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新しい世界
第12話
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私の体は落下していき、徐々にスピードを増していく。
まるで、地獄の門へと吸い込まれていくようだ。
ところが、門を通り過ぎると、
今度は逆に浮き上がっていくような感覚に変わった。
いつの間にか地獄門も見えなくなり、地面と思われる景色さえも見えず、
周囲は、見渡す限りに禍々しい空気で満たされているため、
自分が今、上を向いているのか、下を向いているのかさえも分からなくなってくる。
地獄に着く前に気が狂ってしまいそうだったが、
ようやくそれも終わりを迎えた。
遥か前方に見える大地と、そこにそびえたつ巨大な宮殿の姿を確認できたのだ。
徐々に近づいていくことを考えると、未だ落下し続けているようだ。
大地は急速に近づいてくる。
このまま叩きつけられたら、私の形を保つことができないかもしれない。
今更ながらに恐怖が再び首をもたげてくる。
しかし、飛ぶ能力のない私にはどうしようもない。
このまま身をゆだねる以外に方法はないのだ。
今にもぶつかりそうな勢いで大地が接近してくる。
私は、顔面を守ろうと顔の前で腕を交差させ、衝撃を待った。
しかし、いつまで待っても衝撃は来ない。
何が起こったのか分からなかったので、
ゆっくりと、視界を遮る手を退けようとすると、
背後から軽い衝撃が走る。
心臓が飛び出しそうなったが、その後の声によって、その衝撃の正体に気付いた。
「いつまでも何やってんだ。いくぞ?」
ベアトリスの声だ。
彼女のせいで心臓が破裂しそうなほどドキドキしていたが、
それと同時に緊張感は一気に解放された。
どうやら死は免れたようだ。
私は、大きく息を吸い込んで落ち着くと、
ベアトリスの背中を追った。
地獄の様子は以前にも聞いていたものよりも悲惨なものだった。
空気は淀んで、熱風が吹き荒び、時折、何かが腐ったような臭いが鼻を突く。
周囲は砂漠のように荒れ果て、草木は見当たらない。
ところどころにある建造物は、あちらこちらにヒビが入り、今にも崩れ落ちそうだ。
「ここまで酷くなると、アルテア様の力でも元通りってわけにはいかないかもね。」
ベアトリスが寂しそうに呟く。
私は、地獄をこんな姿にしたのは人間である、
というリスバートの言葉を思い出し、胸が痛くなった。
平和に暮らしていた彼等を襲撃するようにして現れたというのだから尚更だ。
「ごめんなさい。人間が、自分の欲のためにこんなことまでするなんて・・・。」
私は、罪悪感で胸がいっぱいになり、言葉に詰まる。
「いや、いいんだ。あんたはそういう人間とは無縁なのは一緒にいて分かった。
ルザーフが許されざる行いをするように、人間にもそういう奴がいたって話だろう?
あんたが謝らなきゃならないって言うのなら、
あたしの方だってルザーフのせいであんたをここまで連れまわしてすまない、と言うべきだ。」
ベアトリスの許しの言葉のお陰で、私の胸のつっかえは少し軽くなった。
しばらく歩き続けると、丘の上にある宮殿にたどり着いた。
恐らく、ルザーフはこの中だ。
もしかしたら、アリウスもいるかもしれない。
「行くよ。あいつだけは許しちゃおかない。」
私も、同意して頷く。
「ルザーフがすべての元凶。絶対に倒す!」
自分を奮い立たせるために口に出して言った。
その時だった。
「ルザーフ様を倒すと言ったか?
それならば、ここを通すわけにはいかんな。」
頭上から低い声がした。
「危ない!」
ベアトリスが私を抱えて後ろに飛び跳ねる。
直後に何か大きなものが地面にぶつかる音がする。
「バルゼビア。人間と仲良しごっことは落ちたものだな。」
先ほど頭上から聞こえた低い声とはまた違う声が聞こえる。
見ると、1つの巨体から鹿や獅子、馬に象、そしてヒヒのような、
合計5つもの首が様々な向きに生えた悪魔がそこにいた。
「セルバース!?なぜ貴様が生きている?
オルテガに倒されたんじゃなかったのか?」
ベアトリスは、これまでにないほど困惑している。
この悪魔が生きていることがそんなにも不思議なことなのだろうか?
ベアトリスの驚いた顔を見て、多頭の悪魔のすべての頭が笑い出す。
「まだ気付いていないのか?すべては仕組まれていたことに。」
ベアトリスの顔色が急激に変わり、体を小刻みに震わせる。
一体どうしたというのだろうか?
