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しおりを挟むそしてパーティー当日。
私とアシュレイ様は連れ立って会場を訪れていた。
予想通り中には沢山の貴族がいて、同じ女学校の生徒たちも参加していた。
「まぁ!見て、スプラウト様にグラシャ嬢よ!」
「お二人とも素敵だわ」
「こうして公の場に二人でいらっしゃるのは初めてじゃない?」
噂好きの令嬢たちは私たちを見てそう言っている。
(こんなに注目されると緊張するわね)
彼女たちのほとんどがアシュレイ様に釘付け。ただでさえ社交界に顔を出さないアシュレイ様だが、今日はまた一段と凛々しくカッコいい。
そんな彼の隣を婚約者という理由で独占する私。
(不釣り合い、なんて私が一番分かってる……)
「グラシャ?」
「え?あっ、ごめんなさい」
「体調が悪いか?」
「いえいえ!その、ちょっと緊張を」
「俺もだ。こういった場は慣れない」
「そうなんですか?堂々としてらっしゃるからあまり気にしていないのかと」
「……君が側にいるから、慣れずに狼狽えているのを見せたくなくて」
アシュレイ様は少し照れたように頬を掻きながら視線を外す。
(か、可愛い……)
そっか、アシュレイ様も同じく緊張してるのね。そう思えば自然と肩の力がスッと抜けていく。
シルビア嬢に呼び出されたあの日からずっと考えていた。こんなに不安になってしまうのはきっと想いを伝えていないからだと。どんな結果になろうとも、まずは私が逃げずに伝えるべきだ。
"貴方が好きです"
その言葉を今夜、ちゃんと伝えるんだ。
「アッシュ!」
会場の奥から大きな声が聞こえた。
人をかき分け行けば、そこにはケインとミハエル様がいた。
「すまない、遅くなった」
「いいよ。二人ともよく来てくれたね」
「本日はお招きありがとうございますミハエル様」
「こちらこそ、またお祝いに来てくれて嬉しいよグラシャ嬢。今日もまた一段と美しいね」
ミハエル様は相変わらずの笑顔でそう言った。
「あら、エリザベスさんは……」
「今メイクを直しに。もうすぐ戻ると思うよ」
「にしてもアッシュ、お前騎士服以外も結構似合うな!なんて言うんだけっけ?孫にも衣装?」
「お前と違って身長があるからな」
「何だとぉ!」
「いい加減にしろよな」
わいわいとするやり取りに思わず笑ってしまう。
いつもと違う子供っぽいアシュレイ様が見れるのはこの二人と一緒にいる時だけだから。
(アシュレイ様すごく楽しそう、お邪魔しない方がいいかしら)
「アシュレイ様、私飲み物を貰ってまいります」
「一緒に行こう」
「いえ、せっかくですから幼馴染同士ゆっくりなさってて下さい。すぐに戻りますから」
「……分かった」
そう言ってその場を離れる。アシュレイ様は最後まで心配そうに私を見送っていた。
沢山の貴族たちが笑いながらシャンパン片手に会話を楽しんでいる。エマーソン侯爵家はもちろんだがレリック伯爵家も名が知れた資産家だ。高価なお酒に盛大な料理、スイーツなんか一流パティシエが目の前で調理しているわ。
(後でアシュレイ様と一緒に料理を見に行こう。それからスイーツも……)
「あら?ノーストス嬢ではないですか」
後ろから声をかけられ足を止める。振り返れば案の定、煌びやかなドレスを見に纏ったシルビア嬢のファンたちが5人ほど集まっていた。
厄介なのに絡まれちゃったわね……。
「あら皆さん、お久しぶりね。皆さんもミハエル様とエリザベスさんをお祝いにいらしたの?」
「ええ。私たちの家は全員レリック家よりお仕事を頂いていますから。本日はエリザベス様からご招待頂きましたの」
思いがけず私とエリザベスさんが仲良いのを知り、彼女たちの口元が笑っているもののたまにヒクヒクと引き攣らせていた。
「そう。ではまた学校で……」
「お待ちになって」
「貴女をスプラウト様のところへ戻らせる訳にはいかないのよ」
行手を阻むように一人の令嬢が私の前に出る。
「シル様に言われてるの。貴女をスプラウト様に近づけないようにって!」
「……意味が分かりません」
「今夜、シル様とスプラウト様は結ばれるの。全てが終わるまで私たちと一緒に居てもらうわ」
そう言って彼女たちは私を取り囲む。
「ちょっ!」
「騒がないのが賢明よ?今私たちの周りにはシル様の親衛隊しかいないから。ちょっとでも暴れれば今夜のパーティーを台無しにさせるわ」
「っ……卑怯者!」
「それは貴女でしょ?お二人の邪魔ばかりして」
グッと腕を引っ張られ、私はパーティー会場から連れ出される。
彼女たちの言う通り、ここで私が騒げばパーティーどころではなくなる。それこそエリザベスさんとミハエル様のお顔に泥を塗ることになるわ。
(助けて、アシュレイ様っ……)
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