召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二十二章 甘いお菓子と、甘い現実

おなじもの

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「こんなところでいいのかい?」
「大丈夫です。ここから、泊まる場所まで歩いて帰りますので」

 結局あの後、ロンロを呼び出した。
 それから、ロンロに頼んでミズキを呼び出してもらい、皆で馬車に乗って帰った。

「店にいた男の人って、前から店にいる人じゃないっぽいね」
「イスミダルさん? あの人だったら、なんか帝都で働いてて、お菓子の祭典を目当てに旅行できたらしいよ」

 あの男の人は、イスミダルというのか。

「旅行してきた人が、どうしてあの店に?」
「職人が辞めちゃって、ダメ元で募集したんだってさ。そしたら、ヘーテビアーナの間だけって話になったらしいよ」
「臨時の職員なのか」
「その後、次々と職人辞めちゃって、どうにもならなくなって、今は見習いのサラムロ君もいろいろ仕事してるらしいけどね」
「サラムロ?」
「ほら、一緒にいた男の子。ラテイフさん……店主の弟」

 あぁ。やんちゃな感じの子か。
 で、オレ達より確実に年下な、あの女性……ラテイフが店主か。

「でも、犯人がイスミダルさんのお父さんだとしたらどうなるんスかね?」
「どうなるって?」
「だってほら、犯人はやりすぎたってことで、見つかれば罰せられるんスよね?」
「御者の話ではそうだったな」
「だったら、あのお菓子屋さんが助かるためには、イスミダルさんの父親が処分されるってっスよね」
「そうなるかもね。お祭りの後は犯人を捜すって話だから、その後になりそうだけどさ」
「今日は、大丈夫なんでしょうか? また、襲われたらと……不安に思います。思いません?」
「しばらく、兵士が見守ってくれるらしいよ」

 御者のお姉さんもやり過ぎだと言っていたように、兵士達も今回の件は重大に見ているらしい。結構、優秀だよなと思う。
 家に戻ってからは、昨日と同じように、飛行島で食事をしのんびりして過ごす。
 デザートは観光しながら買い集めたお菓子だ。

「いろんなお菓子があって楽しいと思います。思いません?」
「これはチョコレートっスね」
「そうだな」

 中には、みたらし団子もあった。

「和風だな」
「みたらし団子だと思って口に入れると、びっくりするぞ」
「サムソン先輩が口に入れた瞬間、吐きそうになってたっスよ」
「みたらし団子だと思ったら、めちゃくちゃ甘いカレー味だったからな」

 警戒しつつ食べると、確かにスパイシーな上に酷く甘いお菓子だ。
 異世界お菓子は油断がならない。

「燃えるお菓子もすごかったでち」
「びっくりした」
「そうそう、ノアノアが助けてって……」
「言っちゃダメ」
「アハハ」

 小さなクッキーの上に、赤い粒が乗っかったお菓子。
 いきなりこぶし大の炎が上がってビックリした一品だったそうだ。
 さらに驚いたのは、炎に見えたソレは、実は綿菓子の綿で食べられたこと。
 初日の観光での話なので、オレは見ていないのが惜しい。

「でも、一通り見るとクッキー系のお菓子が多いと思います。思いません?」

 言われてみると半分以上がクッキーだ。
 それぞれ色々な違いがあるが、これは何かと問われればクッキー。
 大量生産しやすいからってことかもあるだろう。

「あのね、こんなお菓子もあったの」
「ノアノア、絵がうまくなったじゃん」
「本当」

 ノアがいくつかスケッチを見せてくれる。
 オレ達は観光してお菓子が美味しいとしか思わなかったが、ノアは細かいところまで見ていたのか。
 買わなかった、お菓子の絵も描いてある。

「これがね、すっごくきれいだったの」

 いちごが乗ったショートケーキか。

「確かに美味そう」
「一口サイズのケーキも素敵だと思います」
「えっと、メニュー作りも考えるんだっけ」
「メニューは考えてもらいます。私達が手伝うのは大量生産だけです」
「そっか」
「どんなお菓子作るんスかね」
「よくよく考えたら魔法で手伝うんだから、寒天の材料を返した方がいいんじゃないかと思うぞ」

 確かにサムソンが言うとおりだ。
 というか、なんで寒天の材料を売ってくれたのだろう。
 御者の話では、店を持っている以上は、お菓子の祭典ヘーテビアーナに不参加という選択肢はないはずだ。

「あのー、もう半分ぐらい食べちゃったです」

 そんなサムソンの言葉をうけて、ピッキーが申し訳なさそうに言う。
 1日で、あの量を半分か。
 うちの海亀は本当にやりたい放題だな。

「うーん。でも追加の食材買い占められたから、寒天を使った料理諦めるって言ってたよ」
「そうなんだ」
「まぁ、明日にでも、聞けばさ、これからどうするのか分かるんじゃないかな」

 次の日もやはりサムソンに留守番を頼んでお店に行く。

「あれ、先輩、あの人」

 それはちょうど店の前に着いた時だった。
 店と通りはさんで向かい側に、昨日イスミダルと話をしていた男がウロウロとしていた。

「ロンロ、あの人の後を着いていって調べてもらえる?」
「わかったわぁ」

 オレ達に気がつくと、逃げるように立ち去ろうとしていたので、ロンロにお願いし追跡してもらう。
 ミズキの話では、イスミダルはこの町の人間ではないと周りに言っていたらしいので、おそらく素性を隠しているのだろう。

「カルボパン?」
「ええ、この辺ではメジャーなお菓子なんですが」
「それを予選に出すんですか?」

 お店にいくと、待ち構えていたかのように、試作品を見せてくれた。
 手のひらサイズの食パン。
 パッと見はそんな感じだ。
 上には、緑色の小さな玉が乗っている。
 グリーンピースに似ているな。
 少しだけ溶けて、小さなパンに垂れているのをみると、飴に近いのかもしれない。

「えぇ。無事な調理設備と、残ってる材料では作れるものは限られます」
「でも、イスミダルは凄いのですよ。限られた条件でこれだけの物を作ったのですから」
「いや……たまたま、知っている工夫ができただけだよ」

 最低限作らなくてはいけない量があるという。
 沢山作るとなると、原価は抑えなくてはならない。
 祭りのため、採算を度外視すると、資金繰りに困って店をたたむことになりかねない。
 それらを考慮した結果が、このお菓子だそうだ。
 日持ちがして、なおかつ人気のあるお菓子をベースとして、一工夫して新作を作ったらしい。
 特に、差別化を図るために上に載せたグリーンピースのような果物は欠かせないのだそうだ。

「これ、果物だったんですね。飴かと思いました」
「果物を、私が考えたソースで煮込んだものです」

 イスミダルが、カガミの言葉を聞いて、嬉しそうに語る。

「では、試作品を持っていきましょう」

 そう言ったラテイフが準備する間、残ったお菓子を食べる。
 上のグリーンピースに似た果物は、爽やかなオレンジ風味で、プチッと弾ける食感が良い。
 なんとなしに食べて、すでに3つめ。

「美味しい。いくらでもいけそう」

 手応えを感じ、菓子ギルドへ持って行く。
 似たよう物がないかのチェックだ。
 問題がなければ、予選に出品してOK。
 ところが。

「んー。これはダメだよ。ほとんど同じ物が、さっき提出あったんだよね」

 菓子職人ギルドの担当は、サンプルを口に入れ、事も無げに言った。
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