55 / 121
7つの断章編
第5話
しおりを挟む
トカゲ人間は木の上からこちらの様子を伺っている。
どうやら、攻撃できる隙を探っているようだ。
バルゼビアの使い魔は、とりあえず敵の登っている木を揺さぶってみるが、
敵は木から木へと飛び移ってしまってキリがない。
バルゼビアの使い魔も疲れてきているのか、
戦い始めの頃と比べて、動きが大分鈍ってきている気がする。
私は、敵を倒す方法を考えに考えた結果、
やはり私には右腕の力を使う以外のことが考え付かなかった。
問題はその使い方だ。
どう使えば敵に致命的なダメージを与えられるのだろうか?
治療と防御壁といった、
私の力では、敵に直接致命的なダメージを与えることはできそうにない。
やはり、バルゼビアの使い魔が迷いなく攻撃できる状況を作り出すことが、
勝利には一番確実な気がする。
つまり、完全に相手の動きを封じることができなければ、勝機はない。
そこで、私はあることを思いついた。
もし、この防御壁が物理的に相手と干渉することができるならば、
この防御壁で押さえつけてしまうのはどうだろうか。
身動きができないように押さえつけた状態ならば、
バルゼビアの使い魔も、敵に効率的にダメージを与えられるだろう。
それにはまず、使い魔の攻撃が届く場所に落とさなくては。
さきほどはチョロチョロと動き回ってくれていたおかげで、
防御壁に自分からぶつかってくれたが、今はほとんど動きがない。
危険な賭けになるが、
近づいて敵が飛び掛かってくるところを狙うしかない。
私はトカゲ人間の真下あたりへと駆け寄り、
敵の攻撃を誘った。
案の定、トカゲ人間は私に飛び掛かってきたので、
私は後ろに大きく飛んでそれを回避した。
トカゲ人間はそれを予期していたのか、
舌を長く伸ばして、私の右腕に絡みつかせた。
右腕が強く締め付けられる。
敵に引き付けられそうになるのを、踏ん張ってとどまりながら、
敵に向けて右腕の力を放った。
トカゲ人間は防御壁と木の間に挟まり、
ジタバタともがいた。
せめてもの抵抗なのか、
右腕がトカゲ人間の舌で強く締め付けられる。
舌が右腕に強く食い込み、引きちぎられそうだ。
しばらくして、ようやくバルゼビアの使い魔が敵に駆け寄り、
敵を殴り始めた。
兵士たちも駆け付けて、私の右腕に巻き付いた舌を
剣で何度も斬りつける。
やがて、だんだん舌の巻き付ける力が抜けていき、
敵がぐったりとし始めた。
まるで大人数で一人を虐めているみたいで、
少し心が痛んだが、相手は悪魔だ。
油断すれば、こちらの命がないかもしれないのだ。
私は、心の中で謝りながら、その光景を見ていた。
そして、私の右腕に巻き付いた舌が力なく解けた時、
バルゼビアの使い魔も攻撃の手を止めた。
敵は防御壁と木の間に挟まったまま力なくうなだれ、
ほどなくして、小さな魔力の球へと変わった。
「ようやく終わりね。」
私は、胸をなでおろして、その場にしゃがみこんだ。
敵の舌が巻き付いた右腕が、ジンジンと痛む。
いつの間にか、私のすぐ後ろにやってきていたバルゼビアが、
私の肩に手を置いた。
「お疲れ様。よくやってくれた。
あいつの落し物はあたしが貰っていくよ。」
バルゼビアはトカゲ人間の球へと歩いていく。
彼女が球を拾い上げると、
彼女の手に吸い込まれるように消えていった。
いつのまにやらバルゼビアの使い魔の姿も無くなっていた。
「さて、と、いろいろと話さないといけないんだっけ?」
バルゼビアは、再び私のところまで歩いてきて、言った。
そうだった。
私はバルゼビアにいろいろと聞きたいことがあった。
なぜ、バルゼビアがこんなところにいるのか、
なぜ、彼女が悪魔と戦う必要があるのか、
あの後、ルザーフとなにがあったのか、
そして、この世界に今度は何が起きようとしているのか・・・。
どうやら、攻撃できる隙を探っているようだ。
バルゼビアの使い魔は、とりあえず敵の登っている木を揺さぶってみるが、
敵は木から木へと飛び移ってしまってキリがない。
バルゼビアの使い魔も疲れてきているのか、
戦い始めの頃と比べて、動きが大分鈍ってきている気がする。
私は、敵を倒す方法を考えに考えた結果、
やはり私には右腕の力を使う以外のことが考え付かなかった。
問題はその使い方だ。
どう使えば敵に致命的なダメージを与えられるのだろうか?
