隻腕の聖女

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7つの断章編

第28話

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「我が子達をよくも・・・。」
私の頭上から、怨嗟の声が響いた。

見上げると、尾が鋭利な鎌形になっている、
イタチ型の悪魔が空を漂っていた。

「我が子達」ということは、
先ほど倒した数匹の悪魔の親なのだろうか。

言われてみれば、レイリアの左手の傷は、
先ほどまでの傷と比べると、大きく深い。

とりあえず、あの悪魔を倒さなくては。

「レイリア、もう一度撃てる?」
既に左手の傷が完治していた彼女に尋ねると、
彼女は躊躇した様子で、返事を渋った。

どうしたのだろうか?

もう魔力が尽きてしまったのだろうか?
傷を治したときに、私の力も流れ込んでいるはずなのだが・・・。

彼女に何があったのか分からなかったが、
出来ないというものを無理やり押し付けるわけにもいかず、
私とベアトリスで対処することにした。

しかし、
「イヴ、もう休んでいていいよ。
 相手の正体が分かったのなら恐れるものはない。
 ここからはあたしの見せ場だ。」
ベアトリスは、やけに自信満々で、
私に「そこで待っていろ」とでも言わんばかりに、
掌を突き出して私を制止した。

「人間ごときが粋がるな。
 すぐに恐怖で顔を歪めさせてくれるわ!」
そう言うと、イタチ型の悪魔は高速で回転し始めた。
鎌のような尻尾が、回転する刃となってベアトリスに襲い掛かる。

「危ないっ。」
私は思わず叫んでしまった。

しかし、ベアトリスは意に介さない様子で、その場に立ち尽くす。

イタチ型の悪魔の攻撃は、素早く、目にもとまらぬ速さで直進する。
そして、そのままベアトリスを貫通し、
ベアトリスの腹部には大きな穴が開いた。

「ベアトリス!」
あまりの驚きに、私は心臓が飛び出しそうになった。
彼女が悪魔だから、それが死に直結することがないことは分かっているとは言え、
敵の一方的すぎる展開にベアトリスのことが心配になる。

「粋がっておいてこの程度か。」
イタチ型の悪魔は、慈悲もなく、鋭利な尾でベアトリスを背後から切り付け、真っ二つにする。
ベアトリスは、そのまま前方に倒れてピクリとも動かなくなった。

「そんな・・・。」
私は、度重なるショックで立っていられず、その場に膝から崩れ落ちた。

しかし、次の瞬間、イタチ型の悪魔の背後に、
蛾のような姿をした悪魔が現れ、
手にした赤黒く光る刃で一閃し、イタチ型の悪魔は消滅した。

蛾のような姿の悪魔は、イタチ型の悪魔が残した赤黒い球を拾うと、
直後、一瞬だけ激しい光に包まれ、
次の瞬間、そこから、真っ二つにされたはずのベアトリスが現れた。

「どういうこと・・・?」
私が困惑していると、
真っ二つになったベアトリスは、いつの間にか消え、
赤黒い球へと変わっていた。

「もう忘れたのか?前に言っただろう?
 あたしの得意技は召喚とだ。」

彼女の説明によると、
どうやら敵の攻撃が直撃したのは、
ほとんど魔力を持たないデコイ(おとり)のようなもので、

本体は既に上空へと退避していたようだ。

そして、相手が油断している隙に、魔力で出来た刃で敵を切り裂いたという。

なるほど、ベアトリスを敵にしていたら、恐ろしい相手だったに違いない。

十邪星の恐ろしさを改めて感じ、
それとともに、仲間である心強さを感じた。

それにしても、
「本来の姿に戻ることができるようになったのね。おめでとう。」
私は、ベアトリスに祝福の意を表した。

「実は、蛇の魔力を手に入れた後くらいから、
 既に戻れるようになっていたんだが、
 華々しい復帰の場を探していたのさ。」
と、ベアトリスは自慢気に語った。

「なんだって?これじゃあ結局、
 最後に良いところを全部持っていかれてしまったみたいじゃないか。」
リスバートが嘆く。

じゃない。なんだ。」
珍しくベアトリスが高笑いする。

「いいさ、いいさ。
 結局私は日陰者さ。」
リスバートが肩を落として、とぼとぼと岩山に向かって歩き出す。

「さて、断章は恐らくあの岩山だ。」
ベアトリスがコンパスの針を再び確認して念を入れる。

私達もリスバートを追うようにして岩山へと向かった。
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