召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第十三章 肉が離れて実が来る

そらとぶひみつ

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 翌日、モペアに、世界樹から木の蔓を伸ばしてもらう。
 木の蔓が、勝手に編み上がり、絨毯のようになる。
 さらに世界樹から、枝が伸び、木の蔓で作られた絨毯を補強する。

「すごいなーモペア」

 皆で絨毯にのり、上を見上げる。ゴツゴツとした岩肌が露出する飛行島の土台部分がしっかりと見える。
 それにしても、背丈ほどもある世界樹の葉っぱが大きく揺られるような突風が吹いても、びくともしない地面が頼もしい。

「全然、大丈夫っスね」
「お姉ちゃん、すごい」
「まぁね。たださ、これは世界樹の力でもあるんだ、あたしはほんのちょっとだけお願いしただけさ」

 モペアが言葉では謙遜しているが、得意気な態度で胸を張る。
 でも、これは自慢してもいいことだ。しっかりとした土台があるので作業がやりやすい。

「それじゃ、早速」

 1円玉を取り出しもの尋ねの魔法を使う。
 いつものように立体映像が現れた。

「あれ、トロールじゃん」

 空中に浮かぶ人影、そして、トロールが見えた。
 彼らは空中に浮かんでいるように見えるが、多分足場が下にあるのだろう。投げ捨てられた本や道具類が、空中に壁でもあるかのように浮いている。

「あっ! あれって回るのか」

 サムソンが声を上げる。
 ロンロが見たという魔法陣が、小さく円形の石に書き込まれていた。
 トロールが二体、それをまるでネジを外すかのようにくるくると動かして、取り外す。
 すると円柱状の石がボトンと落ちてきた。
 上手い具合に、トロールは落ちてきた石をキャッチする。
 それを男が、手元の板を見ながら触る。口元の動きから、詠唱しているようだ。
 詠唱が終わり、トロールが元合った場所に、落ちてきた石をはめ込む。
 また魔法陣の描かれた石を元に戻す途中で映像が切れる。

「なるほど、こうなってたんスね」
「あの、落ちてきた石。魔導具の一種に見えました。そう思いません?」
「あぁ。とりあえず、さっそく取り外してみるぞ」
「ふむ。物尋ねの魔法をこういう風に使うとは……まったくもって興味深い者達だな」

 唐突に後ろから声がかかった。
 ふと見ると、空中に浮かぶように、縦ロール……リスティネルが立っている。

「あっ、見られてたんですか」
「何かやろうとしてるのが見えたのでな。興味本位であるよ。土地は思いを記憶するか……理にかなっておる」

 ふわふわと空中に浮かび、楽しそうに笑う。世界樹の守り主というだけあって、なかなか器用なことができる人だ。
 それにしても、この人何者なんだろう。ハイエルフではないから人間の大魔法使いか何かなのだろうか?
 リスティネルは、モペアの作った絨毯に降り立ち、縦ロールをかき上げてからオレ達に向き直り質問する。

「まったく、お主たちは奇妙に振る舞うものだな。なぜ、そんな命じられたことを唯々諾々と従う? 戦い、自由を勝ち得ようと思わなかったのか?」
「いいだくだく……えっ? 戦うなんて、そんな物騒なこと考えたくないですよ。それに負けちゃうじゃないっスか」

 プレインがすかさず反論する。
 そうだそうだと、皆も同じように頷く。

「オホホ」

 手の甲を口に当て縦ロールの女の人は笑い、言葉を続ける。

「争い事は嫌いか」
「ちなみに、リスティネル様は私達が勝つと思われているのですか?」
「さてな。お主たちは勝てないかもしれない。だが、そこの子犬の本性を現せば、強き守りにはなるだろうし、それにサラマンダーがいるであろう?」
「おっしゃっている意味が分からないのですが……」
「世界樹を燃やすと言えばハイエルフは、すぐに地上に降ろすことを考えただろう。なぁに、ほんのちょっと火花を立てて、サラマンダーを呼び出し、自分たちに危害があれば、サラマンダーが、お前達を焼き尽くすと脅せばよかったではないかな?」

 物騒なことを言い出すなぁ。
 確かに、方法としてはできそうな気がする。ハロルドに守ってもらい、火球の魔法を使う、もしくはサラマンダーにお願いするという。だが、両方とも却下だ。
 魔法は制限されているかもしれないし、話し合いで解決したほうがいい。
 それに、今の状況はそんなに嫌じゃない。
 確かに最初は諍いから始まったが、それでも争わない道を探っていたからこそある今の状況だ。

「争う気にはなれませんよ。リスティネル様の言うとおりにして、上手くいったとしても……後悔したと思います」
「一体どうして?」
「私達は楽しく旅をしたいだけです。相手が悪人かどうかもわからない状況では、戦いたくありません。それに、サラマンダーにそんな汚れ仕事させたくないじゃないですか」
「ホーホホホ」

 リスティネルは、再び口に手の甲をやり高笑いを響かせる。
 結局、何が聞きたかったのかはわからない。だが、とりあえずは納得してもらえたようだ。

「うむ、確かにそうよな。精霊たちに汚れ仕事をさせたくないか……。なるほど、なるほど、何故そなた達が、精霊たちに、そこまで慕われているのか、なんとなくわかったわ」

 ニコニコと笑いながらそんなことを言う。
 それから、オレ達の乗っていた家の方を向いて、言葉を続ける。

「気持ちのいい答えを行かせてくれた礼に、一つ教えてやろう」
「はい」
「ここにある飛行島、ほとんどが同じもの。ではあるが、そなた達が乗ってきたものは、ちと違う。せっかくだ、そちらにも土地が夢見る思い出を聞いてみるのがよかろう」
「それは……助言ありがとうございます」

 リスティネルはオレの言葉に深く頷いた後、ふわりと消えた。

「なんなんスかねあの人」
「悪い人じゃなさそうですが、何か……試されたように思います」
「あの空飛ぶ方法、私も知りたい」

 カガミの言うこともなんとなくわかる。答えが分かった上での質問をされているような感覚。初めての感覚ではない気もするが思い出せない。
 分からないことを考えてもしょうがない。作業を再開するとしよう。
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