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7つの断章編
第39話
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洞窟は、以前訪れた時の複雑さはなく、
ところどころアリが掘ったであろう背の低い穴はあったものの、
水没個所や、蛇行することもなく、ほぼ真っすぐに進んで行くだけになっていた。
真っ暗だったこともあり、
どれほどの時間がかかったのかまでは把握できなかったが、
恐らく数時間かかった道程を数十分でたどることができた。
そして、私達が到達したのは、リヒヤールと戦ったあの地底湖だった。
「恐らく、あそこだろうな。」
ベアトリスは、手元のコンパスと、
アリのフェロモンで出来た道しるべを見くらべながら、
地底湖の脇に出来た、小さな横穴を指さした。
「地底湖からいきなり襲い掛かってきたりしないだろうな?」
リスバートの言葉に、全員が地底湖に目を落とす。
地底湖の中がどうなっているかは、真っ暗で何も見えない。
以前は飾られていた松明の明かりも、
リヒヤールとその使い魔がいなくなったせいか絶えてしまっていた。
私達に残されたのは、ドウクツアリの、ほのかな明かりだけだ。
「地底湖からは、なるべく離れて進もう。」
先頭を行っていたベアトリスも不気味に感じたのか、
地底湖から離れて壁沿いに歩き始めた。
断章が近いのに、まだ敵の姿を把握できていない。
今回はいないという可能性はなきにしもあらずだが、
用心するに越したことはない。
しかし、私の心配を余所に、何事も起こらず断章のある台座にたどり着いてしまった。
「今回はルザーフの使い魔は無しか。
拍子抜けだな。」
ベアトリスが断章を台座からつまみ上げる。
彼女から断章を受け取ると、私はいつも通り皮袋に納めた。
「これで6つ。あとひとつね。」
私がそう言った直後だった。
洞窟が大きく揺れ始め、私は尻もちをついてしまった。
地震が起きたのだ。
「まずいな。生き埋めになるかもしれん。」
リスバートが恐ろしいことを、冷静に呟くように言う。
「もしかして、断章を台座から取ったから?」
私は断章を台座に返そうと皮袋から断章を取り出した。
「待て、少し落ち着け。そんな高度な仕掛けがこの洞窟にあると思うか?」
しばらくすると、ベアトリスの言う通り、地震は止んだ。
このタイミングで起こったのは、ただの偶然だったのだろう。
「とりあえず早く出ましょう。
また地震がきて、今度こそ生き埋めにされてしまうわ。」
私達は急いでアリのフェロモンを追って洞窟を抜け出した。
あの複雑な道を通らなくて良かったと、その時、心底思った。
洞窟から抜け出すと、まだ日は高かったが、辺りは少し暗かった。
雲で日が陰っているのだろう。
「今回は余裕だったな。」
ベアトリスが満足そうな、
少し物足りなさそうな複雑な表情をする。
が、次の瞬間、ベアトリスの表情が、一気に曇った。
リスバートも先ほどから凍り付いたように洞窟の入り口付近から動かない。
レイリアは洞窟の上の方を口を開けて眺めている。
私は、レイリアの視線の先に何があるのか気になり、
洞窟のある山の方を振り返った。
なんと、そこにあったのは、
山すらも遥かに越え、
天を掴むほどの巨大な影だった。
ところどころアリが掘ったであろう背の低い穴はあったものの、
水没個所や、蛇行することもなく、ほぼ真っすぐに進んで行くだけになっていた。
真っ暗だったこともあり、
どれほどの時間がかかったのかまでは把握できなかったが、
恐らく数時間かかった道程を数十分でたどることができた。
そして、私達が到達したのは、リヒヤールと戦ったあの地底湖だった。
「恐らく、あそこだろうな。」
ベアトリスは、手元のコンパスと、
アリのフェロモンで出来た道しるべを見くらべながら、
地底湖の脇に出来た、小さな横穴を指さした。
「地底湖からいきなり襲い掛かってきたりしないだろうな?」
リスバートの言葉に、全員が地底湖に目を落とす。
地底湖の中がどうなっているかは、真っ暗で何も見えない。
以前は飾られていた松明の明かりも、
リヒヤールとその使い魔がいなくなったせいか絶えてしまっていた。
私達に残されたのは、ドウクツアリの、ほのかな明かりだけだ。
「地底湖からは、なるべく離れて進もう。」
先頭を行っていたベアトリスも不気味に感じたのか、
地底湖から離れて壁沿いに歩き始めた。
断章が近いのに、まだ敵の姿を把握できていない。
今回はいないという可能性はなきにしもあらずだが、
用心するに越したことはない。
しかし、私の心配を余所に、何事も起こらず断章のある台座にたどり着いてしまった。
「今回はルザーフの使い魔は無しか。
拍子抜けだな。」
ベアトリスが断章を台座からつまみ上げる。
彼女から断章を受け取ると、私はいつも通り皮袋に納めた。
「これで6つ。あとひとつね。」
私がそう言った直後だった。
洞窟が大きく揺れ始め、私は尻もちをついてしまった。
地震が起きたのだ。
「まずいな。生き埋めになるかもしれん。」
リスバートが恐ろしいことを、冷静に呟くように言う。
「もしかして、断章を台座から取ったから?」
私は断章を台座に返そうと皮袋から断章を取り出した。
「待て、少し落ち着け。そんな高度な仕掛けがこの洞窟にあると思うか?」
しばらくすると、ベアトリスの言う通り、地震は止んだ。
このタイミングで起こったのは、ただの偶然だったのだろう。
「とりあえず早く出ましょう。
また地震がきて、今度こそ生き埋めにされてしまうわ。」
私達は急いでアリのフェロモンを追って洞窟を抜け出した。
あの複雑な道を通らなくて良かったと、その時、心底思った。
洞窟から抜け出すと、まだ日は高かったが、辺りは少し暗かった。
雲で日が陰っているのだろう。
「今回は余裕だったな。」
ベアトリスが満足そうな、
少し物足りなさそうな複雑な表情をする。
が、次の瞬間、ベアトリスの表情が、一気に曇った。
リスバートも先ほどから凍り付いたように洞窟の入り口付近から動かない。
レイリアは洞窟の上の方を口を開けて眺めている。
私は、レイリアの視線の先に何があるのか気になり、
洞窟のある山の方を振り返った。
なんと、そこにあったのは、
山すらも遥かに越え、
天を掴むほどの巨大な影だった。
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