隻腕の聖女

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7つの断章編

第29話

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コンパスの針が指した岩山には、洞穴があり、
その奥には、人為的に作られたかのような台座があった。
そして、その上には、やはり、小さな金属片があった。

「これで4つ目か。」
ベアトリスが断章をつまみ上げ、
私に手渡しながら言う。

「ルザーフも大したことないわね。」
私は、無事に過半数の断章を手に収めることができて、
ルザーフより優勢であると感じていた。

「大方、魔力を分けすぎたんだろう。
 本体にもある程度力を残したうえで、
 7体に魔力を分けるとなれば、この程度なのも頷ける。
 あたしの力の戻り方を考えると、この調子なら楽勝かもな。」
ベアトリスは魔力と同時に自信も取り戻していくようで、
私達が再会したころに比べると、
笑顔が増えているような気がする。
少し高飛車な喋り方もだが・・・。

高飛車なのは考え物ではあるが、
彼女の力は本物であることも事実だ。
このまま力を手に入れ続ければ、
きっとルザーフを倒すことができるだろう。

「どうした?さっきから元気がないな。」
リスバートがレイリアに喋りかける。
レイリアは、少し俯き加減で思い詰めた様子で黙り込む。

戦闘中は気が付かなかったが、
どうして彼女に元気がないのか分かった気がした。

あの悪魔が親子だったからだ。

知らなかったとはいえ、子供たちを手にかけて、
そして、その母親をも手にかけようとした。

彼女は、そこに自分とロスタートの姿を重ねてしまったのだろう。

恐らく、彼女は私達のの意味を知らない。
悪い言い方をすれば、そんな彼女を私達はしているのだ。

私は、そのことにはっきりと気付いてしまった時、
押しつぶされるかのような罪悪感を感じた。

しかし、それでもルザーフがこの世界を破壊するのを阻止し、
レイリアが生きていく世界を守ることは、彼女にとっても必要なことだ。

今は、まだ打ち明けることができないけれど、
いつか、ロスタートの命を奪ったのが私であることを伝え、
許しを請わなければならない時も訪れるであろう。

ロスタートと私は、決して憎しみ合うが故に戦ったわけでも、
どちらが悪だったということもない。

言い訳だと思われてしまうかもしれないが、
それぞれが意思を持って生きていく上で、
それを守るために、時には戦わなければいけない。

戦うためには、欺いたり、牙をむくこともあるだろう。

そうでなければ、他の誰かに搾取され、屠殺されかねない。

この世界が有限である以上、
全ての人がハッピーエンドを迎えることはできないのだ。

レイリアに世間のことを教えるなどと、傲慢なことを言うつもりはないが、
私達が生きる世界とはそういうものなのだと、私は思う。

でも、私は、そんな世知辛い世界が嫌いでもある。

だからこそ、この罪悪感は、
私の意志で動き続ける以上、
背負い続けなければいけないと思った。

私は、何も言わず、レイリアの頭を撫で、
背中を軽く押して、洞穴を後にした。
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