治療と防御壁といった、
私の力では、敵に直接致命的なダメージを与えることはできそうにない。
やはり、バルゼビアの使い魔が迷いなく攻撃できる状況を作り出すことが、
勝利には一番確実な気がする。
つまり、完全に相手の動きを封じることができなければ、勝機はない。
そこで、私はあることを思いついた。
もし、この防御壁が物理的に相手と干渉することができるならば、
この防御壁で押さえつけてしまうのはどうだろうか。
身動きができないように押さえつけた状態ならば、
バルゼビアの使い魔も、敵に効率的にダメージを与えられるだろう。
それにはまず、使い魔の攻撃が届く場所に落とさなくては。
さきほどはチョロチョロと動き回ってくれていたおかげで、
防御壁に自分からぶつかってくれたが、今はほとんど動きがない。
危険な賭けになるが、
近づいて敵が飛び掛かってくるところを狙うしかない。
私はトカゲ人間の真下あたりへと駆け寄り、
敵の攻撃を誘った。
案の定、トカゲ人間は私に飛び掛かってきたので、
私は後ろに大きく飛んでそれを回避した。
トカゲ人間はそれを予期していたのか、
舌を長く伸ばして、私の右腕に絡みつかせた。
右腕が強く締め付けられる。
敵に引き付けられそうになるのを、踏ん張ってとどまりながら、
敵に向けて右腕の力を放った。
トカゲ人間は防御壁と木の間に挟まり、
ジタバタともがいた。
せめてもの抵抗なのか、
右腕がトカゲ人間の舌で強く締め付けられる。
舌が右腕に強く食い込み、引きちぎられそうだ。
しばらくして、ようやくバルゼビアの使い魔が敵に駆け寄り、
敵を殴り始めた。
兵士たちも駆け付けて、私の右腕に巻き付いた舌を
剣で何度も斬りつける。
やがて、だんだん舌の巻き付ける力が抜けていき、
敵がぐったりとし始めた。
まるで大人数で一人を虐めているみたいで、
少し心が痛んだが、相手は悪魔だ。
油断すれば、こちらの命がないかもしれないのだ。
私は、心の中で謝りながら、その光景を見ていた。
そして、私の右腕に巻き付いた舌が力なく解けた時、
バルゼビアの使い魔も攻撃の手を止めた。
敵は防御壁と木の間に挟まったまま力なくうなだれ、
ほどなくして、小さな魔力の球へと変わった。
「ようやく終わりね。」
私は、胸をなでおろして、その場にしゃがみこんだ。
敵の舌が巻き付いた右腕が、ジンジンと痛む。
いつの間にか、私のすぐ後ろにやってきていたバルゼビアが、
私の肩に手を置いた。
「お疲れ様。よくやってくれた。
あいつの落し物はあたしが貰っていくよ。」
バルゼビアはトカゲ人間の球へと歩いていく。
彼女が球を拾い上げると、
彼女の手に吸い込まれるように消えていった。
いつのまにやらバルゼビアの使い魔の姿も無くなっていた。
「さて、と、いろいろと話さないといけないんだっけ?」
バルゼビアは、再び私のところまで歩いてきて、言った。
そうだった。
私はバルゼビアにいろいろと聞きたいことがあった。
なぜ、バルゼビアがこんなところにいるのか、
なぜ、彼女が悪魔と戦う必要があるのか、
あの後、ルザーフとなにがあったのか、
そして、この世界に今度は何が起きようとしているのか・・・。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる