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新しい世界
第9話
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アルテアの塔は、ウルスから西に2日ほど走り続けると、ようやくたどり着く。
塔の正面には鏡のように澄んだ湖が広がっており、
地面を対称に、上下に塔が伸びているようにも見える。
20階層ほどの高い塔で、
頂上にはアルテア様が使用していた武器が納められていると言われている。
「言われている」と表現したのは、
実際にそれを確認したことがある人はいないからだ。
なぜなら、塔の扉には、カギどころか取っ手もなく、
今までに塔の中を調べた人はいないのだ。
誰かが、根拠もなく噂し始めたのか、
はたまた、それを納めた人々から言い伝えられたのか、
出処も定かではないが、とりあえずそう言われている。
なので、当然、塔の扉は閉ざされているはずだった・・・。
しかし、私が塔に着いた時、既に塔の扉は解放されていた。
「塔の扉が開いている・・・。」
私が驚いていると、ベアトリスも驚いた様子で私を見つめた。
「なんだ?知らなかったのか?
この扉を開けるためにあんたの右腕が一度切り落とされたんだろ?」
「え!?」
私は、初めて聞く重要な話を、
当たり前のことのように言い放つベアトリスに、再び驚いて声を上げてしまった。
「ウェナの結界が張られていたから誰も近寄ることができなかった。
それを解くことができるのはウェナの力だけだ。
だから、あんたの右腕を切り落としてまでここに持ってきたんだろ。」
「私が王位を脅かしたからではないの?」
私の頭の中はパニックだった。
「そうか、あんたは、なんにも知らされなかったんだな。」
ベアトリスの話によると、
昔の王、オルテガが地獄を作り出し、覇権を握るようになってから、
ディメイアは復讐の悪魔となって、
人々を虐殺しながら彼のいる王城を目指し始めた。
やがて、
念願叶い、ディメイアが宿敵オルテガを討つことになるのだが、
ウェナ様は、アルテア様が遺した力と、
ディメイアがもたらした悲劇を嘆き悲しんで、
2度と使われぬよう封印することにしたのだという。
ディメイアはウェナ様の左腕に封印され、
アルテア様の力は、剣と共にこの塔へと封印された。
以来、この塔はウェナ様の力なしでは開かなくなった。
その後、ウェナ様は姿を消し、
アルテア様の力は、もう二度と手に入らないものだと思われていた。
そして、アルテア様のもうひとつの剣によって封印されたウルガリウスも、
唯一、封印を解くことができる片割れの剣を失ったことで、
封印されたままになったようだ。
そして時は流れ、数百年後、突如として現れたのが、
ウェナ様の力を持って生まれた私なのだという。
「もしかして、ウルガリウスの封印を解くために私の右腕が狙われた?」
「そうだね。アルケスはそう思っていたはずだ。
ウルガリウス様の封印を解いて、あたしたちの世界を元通りにするために、
アルテア様の力を求めていた。
そして、そのためにはウェナの力が必要不可欠だったのさ。」
しかし、それならば、ひとつの疑問が浮かび上がる。
「こうして扉の封印が解かれているということは、
アルケス達がアルテア様の力を持ち出したってことでしょ?
ならば、なぜその後も魔力を集めていたの?」
アルテア様の力があるのならば、
十邪星たちも、人々を苦しめまで魔力を紡ぎだす必要は無かったはずだ。
「この扉を開いたのは、アルケスじゃないのさ。
あんたの右腕は、切り落とされた後に何者かに盗まれ、
その何者かによって開かれることになった。
今ならば、その何者かが分かるけどね。」
「もしかして、ルザーフ?」
そう言ってから、私の右腕を返しに来たルザーフのことを思い出した。
彼が私の右腕を持っていたのは、つまり、そういうことだったのだ。
「そして、ルザーフの下僕であるアリウスとかいう男が、
この塔からアルテア様の剣を持ち出したのさ。
で、今に至るってところかな。」
言われてみれば、リヒヤールも、ウェナ様の力があれば争う必要などないと言っていた気がする。
彼らも、数百年待ってようやく手に入れたはずのウェナ様の力を奪われて失望していたのだろう。
話が分かるにつれて、全ての元凶がルザーフであったことに気付く。
「知っていたのなら教えてくれればよかったのに。」
「すまなかった、あんたが知らないってことを知らなかったんだ。」
ベアトリスが申し訳なさそうに謝る。
「他に黙っていることは?」
私が問いただすように訊くと、
「黙ってるわけじゃないんだって。
他には無いよ。・・・多分。」
と、ベアトリスは自信なさ気に答えた。
ともあれ・・・。
私は、ため息を吐きながらアルテアの塔へと足を踏み入れる。
昔に起こったことは今更なんともしようがないが、
この後、この塔の頂上から飛び降りなければいけないのだ。
やれやれ、一体どうなることやら・・・。
塔の正面には鏡のように澄んだ湖が広がっており、
地面を対称に、上下に塔が伸びているようにも見える。
20階層ほどの高い塔で、
頂上にはアルテア様が使用していた武器が納められていると言われている。
「言われている」と表現したのは、
実際にそれを確認したことがある人はいないからだ。
なぜなら、塔の扉には、カギどころか取っ手もなく、
今までに塔の中を調べた人はいないのだ。
誰かが、根拠もなく噂し始めたのか、
はたまた、それを納めた人々から言い伝えられたのか、
出処も定かではないが、とりあえずそう言われている。
なので、当然、塔の扉は閉ざされているはずだった・・・。
しかし、私が塔に着いた時、既に塔の扉は解放されていた。
「塔の扉が開いている・・・。」
私が驚いていると、ベアトリスも驚いた様子で私を見つめた。
「なんだ?知らなかったのか?
