隻腕の聖女

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7つの断章編

第11話

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カマキリ型の悪魔の羽が飛び立たんとするかのように、
バタバタと羽ばたく。

軽く風が起こり、私の髪がなびいた。
私は、相手の不穏な動きに、
先んじて防御壁を張った。

直後、凄まじい勢いで敵が突っ込んできた。
両手を前に突き出して、高速で回転している。

防護壁の一点が激しく消耗し、
みるみるうちに穴が開いていく。
あんなものを直接受けていたら、
ひとたまりもないだろう。

防御壁が受けてくれているかといって、
安心できる状況ではない、
なぜなら、防護壁は今にも破られそうだからだ。

私たちは、後ずさりして、距離をとる。

防御壁にわずかな穴が開き、
相手の鎌が防御壁を越えて来た。

このままでは危険だ。

私はリスバートが早く戻ってこないだろうかと、
ヤキモキしながら後ろをちょろちょろと振り返る。

やがて、防護壁にできた穴から、亀裂が入り始めた。

そのとき、リスバートが戻ってきて、
ベアトリスを避難させたとの報せが入った。

私たちは、急いでその場を離れ、後退した。

防御壁は完全に破られ、
敵が鎌を振り回しながら私たちを追いかけてくる。

「敵さん、相当怒っているな。」
リスバートが洞窟の入り口に向かって走りながら、呑気なことを言う。
私は、リスバートは放っておいても心配ないだろうと思った。

心配なのは少女だ。
体に傷を負いながら、必死に走っている。
体が小さいためか、敵に追いつかれてしまいそうな速度だ。

私は少女の歩幅に合わせて走っていたが、度々追いつかれ、
そのたびに防御壁を張りつつ、少女の足の傷を癒してサポートを続けた。

このままでは埒が明かないと思った私は、
ベアトリスの使い魔に少女を託して、
私一人が残って敵の進軍を抑えることにした。

「敵わないと悟り、逃げ出すか・・
 しかし、いずれ邪魔になるであろう。
 今のうちに消しておかねばな。」
カマキリの姿をした悪魔は、少し苛立ちながら、
私が先ほど張ったばかりの防御壁を破ろうと鎌で叩く。

私の右腕の力にも限界がきているのか、
防御壁は張るたびに強度が落ちている。

今では、一度叩かれただけで、全体に薄くヒビが入ってしまう。

あと一度、二度、防御壁を張ればそれが最後かもしれない。

私は、防御壁が完全に破壊される前に、
洞窟の入り口に向かって全力で走った。

どうやら、リスバートも少女も逃げ切れたようで、
洞窟を抜けたところで待っていた。

「奴も、すぐ追って来るわ。
 リスバート、空で待機して相手の弱点を探って。
 ベアトリスの使い魔、あなたは私と敵の注意を引き付けましょう。
 それと、あなた。」
私は少女と目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「お願い、力を貸して。
 あのおじさんが弱点を探してくれるから、
 弱点に向かって魔力を放ってほしいの。」
少女は黙って頷いた。

「乗りな、そのほうが狙いやすいだろ。
 危険も少ないしな。」
いつのまにやら悪魔の姿に変わっていたリスバートが、
少女を背に乗せて、空へと向けて羽ばたいた。

リスバートが上空で待機する態勢が整うと、
カマキリの姿をした悪魔が洞窟から出てきた。

「逃げ切れるとでも思っているのか?
 無駄だ。逃しはせんぞ。」
相手は、羽を大きく広げて、羽ばたき始めた。

きっとさっきと同じ攻撃だ。
しかし、さっきとは違い、私の力が十分ではない。

あんな攻撃が直撃したら、ひとたまりもないだろう。

まずい・・・。

私の焦りを察したのか、
ベアトリスの使い魔が私の前に立ちはだかり、
敵の攻撃を受け止めようとして両手を広げた。

少しでも敵の攻撃の威力を弱めようと、
私は、ベアトリスの使い魔の前に防御壁を張った。

そして、その直後、
敵の鎌が、回転しながら私達めがけて突っ込んできた。
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