隻腕の聖女

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7つの断章編

第15話

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翌朝、少し早めに起きた私は、レイリアがまだ眠る中、
ベアトリスとリスバートを起こして、井戸端会議を始めた。

「昨日、レイリアと話していて偶然聞いてしまったんだけど、
 彼女、ロスタートの娘らしいの。」

「ほうほう、ロスタートに娘が・・・?
 私は聞いたことはないが、
 聞いたことがないからと言って、いないとも限らない。」
リスバートが深く考え込む。

「どうせ、嘘だろう。
 と、言いたいところだけど、
 わざわざバレる嘘を吐く意味もよく分からないね。」
ベアトリスは、レイリアを疑う姿勢に変わりはないが、
あまりの不条理さに迷いが生じているようだ。

「ふーむ、嘘だとしても、一体何が目的なのか。
 確かに意味は分からないな。
 本当にロスタートの娘なのかもしれない。
 だとしたら、レイリアにはロスタートが既にいないことは
 悟られないようにしなければな。」
リスバートが、頭を数回掻く。

「やっぱり、このまま黙っているほうがいいのかな?」
私の心をモヤモヤとしたものが包んでいくのを感じていた。
レイリアのためには真実を話して知らせることが一番だと思うが、
彼女と対立したくはない。

「ルザーフがロスタートを殺して力を奪ったことにすれば、
 あいつを倒すのに利用できるかもしれないね。
 実際、今、ロスタートの力を持っているのはあいつなんだ。」
ベアトリスが冗談なのか、本気なのか分からないトーンで言い放つ。

「狡猾さで言えば、そういう手もあるのかもしれないけれど、
 理由はどうあれ、実際にロスタートに手を下したのは私に違いない。
 レイリアを騙すなんて、残酷なこと私には出来ない。」
何も知らないレイリアに嘘を教え、
自分の都合のいいように動かすなんて、残酷すぎる。

「今更、起こってしまった事実は変えることができない。
 それに、いつ、どんな形で嘘がバレるかわかったもんじゃない。 
 嘘を吐いたと知られれば、余計にあの子は私達を信頼できなくなる。
 何の解決にもならないさ。」
リスバートの言葉にベアトリスが黙って頷く。

「私が、十邪星を倒しながら旅をしていたことを知られても、
 間接的にロスタートを倒してしまったことを悟られてしまうかもしれないから、
 むやみに街の中を出歩かないほうがいいかもしれない。」
なんだか、顔を隠して逃げ回る悪人のようだ。
確かに、レイリアからすれば、親を殺した大悪党ともとれる。
私の心のモヤモヤは、話をすればするほど溜まっていく。

「まったく、本当に面倒な娘だね。
 やっぱり、このままここに置いていこう。」
ベアトリスがとんでもないことを言い出す。

「しかし、もし、彼女がこのまま一人で旅を続け、
 イヴがロスタートを倒してしまったことを知った時、
 彼女が敵として現れるのが、一番厄介なことじゃないか?
 近くで、私達は彼女の敵ではないことを示し、
 見守り続けることが、一番の解決策だろう。
 やがて、ロスタートが戦いの中で、仕方なく命を落としたことを、
 理解してくれるかもしれない。」
リスバートの言っていることが一番納得できる。

結局、レイリアにはロスタートのことは黙って、
旅に連れていくことになった。

私は、街に入るときはフードを被り、なるべく人目を避けることにした。

悪魔を祓ったことが、ここまで私の心を苦しめるだなんて、
あの時は思っていなかった。

やはり、争いなど、ないに越したことはない。
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