この扉を開けるためにあんたの右腕が一度切り落とされたんだろ?」
「え!?」
私は、初めて聞く重要な話を、
当たり前のことのように言い放つベアトリスに、再び驚いて声を上げてしまった。
「ウェナの結界が張られていたから誰も近寄ることができなかった。
それを解くことができるのはウェナの力だけだ。
だから、あんたの右腕を切り落としてまでここに持ってきたんだろ。」
「私が王位を脅かしたからではないの?」
私の頭の中はパニックだった。
「そうか、あんたは、なんにも知らされなかったんだな。」
ベアトリスの話によると、
昔の王、オルテガが地獄を作り出し、覇権を握るようになってから、
ディメイアは復讐の悪魔となって、
人々を虐殺しながら彼のいる王城を目指し始めた。
やがて、
念願叶い、ディメイアが宿敵オルテガを討つことになるのだが、
ウェナ様は、アルテア様が遺した力と、
ディメイアがもたらした悲劇を嘆き悲しんで、
2度と使われぬよう封印することにしたのだという。
ディメイアはウェナ様の左腕に封印され、
アルテア様の力は、剣と共にこの塔へと封印された。
以来、この塔はウェナ様の力なしでは開かなくなった。
その後、ウェナ様は姿を消し、
アルテア様の力は、もう二度と手に入らないものだと思われていた。
そして、アルテア様のもうひとつの剣によって封印されたウルガリウスも、
唯一、封印を解くことができる片割れの剣を失ったことで、
封印されたままになったようだ。
そして時は流れ、数百年後、突如として現れたのが、
ウェナ様の力を持って生まれた私なのだという。
「もしかして、ウルガリウスの封印を解くために私の右腕が狙われた?」
「そうだね。アルケスはそう思っていたはずだ。
ウルガリウス様の封印を解いて、あたしたちの世界を元通りにするために、
アルテア様の力を求めていた。
そして、そのためにはウェナの力が必要不可欠だったのさ。」
しかし、それならば、ひとつの疑問が浮かび上がる。
「こうして扉の封印が解かれているということは、
アルケス達がアルテア様の力を持ち出したってことでしょ?
ならば、なぜその後も魔力を集めていたの?」
アルテア様の力があるのならば、
十邪星たちも、人々を苦しめまで魔力を紡ぎだす必要は無かったはずだ。
「この扉を開いたのは、アルケスじゃないのさ。
あんたの右腕は、切り落とされた後に何者かに盗まれ、
その何者かによって開かれることになった。
今ならば、その何者かが分かるけどね。」
「もしかして、ルザーフ?」
そう言ってから、私の右腕を返しに来たルザーフのことを思い出した。
彼が私の右腕を持っていたのは、つまり、そういうことだったのだ。
「そして、ルザーフの下僕であるアリウスとかいう男が、
この塔からアルテア様の剣を持ち出したのさ。
で、今に至るってところかな。」
言われてみれば、リヒヤールも、ウェナ様の力があれば争う必要などないと言っていた気がする。
彼らも、数百年待ってようやく手に入れたはずのウェナ様の力を奪われて失望していたのだろう。
話が分かるにつれて、全ての元凶がルザーフであったことに気付く。
「知っていたのなら教えてくれればよかったのに。」
「すまなかった、あんたが知らないってことを知らなかったんだ。」
ベアトリスが申し訳なさそうに謝る。
「他に黙っていることは?」
私が問いただすように訊くと、
「黙ってるわけじゃないんだって。
他には無いよ。・・・多分。」
と、ベアトリスは自信なさ気に答えた。
ともあれ・・・。
私は、ため息を吐きながらアルテアの塔へと足を踏み入れる。
昔に起こったことは今更なんともしようがないが、
この後、この塔の頂上から飛び降りなければいけないのだ。
やれやれ、一体どうなることやら・・・。
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