「そういうことかよ・・・。ますますあいつを倒さないと気がすまないねぇ!」
ベアトリスは魔力を開放し、悪魔の姿へと変わった。
溢れ出る闘気に、私も気圧される。
彼女は怒っていた。
まるで、地獄の門へと吸い込まれていくようだ。
ところが、門を通り過ぎると、
今度は逆に浮き上がっていくような感覚に変わった。
いつの間にか地獄門も見えなくなり、地面と思われる景色さえも見えず、
周囲は、見渡す限りに禍々しい空気で満たされているため、
自分が今、上を向いているのか、下を向いているのかさえも分からなくなってくる。
地獄に着く前に気が狂ってしまいそうだったが、
ようやくそれも終わりを迎えた。
遥か前方に見える大地と、そこにそびえたつ巨大な宮殿の姿を確認できたのだ。
徐々に近づいていくことを考えると、未だ落下し続けているようだ。
大地は急速に近づいてくる。
このまま叩きつけられたら、私の形を保つことができないかもしれない。
今更ながらに恐怖が再び首をもたげてくる。
しかし、飛ぶ能力のない私にはどうしようもない。
このまま身をゆだねる以外に方法はないのだ。
今にもぶつかりそうな勢いで大地が接近してくる。
私は、顔面を守ろうと顔の前で腕を交差させ、衝撃を待った。
しかし、いつまで待っても衝撃は来ない。
何が起こったのか分からなかったので、
ゆっくりと、視界を遮る手を退けようとすると、
背後から軽い衝撃が走る。
心臓が飛び出しそうなったが、その後の声によって、その衝撃の正体に気付いた。
「いつまでも何やってんだ。いくぞ?」
ベアトリスの声だ。
彼女のせいで心臓が破裂しそうなほどドキドキしていたが、
それと同時に緊張感は一気に解放された。
どうやら死は免れたようだ。
私は、大きく息を吸い込んで落ち着くと、
ベアトリスの背中を追った。
地獄の様子は以前にも聞いていたものよりも悲惨なものだった。
空気は淀んで、熱風が吹き荒び、時折、何かが腐ったような臭いが鼻を突く。
周囲は砂漠のように荒れ果て、草木は見当たらない。
ところどころにある建造物は、あちらこちらにヒビが入り、今にも崩れ落ちそうだ。
「ここまで酷くなると、アルテア様の力でも元通りってわけにはいかないかもね。」
ベアトリスが寂しそうに呟く。
私は、地獄をこんな姿にしたのは人間である、
というリスバートの言葉を思い出し、胸が痛くなった。
平和に暮らしていた彼等を襲撃するようにして現れたというのだから尚更だ。
「ごめんなさい。人間が、自分の欲のためにこんなことまでするなんて・・・。」
私は、罪悪感で胸がいっぱいになり、言葉に詰まる。
「いや、いいんだ。あんたはそういう人間とは無縁なのは一緒にいて分かった。
ルザーフが許されざる行いをするように、人間にもそういう奴がいたって話だろう?
あんたが謝らなきゃならないって言うのなら、
あたしの方だってルザーフのせいであんたをここまで連れまわしてすまない、と言うべきだ。」
ベアトリスの許しの言葉のお陰で、私の胸のつっかえは少し軽くなった。
しばらく歩き続けると、丘の上にある宮殿にたどり着いた。
恐らく、ルザーフはこの中だ。
もしかしたら、アリウスもいるかもしれない。
「行くよ。あいつだけは許しちゃおかない。」
私も、同意して頷く。
「ルザーフがすべての元凶。絶対に倒す!」
自分を奮い立たせるために口に出して言った。
その時だった。
「ルザーフ様を倒すと言ったか?
それならば、ここを通すわけにはいかんな。」
頭上から低い声がした。
「危ない!」
ベアトリスが私を抱えて後ろに飛び跳ねる。
直後に何か大きなものが地面にぶつかる音がする。
「バルゼビア。人間と仲良しごっことは落ちたものだな。」
先ほど頭上から聞こえた低い声とはまた違う声が聞こえる。
見ると、1つの巨体から鹿や獅子、馬に象、そしてヒヒのような、
合計5つもの首が様々な向きに生えた悪魔がそこにいた。
「セルバース!?なぜ貴様が生きている?
オルテガに倒されたんじゃなかったのか?」
ベアトリスは、これまでにないほど困惑している。
この悪魔が生きていることがそんなにも不思議なことなのだろうか?
ベアトリスの驚いた顔を見て、多頭の悪魔のすべての頭が笑い出す。
「まだ気付いていないのか?すべては仕組まれていたことに。」
ベアトリスの顔色が急激に変わり、体を小刻みに震わせる。
一体どうしたというのだろうか?
「そういうことかよ・・・。ますますあいつを倒さないと気がすまないねぇ!」
ベアトリスは魔力を開放し、悪魔の姿へと変わった。
溢れ出る闘気に、私も気圧される。
彼女は怒っていた。
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