120 / 121
新しい世界
最終話
しおりを挟む
ルザーフの手からは、何かが伝わってくる。
私と彼とは、心が繋がっている。
そう感じられた。
彼が何を考えているのか分かるような気がするし、
彼にも私が何を考えているのか分かっているような気がした。
玉座に近づくにつれて、だんだんひとつに混ざり合っていく感じがする。
そうすることで、新しい世界が生まれるのだ。
ルザーフの手からは、感情だけではなく、記憶のようなものも流れ込んでくる。
これまでルザーフがどのような道を歩んできたのか、
どんな苦悩を味わってきたのか・・・。
彼の目線で私の姿が見えたりもした。
懐かしい風景だ。
ゼクートの港であった時の記憶もある。
私に右腕を返しに来た時の記憶も。
ドラジアで、ルースと名前を偽って現れた事もあった。
そこで、私達は初めて会ったのだ。
アリウスが隠れ家を見つけたと言ってルースとベアトリスを紹介してきたのだ。
待て・・本当にそうだろうか?もうちょっと前のような気もする。
ドラジアまで一緒に旅をしたのではなかっただろうか?
・・いや、そんなことはない。彼とは一緒に旅をしていない。
でも、ずっと一緒にいた記憶もある。一緒に旅をした記憶があるのだ。
誰かと間違えている・・・?
自然と、私の足は止まってしまっていた。
ルザーフが私を不思議そうな目で見つめる。
考えるのは止めようと決めたではないか・・・。
今は、彼のことだけ考えていればいいのだ。
私は、玉座に向かって、再び歩き始めた。
彼だけが、私のことを分かってくれる。
愛してくれる。それが幸せと思える。
重ね合わせた手から、二人が溶け合って、ひとつになっていく。
絡んだ指が、契りの指輪のように・・・。
「ガイツ・・・。」
私の目からは、自然と涙が零れていた。
口にしたその言葉が、なんなのか分からないのに・・・。
ルザーフが、私を驚いて睨みつける。
「その名をどうして?」
名前?ガイツとは、何かの名前なのだろうか・・・?
握ったルザーフの手から、男性の記憶が流れ込んでくる。
見たことがある。
この人は・・・ガイツだ。この人がガイツだ。
私と一緒に旅をしていたのは、ルザーフではない。
ガイツだ。
なぜ、絶対に忘れてはいけない彼の名前を忘れてしまっていたのだろう・・・。
彼は、私を希望の灯と呼んだ。
彼に応えなければ・・・。
急に、私の右腕の腕輪が光り出し、
ルザーフが苦しみ出して私から手を離した。
すかさず、ディメイアが駆け付けてきて、私の右手を握る。
「余の魔力、全てを渡す。それでルザーフを消し去れ。」
私が戸惑っていると、ディメイアの体が赤く光り出して、
その光は私の右手に伝わってくる。
「ウェナの力を継ぐ者よ。世界を頼んだ。」
やがて、ディメイアの姿は消えて無くなり、
代わりに私の体から黄色い光が立ち上る。
レイリアが巨大な悪魔を消し去った時と似たような光だ。
「ディメイアめ、余計なことを・・。
こうなれば、この世界も消し飛ばして、全てを無に帰してやる。」
ルザーフは、再び目の前に両手を突き出してボールのようなものを発生させる。
「イヴ、消えるか、消すかだ。
もうやるしかないだろう。」
今度は、アリウスが私の右手をとり、アルテア様の剣と共に彼の左手を重ねる。
黄色い光は、アリウスとアルテア様の剣に伝わり、より強く輝き、まるで黄金のようだ。
ルザーフが手元のボールのようなものを縮小させていくと、
大きな地震が起こり始め、宮殿が崩れ始めた。
私の口からは、自然と叫び声が出ていた。
それにつられるようにアリウスが叫び始め、
自身の声に背中を押されるように、私達は、ルザーフに向けてその剣を突き刺した。
その剣は、地獄が崩壊する直前に、ルザーフを貫き、
ルザーフは叫び声を上げながら消滅した。
しかし、地獄は崩壊を止めず、私は、終末が迫っていることを悟る。
「間に合わなかったみたい・・・。」
「やれるだけのことはやった。もう悔いはないさ。」
崩壊していく世界の中で、取り残された私達は、
自然と最期の時を2人で手を重ねながら迎える。
「そうか・・・私のいない間、そんなことがあったのだな。」
突然、アリウスが言う。
ルザーフの時と一緒で、彼にも私の記憶や感情が流れているのだろう。
目を瞑ると、彼の記憶が流れてくる。
娘を流行り病で亡くしたこと。
ルザーフに娘を蘇らせる約束をして私の右手を奪い取ったこと。
私達と別れて、アルテアの塔に行き、アルテア様の剣を手に入れた事。
そして、地獄へ渡りウルガリウスにとどめを刺したこと。
不思議だ・・手をつなぐといろんなことが分かりあえる・・。
「それは、エルステッドの力です。ルザーフを通じて、
イヴ、あなたにエルステッドの力が流れ込んだのでしょう。」
ウェナ様の声だ。
「その力を使えば、また、新しい世界を創ることが出来るでしょう。」
それ以降、ウェナ様の声は聞こえなくなった。
その声は、アリウスにも聞こえていたらしく、
私達は、崩壊していく世界の中、ゆっくりと手を重ねながら玉座へと歩いていった。
「どうか、新しい世界が平和でありますように。」
私と彼とは、心が繋がっている。
そう感じられた。
彼が何を考えているのか分かるような気がするし、
彼にも私が何を考えているのか分かっているような気がした。
玉座に近づくにつれて、だんだんひとつに混ざり合っていく感じがする。
そうすることで、新しい世界が生まれるのだ。
ルザーフの手からは、感情だけではなく、記憶のようなものも流れ込んでくる。
これまでルザーフがどのような道を歩んできたのか、
どんな苦悩を味わってきたのか・・・。
彼の目線で私の姿が見えたりもした。
懐かしい風景だ。
ゼクートの港であった時の記憶もある。
私に右腕を返しに来た時の記憶も。
ドラジアで、ルースと名前を偽って現れた事もあった。
そこで、私達は初めて会ったのだ。
アリウスが隠れ家を見つけたと言ってルースとベアトリスを紹介してきたのだ。
待て・・本当にそうだろうか?もうちょっと前のような気もする。
ドラジアまで一緒に旅をしたのではなかっただろうか?
