超有名歌い手の私は静かに暮らしたい

サラダ菜

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13.パンケーキと丸眼鏡くん

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しど…湊くんと仲直りをして、私はいつもの日常を取り戻した。
湊くんに首根っこを掴まれて色んな所に連れていかれるけど、それはそれで毎回新しい発見があって楽しい。

それに声の調子も戻って、昨日出した新作は無事高評価だ。
唯はいち早く新作を聞いてくれたようで褒めてくれた。

しかし、何もかもが順風満帆に見える私には一つだけ困っていることがあった。

それを解決するべく、私は今カフェで三人の同級生に囲まれている。

目の前には美味しそうなパンケーキ。
少しでも机を揺らせばそれも連動してぷるぷると揺れる。
極めつけは大量の生クリームだ。
甘いもの大好き勢の自分としては生クリームに今すぐかぶりつきたい。
かぶりつきたいんだけど…

「…」

「これうめーんだよな」

「…」

空気が重すぎて、パンケーキどころじゃない。

隣にはいつもの唯。
瞳孔を開きながら真っ直ぐ私の目の前の人物を見据えている。

唯の視線の先にはスマホを傾けてパンケーキの写真を撮りまくっている湊くん。
唯の人を殺しかねない視線を受けても通常運転でいられる彼はもはや尊敬に値する。
「これどうだ」とさっきから何度も私に写真を見せてくるんだけど、正直どれも一緒にしか見えない。

そして、湊くんの隣には丸眼鏡をかけた黒髪の男子。
よく湊くんとつるんでいるのは見かけていたけど、実は話したこともなければ名前すら知らない。
今日は唯と湊くんと三人でパンケーキを食べに行くと思っていたから、かなり緊張する。

「楽しくいこうよお」

丸眼鏡男子は見た目にそぐわず間延びした声で話す。
癒されるような優しい声で、ピリピリとした雰囲気を和らげてくれた。
彼がいなければ永遠にこの空気感の中パンケーキを食べたかもしれないと思うと、感謝しかない。
ありがとう丸眼鏡くん…!

「まずは自己紹介が先の方がいいかなあ」

顎に人差し指を当てて悩んでいる様子の丸眼鏡くん。
湊くんの友達というだけあって彼も中々の美形だ。
そもそも顔が整っていなければ丸眼鏡なんて似合わない。
パーマをしているのか髪の毛がくるくるしているが、もさっとした感じはなくおしゃれに仕上がっている。

私の不躾な視線に気付いたのか、丸眼鏡くんは自己紹介を始めた。

「僕は八神大地やがみだいち。お二人とは喋ったことないけど、仲良くしてくれると嬉しいなあ。よろしくねえ」

「よ、よろしくお願いします」

「触るな」「おい」

丸眼鏡くんこと八神くんは私の手をぎゅっと掴んでぶんぶんと上下させている。
その八神くんの手を湊くんがはたき落とし、唯が私の手をぐいと引っ張った。
…仲は悪いけど変なところで息はぴったりだ。

「大地はいいやつだが女癖が悪い。気をつけろよ夏菜」

「人のこと言えないでしょーって」

「うっせえ」

たしかにこれだけ顔が整っていれば女遊びをしていても許されるかもしれない。
湊くんにぴったりの友達だ。

さっきから機嫌の悪い唯が、ますますどす黒いオーラを放っている。

「…なんでそんな奴連れて来たの」

「俺まだ死にたくないからさ。阿佐ヶ谷がナイフでも投げてきたら大地を身代わりにしようと思って」

「えっ!?俺身代わり要員だったの!?」

唯と湊くんは相変わらずピリピリしてるけど、八神くんは一人で泣き真似をしてる。
誰にも相手にしてもらってなくてちょっと面白い。

「…ふふ」

「あ、やっと笑ってくれたあ」

八神くんがにぱーっと笑う。
そういえば先程まで感じていた緊張感がない。
この人、私が緊張していたのに気づいてたのかな。

「コイツにほだされてねえだろうな」

「夏菜、駄目だよ」

「さっきから僕に当たり強くない!?」

「ふふっ」

何も悪いことなんてしてないのに、ひたすら悪者扱いされてる八神くんが面白くて笑いが止まらなかった。
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