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7つの断章編
第1話
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あれから2カ月、
私はウルスの城下町で昔のように暮らしていた。
結局、みんなの推薦により、ヨハンがこの国を統治することになった。
つまり、彼が王になったのだ。
当然、前とは違って私がウェナ様の力を使うことで処刑されることはなく、
平和な日々を送っていた。
以前と違うのは私の左腕がないこと。
ウェナ様の神託も聞こえなくなったけど、
私は、ただ導かれて生きていくよりも、
自分で見つけ出す生き方を尊重したいと思っていた。
誰かの言ったことを鵜呑みにして信じるより、
自分で見たこと、考えたことにこそ意味がある。
前回の旅が、私にそう気付かせてくれた。
平和なこの街で漫然と過ごしながら、
世界中の話をただ聞くより、
再び旅に出て、以前訪れた町の様子が、
あれからどのように変わったのか見てみたいと思い始めていた。
そんな中、お城にいるヨハンからお呼びがかかった。
「また何か相談?」
私はちょくちょくヨハンから呼び出されて相談に応じることがあった。
私自身、王の経験があるわけではないから、役に立っているかはわからないけれど、
彼は、自分だけのエゴで良し悪しを決めてしまうことに抵抗があるのだろう。
「聖女様、近頃、近隣の町で怪異が起こっているようです。
もしかしたら、悪魔たちがまた動き出したのかもしれません。」
「私に悪魔退治をして来いと?」
私は意地悪に聞いてみた。
「そんなことは・・・まぁそうですね。」
ヨハンが気まずそうにはにかむ。
王になったとはいえ、
私とは以前のようにラフに話すことが多かった。
「冗談よ。」
私は笑顔を作り、ヨハンの不安を取り除いた。
「実は以前訪れた町がどうなったか見てみたくて、
そろそろ旅に出てみようかと思っていたところなの。
ちょうどよかったわ。
平和なこの街では私はお役御免だしね。」
ヨハンは私にお供をつけようとしてくれたが、
私は気ままに旅したいと思っていたので、
お供は断ることにした。
「もし兵が必要ならば、いつでも手紙をください。
派兵いたします。
それに、既に周辺の各町には兵を滞在させており、
聖女様には協力するよう命じてあります。」
ヨハンの賢王ぶりから、私は街を離れることに不安はなかった。
「ありがとう。この街のことは頼むわね。」
私は、旅に必要になるであろう物資や金銭と、
上等な馬を王から与えられ、旅に出ることになった。
前回の旅の始まりと、
今回の旅の始まりでは気分が全然違った。
前回のように、半分逃げ落ちるかのような悲壮な心持ちではなく、
晴れ晴れとした気持ちで胸を張りながら街の門をくぐり、東へと向かった。
怪異のことは気がかりだが、
話に聞いた限りでは、以前の悪魔達との戦い程ほど危険でもなさそうだ。
何しろ前回戦った悪魔達のほとんどは、
十邪星とよばれる悪魔の頂点だったわけだし、
今回の怪異も、頻繁に地震が起こるとか、
危険な洞窟に近づいた数人が行方不明になったとか、
本当に悪魔の仕業なのかどうかもわからない程度の怪異でしかないのだ。
それに、今回は心強い後ろ盾がある。
前回は、王やその配下の兵士たちは敵対する存在だったが、
今回はそれらが丸ごと味方なのだ。
そして、いざとなれば、私の右腕にはウェナ様の力が宿っている。
最初に目指したアインの村へは数日の道程が必要だったが、
久しぶりに見る景色は全然違って見えた。
季節が変わり始めたのもあるかもしれないが、
それ以上に気分が違うことが大きいのだろう。
懐かしい景色に、
前の旅では隣にいたガイツのことを、
薄っすらと思い出して懐かしみながら、
潮の香りを感じ始めた頃、アインの村が目の前に現れた。
私はウルスの城下町で昔のように暮らしていた。
結局、みんなの推薦により、ヨハンがこの国を統治することになった。
つまり、彼が王になったのだ。
当然、前とは違って私がウェナ様の力を使うことで処刑されることはなく、
平和な日々を送っていた。
以前と違うのは私の左腕がないこと。
ウェナ様の神託も聞こえなくなったけど、
私は、ただ導かれて生きていくよりも、
自分で見つけ出す生き方を尊重したいと思っていた。
誰かの言ったことを鵜呑みにして信じるより、
自分で見たこと、考えたことにこそ意味がある。
前回の旅が、私にそう気付かせてくれた。
平和なこの街で漫然と過ごしながら、
世界中の話をただ聞くより、
再び旅に出て、以前訪れた町の様子が、
あれからどのように変わったのか見てみたいと思い始めていた。
そんな中、お城にいるヨハンからお呼びがかかった。
「また何か相談?」
私はちょくちょくヨハンから呼び出されて相談に応じることがあった。
私自身、王の経験があるわけではないから、役に立っているかはわからないけれど、
彼は、自分だけのエゴで良し悪しを決めてしまうことに抵抗があるのだろう。
「聖女様、近頃、近隣の町で怪異が起こっているようです。
もしかしたら、悪魔たちがまた動き出したのかもしれません。」
「私に悪魔退治をして来いと?」
私は意地悪に聞いてみた。
「そんなことは・・・まぁそうですね。」
ヨハンが気まずそうにはにかむ。
王になったとはいえ、
私とは以前のようにラフに話すことが多かった。
「冗談よ。」
私は笑顔を作り、ヨハンの不安を取り除いた。
「実は以前訪れた町がどうなったか見てみたくて、
そろそろ旅に出てみようかと思っていたところなの。
ちょうどよかったわ。
平和なこの街では私はお役御免だしね。」
ヨハンは私にお供をつけようとしてくれたが、
私は気ままに旅したいと思っていたので、
お供は断ることにした。
「もし兵が必要ならば、いつでも手紙をください。
派兵いたします。
それに、既に周辺の各町には兵を滞在させており、
聖女様には協力するよう命じてあります。」
ヨハンの賢王ぶりから、私は街を離れることに不安はなかった。
「ありがとう。この街のことは頼むわね。」
私は、旅に必要になるであろう物資や金銭と、
上等な馬を王から与えられ、旅に出ることになった。
前回の旅の始まりと、
今回の旅の始まりでは気分が全然違った。
前回のように、半分逃げ落ちるかのような悲壮な心持ちではなく、
晴れ晴れとした気持ちで胸を張りながら街の門をくぐり、東へと向かった。
怪異のことは気がかりだが、
話に聞いた限りでは、以前の悪魔達との戦い程ほど危険でもなさそうだ。
何しろ前回戦った悪魔達のほとんどは、
十邪星とよばれる悪魔の頂点だったわけだし、
今回の怪異も、頻繁に地震が起こるとか、
危険な洞窟に近づいた数人が行方不明になったとか、
本当に悪魔の仕業なのかどうかもわからない程度の怪異でしかないのだ。
それに、今回は心強い後ろ盾がある。
前回は、王やその配下の兵士たちは敵対する存在だったが、
今回はそれらが丸ごと味方なのだ。
そして、いざとなれば、私の右腕にはウェナ様の力が宿っている。
最初に目指したアインの村へは数日の道程が必要だったが、
久しぶりに見る景色は全然違って見えた。
季節が変わり始めたのもあるかもしれないが、
それ以上に気分が違うことが大きいのだろう。
懐かしい景色に、
前の旅では隣にいたガイツのことを、
薄っすらと思い出して懐かしみながら、
潮の香りを感じ始めた頃、アインの村が目の前に現れた。
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