・・いや、そんなことはない。彼とは一緒に旅をしていない。
でも、ずっと一緒にいた記憶もある。一緒に旅をした記憶があるのだ。
誰かと間違えている・・・?
自然と、私の足は止まってしまっていた。
ルザーフが私を不思議そうな目で見つめる。
考えるのは止めようと決めたではないか・・・。
今は、彼のことだけ考えていればいいのだ。
私は、玉座に向かって、再び歩き始めた。
彼だけが、私のことを分かってくれる。
愛してくれる。それが幸せと思える。
重ね合わせた手から、二人が溶け合って、ひとつになっていく。
絡んだ指が、契りの指輪のように・・・。
「ガイツ・・・。」
私の目からは、自然と涙が零れていた。
口にしたその言葉が、なんなのか分からないのに・・・。
ルザーフが、私を驚いて睨みつける。
「その名をどうして?」
名前?ガイツとは、何かの名前なのだろうか・・・?
握ったルザーフの手から、男性の記憶が流れ込んでくる。
見たことがある。
この人は・・・ガイツだ。この人がガイツだ。
私と一緒に旅をしていたのは、ルザーフではない。
ガイツだ。
なぜ、絶対に忘れてはいけない彼の名前を忘れてしまっていたのだろう・・・。
彼は、私を希望の灯と呼んだ。
彼に応えなければ・・・。
急に、私の右腕の腕輪が光り出し、
ルザーフが苦しみ出して私から手を離した。
すかさず、ディメイアが駆け付けてきて、私の右手を握る。
「余の魔力、全てを渡す。それでルザーフを消し去れ。」
私が戸惑っていると、ディメイアの体が赤く光り出して、
その光は私の右手に伝わってくる。
「ウェナの力を継ぐ者よ。世界を頼んだ。」
やがて、ディメイアの姿は消えて無くなり、
代わりに私の体から黄色い光が立ち上る。
レイリアが巨大な悪魔を消し去った時と似たような光だ。
「ディメイアめ、余計なことを・・。
こうなれば、この世界も消し飛ばして、全てを無に帰してやる。」
ルザーフは、再び目の前に両手を突き出してボールのようなものを発生させる。
「イヴ、消えるか、消すかだ。
もうやるしかないだろう。」
今度は、アリウスが私の右手をとり、アルテア様の剣と共に彼の左手を重ねる。
黄色い光は、アリウスとアルテア様の剣に伝わり、より強く輝き、まるで黄金のようだ。
ルザーフが手元のボールのようなものを縮小させていくと、
大きな地震が起こり始め、宮殿が崩れ始めた。
私の口からは、自然と叫び声が出ていた。
それにつられるようにアリウスが叫び始め、
自身の声に背中を押されるように、私達は、ルザーフに向けてその剣を突き刺した。
その剣は、地獄が崩壊する直前に、ルザーフを貫き、
ルザーフは叫び声を上げながら消滅した。
しかし、地獄は崩壊を止めず、私は、終末が迫っていることを悟る。
「間に合わなかったみたい・・・。」
「やれるだけのことはやった。もう悔いはないさ。」
崩壊していく世界の中で、取り残された私達は、
自然と最期の時を2人で手を重ねながら迎える。
「そうか・・・私のいない間、そんなことがあったのだな。」
突然、アリウスが言う。
ルザーフの時と一緒で、彼にも私の記憶や感情が流れているのだろう。
目を瞑ると、彼の記憶が流れてくる。
娘を流行り病で亡くしたこと。
ルザーフに娘を蘇らせる約束をして私の右手を奪い取ったこと。
私達と別れて、アルテアの塔に行き、アルテア様の剣を手に入れた事。
そして、地獄へ渡りウルガリウスにとどめを刺したこと。
不思議だ・・手をつなぐといろんなことが分かりあえる・・。
「それは、エルステッドの力です。ルザーフを通じて、
イヴ、あなたにエルステッドの力が流れ込んだのでしょう。」
ウェナ様の声だ。
「その力を使えば、また、新しい世界を創ることが出来るでしょう。」
それ以降、ウェナ様の声は聞こえなくなった。
その声は、アリウスにも聞こえていたらしく、
私達は、崩壊していく世界の中、ゆっくりと手を重ねながら玉座へと歩いていった。
「どうか、新しい世界が平和でありますように。」
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる