隻腕の聖女

KURO.DIGITAL

文字の大きさ
87 / 121
7つの断章編

第37話

しおりを挟む
翌日、私は、まだ皆が寝静まる早朝、ガイツの墓参りに行った。

あの後、日が傾きかけていたこともあり、
フルトの街で泊まることになったのだ。

当然、街中ではあまり目立たぬように歩いたし、
神殿へは近寄らないようにした。

幸い、誰にも気づかれることなく宿に到着し、
何事もなかったかのように眠りにつくことができた。

私以外は・・・。


墓では、早朝にも関わらず、墓守の老人が出迎えてくれた。

「お久しぶりです。
 またお会いしましたね。」
老人は私を覚えていてくれたらしく、
目深に被ったフード越しに挨拶をしてくれた。

私はフードを脱いで挨拶する。

「ガイツ様の石像はもうご覧になられましたか?」
老人が丁寧、且つ穏やかな口調で尋ねて来た。

「いえ、まだ。」
レイリアと共に行動していることを考えると、
「ガイツ」というよりも、「ロスタートを倒した英雄の像」を、
前にする勇気がない。
レイリアが隣にいなかったとしても、だ。

「ぜひ、ご覧になられてください。
 本日は、ガイツ様のお墓へ?」
私が頷くと、老人はガイツの墓へと案内してくれた。

ガイツの墓は、今でも新しい花が供えられている。
街の人々の記憶に、今でも残っているのだろう。

私は右手で墓に触れた。
あの時、右手のこの力があれば、ガイツは死なずに済んだのだろうか?

流石に、ウェナ様の力でも死者までは生き返らせることはできない。
私にできるのは、せいぜい安らかな眠りを祈る程度だ。

「こうして、聖女様に祈ってもらうことができて、
 ガイツ様も幸せだと思います。」
老人の言葉に、私もそうあってほしいと願った。

私は、レイリアが目を覚ます前に宿に戻るため、
早々に切り上げることにした。

「また来るね。」
私は、ガイツの墓にその言葉を残し、その場を去った。

宿に戻ると、ベアトリスが起きていて私を出迎えた。

「レイリアは、ロスタートとあんたのことを知っていたぞ。」
私は、驚くこともなく、「そう」とだけ反応した。

「聞いてたんだな。どうする?打ち明けるのか?」
この時、ベアトリスには頷いてみたものの、
いつ、どのように打ち明けるのかは決められなかった。

「知っていてもイヴを信頼して協力してくれてるんだ。
 お前もレイリアを信頼しろ。」
ベアトリスの言葉に、私はハッとした。
私はレイリアを信頼できていなかったということだろうか?
だから、打ち明けるのが怖いのだろうか?

「打ち明けられずにいて、後悔するのはあんただと思うけどな。」
ベアトリスはそれだけ言うと、宿の中へと入っていった。

日が昇ると、馬と共に船で川を下り、ゼクートへ向かった。

断章も残り2個だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

乙女ゲームのヒロインなんてやりませんよ?

喜楽直人
ファンタジー
 一年前の春、高校の入学式が終わり、期待に胸を膨らませ教室に移動していたはずだった。皆と一緒に廊下を曲がったところで景色が一変したのだ。  真新しい制服に上履き。そしてポケットに入っていたハンカチとチリ紙。  それだけを持って、私、友木りんは月が二つある世界、このラノーラ王国にやってきてしまったのだった。

アロマおたくは銀鷹卿の羽根の中。~召喚されたらいきなり血みどろになったけど、知識を生かして楽しく暮らします!

古森真朝
ファンタジー
大学生の理咲(りさ)はある日、同期生・星蘭(せいら)の巻き添えで異世界に転移させられる。その際の着地にミスって頭を打ち、いきなり流血沙汰という散々な目に遭った……が、その場に居合わせた騎士・ノルベルトに助けられ、どうにか事なきを得る。 怪我をした理咲の行動にいたく感心したという彼は、若くして近衛騎士隊を任される通称『銀鷹卿』。長身でガタイが良い上に銀髪蒼眼、整った容姿ながらやたらと威圧感のある彼だが、実は仲間想いで少々不器用、ついでに万年肩凝り頭痛持ちという、微笑ましい一面も持っていた。 世話になったお礼に、理咲の持ち込んだ趣味グッズでアロマテラピーをしたところ、何故か立ちどころに不調が癒えてしまう。その後に試したノルベルトの部下たちも同様で、ここに来て『じゃない方』の召喚者と思われた理咲の特技が判明することに。 『この世界、アロマテラピーがめっっっっちゃ効くんだけど!?!』 趣味で極めた一芸は、異世界での活路を切り開けるのか。ついでに何かと手を貸してくれつつ、そこそこ付き合いの長い知人たちもびっくりの溺愛を見せるノルベルトの想いは伝わるのか。その背景で渦巻く、王宮を巻き込んだ陰謀の行方は?

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...