇上の上にいる国王に視線を向ける。

 「まずは、よく来てくれた。我らの要求に応えてくれたこと感謝する。」

ん?

 「どういうことだ?」

 「ぬ?聞いてないのか?お主は真の勇者として戦って欲しくここに来て欲しいと言ったのだが。」

 「そんなことは聞いてないぞ。ただ宮殿に来いとしか言われてない。」

 「な、どういうことだ!?護衛の兵士たちはどこにいる!?」

 「は!ここにおります。」

 「どういうことじゃ、今回の旨を話しておらんのか?」

 「いえ、よく覚えてないです。ただキエハナにいる黒髪の冒険者としか覚えていません。」

 「な、なぜじゃ!!なぜこのようなことが……」

 「うるせえんだよ!!」

俺の中で何かがプッツンと切れた。

 「おい、まずお前のところの管理がなってないんじゃないか?ああ?」

 「ぬ、それはわしではなく、こやつらが」

 「そんなことよりもな……」

シュン!

 


 「頭がたかいんだよ!」

俺は一瞬で壇上にいた国王の目の前に飛んだ。誰も俺のことが見えなかったようで、表情が困惑している。

 「上の人間がこれじゃあ、仕方ないよな!!」

 「な、何を言っているんじゃ。」

 「そうか、なら聞かせてやろうか?この護衛とか言ってるクソの仕事っぷりをな。」

そう言って俺は国王の胸ぐらを掴み体を無理やり持ち上げた。

 「な、貴様!!何をしておる。今すぐその手をは……」

 「待つのじゃ!こやつには絶対手を出してはならん。これは命令じゃ。」

 「は、はい。」

左にいた女性が腰に携えてた短剣を抜きかけた。それを今俺に持ち上げられてる国王が苦しみながらも声を絞り上げて出した。一応俺は離す。

 「はー、はー、すまない。これまでの無礼を詫びよう。」

 「俺がここにわざわざ来た理由。それは、今後俺にこのことで干渉することをやめてもらう。」

あたりが一斉にざわつき始めた。

 「な、今ではもう元凶のリドはいない。なぜじゃ?拒む理由はないじゃないのか?」

 「いや、大いにある。だったらなぜ俺のことを追いかけてこなかった。」

その言葉に王がハッとなる。

 「本当に申し訳ないならすぐに俺のことを追いかけるはず。しかも俺の足で移動できる場所なんかたかが知れてる。そうじゃないか?」

 「う、た、確かにそうじゃが、」

この様子、やっぱり追ってはこなかったんだな。

 「つまりお前は俺がドラゴンを倒したっていう実績を聞いて急いで連れ戻しに来たってことだよな!?」

 「………」

もう、国王は口を閉ざしてしまった。つまり図星ということだ。

 「どのツラ下げて呼んだんだよ!!」

 「おい、いい加減にしろ!!いくらなんでも国王に向かってそのような口の聞き方は…」

 「よいのじゃ!あくまでも悪いのはわしらだ。」

高価なローブを着ている男がそう横から割り込むように声をあげると、王がやはり止める。

 「確かにわしらが悪いことは明らかじゃ。一度は無能と決めつけ追い出した挙句、強いと知ってはすぐに引き戻そうとした。これは赤っ恥の何ものでもない。」

国王は下を見ながらそう話す。声に力が入ってない。

 「じゃが、もう他に方法はないんじゃ。お主になんとか頼ることしか他にない。」

顔をあげるとそう答える。

バシン!

国王が膝を曲げ、手を伸ばし頭と一緒に下につけた。土下座をした。

 「な、国王!なぜそこまでするのですか!?そんなことをしてしまえば国王としての威厳が…」

 「もうそんなことは言ってられない。それにとうに威厳などない。なんとか我らに力を貸して欲しい。魔王を倒して欲しい。」

 「他の勇者は倒せそうに無いのか?」

わかりきってることをあえて聞いてみる。

 「ああ、正直間に合うわけがない。じゃがお主は伝承と同じ、いやそれ以上の強さがすでに備わってる。」

 「それで、今の勇者を使わず俺に真の勇者になって欲しいと?」

 「そういうことじゃ。」

 「なるほど、な。」

 「!?も、もしかして、」

 「先に言っておくが助けるつもりは毛頭ない。」

 「なっ、」

 「もう俺は冒険していることが楽しいんだ。そんな楽しみを奪われるなんてことは嫌だからな。それにここにいても強くなれる気がしない。」

 「どういうことじゃ!?」

 「仮にも国王軍を名乗り、さらに俺にあの対応をしていた兵士があまりにも弱すぎる。兵士としても、人間としても。」

俺はこの3日間の兵士のことを話した。国王の顔がどんどん青ざめていった。

 「そ、そんなことがあったのか。」

 「そんなところで俺が強くなれるわけがない。まともに兵士の養成ができてないんだからな。」

 「何があったんですか?」

後ろから3人組がきた。

 「「「あ、お前は!?」」」

勇者たちだ。
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