隻腕の聖女

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新しい世界

第13話

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セルバースと呼ばれた悪魔の4メートル程の巨体が、
両手でがっしりと掴んだこんを振り回しながら襲い掛かってくる。

私は背後に飛んで避け、
ベアトリスは上空に飛んで避けた。

セルバースの専らの目標はベアトリスらしく、
上空のベアトリスに向けて馬が火の玉を、獅子が雷を、鹿が氷の塊を吐き出す。

しかし、セルバースの攻撃はベアトリスを捉えることなく、
見当違いの場所に飛んでいく。

そして、彼女はいつの間にか手にしていた魔力の刃でセルバースの馬の首を切り落とした。

馬の首が落ちると、ヒヒの首が悲鳴を上げる。
耳をつんざくような不快な高音だ。

セルバースの首は、あと4つだ。
以外に簡単に倒せるかもしれないと思ったのも束の間、
よくよく数えてみると、首は未だ5つ存在している。

見落としていたわけではなく、
先ほどまで、馬の頭が生えていた場所には、
既に、羊のような頭が生えていたのだ。

「イヴ、力を貸せ。あたし一人じゃ身がもたない。
 あいつは八百万の頭を持つと言われてるセルバースだ。」

八百万とは実際に八百万という数字を意味しているわけではなく、
「とんでもなくたくさん」という意味だ。
東方の国ではと読むらしい。

斬っても斬っても新しい頭が生えてくる再生力を意味しているのだろう。

私は、ベアトリスに助太刀するため、左手に剣を構え、右手で光を纏わせる。

この刃を実戦で使用するのはこれが初めてだ。
試しにセルバースのがら空きになった左足を斬りつけてみると、
手ごたえもなく真っ二つになる。

バランスを崩したセルバースは棍を支えにしてこらえるが、
次の瞬間には、左足が再生していた。

しかし、今度は先ほどまでの人に似た足とは違う、蹄型の足だ。

私が態勢を整えなおす前に、生まれたての蹄型の足が私に襲い掛かる。
セルバースの足が直撃し、私は後ろに吹き飛んだ。

「イヴ、大丈夫か?」
ベアトリスが大きな声で叫ぶ。

わき腹がジンジンと痛んだが、それよりも吹き飛んで背中から落ちたダメージのほうが大きかった。
セルバースも態勢が整っていなかったせいか、そこまでのダメージはなかったようだ。

「大丈夫。大したことない。」
私はベアトリスに向かって叫び返した。

セルバースは、斬れば斬る程に継ぎはぎのしっちゃかめっちゃかな体に変容していく。
戦いが進めば進むほどに攻略方法が変わることを意味しているようだ。
長期戦になればなるほど相手が有利になっていくだろう。

彼の無尽蔵とも思える魔力と相まって、非常に厄介な相手だ。

とはいえ、彼を倒さないことには、ここを通りルザーフと戦うことすら叶わないだろう。
私は、気を取り直して剣に光を纏いなおし、敵の隙を伺った。
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