隻腕の聖女

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7つの断章編

第26話

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私は、とりあえず敵の攻撃から身を守るために、
全員を覆うような防御壁を張った。

しかし、このまま防御壁を張り続けても、
相手を倒すことはできない。

そもそも、全員を覆うような防御壁は、
私の力の消耗が激しく、いつまでも持つようなものではない。

「おねぇさん、血が・・・。」
後ろにいたレイリアが声を上げる。

レイリアの指差す先、
ベアトリスの背中には、私同様の傷がついていた。

防御壁を張る以前に付けられたものだろうか?

私は、ベアトリスの傷口に触れ、傷を癒した。
すぐ塞がったものの、防御壁を張りつつ治療をし続けるなると、
消耗も激しくなる。

解決策も見つからない中、
消耗だけが続いていく。

私は、焦り始めた。

今までにないパターンの敵に、対処方法がまるで分からない。

何とか敵の位置だけでも分からないものだろうか・・・。

頭をフル回転してその方法を考えていると、
ディメイアの力を使っていた時に、
目を閉じて集中すると、
敵の位置がぼんやりと把握することができたことがあったのを思い出した。

「ベアトリス、リスバート、悪魔の位置を感知することはできない?」
私の問いに、二人は首を振って答えた。

「何かノイズのようなものがあって、
 あちらこちらにチラチラと感じるんだ。
 感じたものも、すぐに消えてしまうし・・・。」
リスバートは困惑した様子だ。

「もしくは、高速で動き回っているかだね。
 あたしたちが感知するより先に相手が移動しているんだろう。」
ベアトリスが、悔しそうに舌打ちをして唇をかむ。

そうこうしているうちに、防御壁が徐々に薄くなり始める。
私の力がもたなくなってきているのだ。

「痛っ。」
突然、レイリアが声を上げる。
レイリアの頬には、小さな傷ができていた。

先ほどまで、そのような傷はなかった。
ということは、防御壁を貫通してきているのだ。

私はしゃがみこんで、レイリアの頬に手を当てた。

私があまりの焦燥感に、半ばパニック状態に陥っていると、
「よし、ここは私の出番だな。」
と、何を考えたのか、リスバートが何やら決心した様子だった。

「防御壁を解いて、みんなここから離れていてくれ。
 私も十賢星のはしくれだ。そうやすやすとやられはしない。
 私の能力をみせてやるよ。」

私も、ベアトリスも彼のことを心配したが、
それでも、「私にもたまには見せ場を作らせてくれ。」
といって聞かなかった。

しょうがなく、防御壁を解くと、
私達はリスバートから離れて待機することにした。

私達が離れたところに退避するのを見届けると、
リスバートは、大きな鳥の姿に変身して、
低空を、円を描くように飛び始めた。

大きな風が起こり、その風は、遠く離れた私達の元にも届いた。
私達は、強風に耐えるために岩陰に隠れ、その様子を見守った。

リスバートは、一体何をするつもりなのだろう・・・。
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