超有名歌い手の私は静かに暮らしたい

サラダ菜

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14.水と油

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八神くんはため息をついて、両手を合わせた。

「せっかくのパンケーキが冷めちゃうから食べようよ!いただきます!」

「いただきます」

八神くんに合わせて両手を合わせたのは私だけだった。
唯は無言で食べ始め、湊くんは未だに写真を撮っている。
まとまりがないグループだけど、八神くんがちょうどいい緩衝材になってくれている気がする。

「ねえねえ、なんでこのグループでパンケーキ食べに来たのお?理由も聞かないで来ちゃったけど」

「あ、えと、私の提案です」

「え、夏菜ちゃんの?」

「おい誰が名前で呼んでいいって言った」

湊くんが八神くんの胸ぐらをつかみ始めて私は焦った。
唯はパンケーキを黙々と咀嚼するだけで目の前の出来事には全く興味がないらしい。

「湊がいつも夏菜、夏菜って言うからつい」

「お前まじで…!!いつか締め上げるからな…!!」

八神くんが何かを小声で耳打ちして、それに対して湊くんは激昂している。
私がおろおろして涙目になっているところについに唯の助けが入った。

「夏菜にとってはアタシも…獅童も大切な人らしいから、お互いに仲良くしてほしいって。それで放課後遊ぶことになったの」

「わー!素敵な話!じゃあなんで今も仲悪いのお?」

「「…」」

八神くんから鋭い指摘が入り、二人とも口を噤んでしまう。
そう、私は二人に仲良くしてほしい。
例え水と油、犬猿の仲だったとしても、私にとっては二人とも大切な人だからピリピリしていてほしくない。
そのために勇気を出して二人を誘ったのだ。

ここは、私が頑張らなきゃいけない…!
意を決して口を開いた。

「ゆ、唯には本当に感謝してるの!ドジで抜けてる私をいつも助けてくれるし、仲良くしてくれるから!本当にありがとう!」

「…夏菜」

「そ、それで、しど…湊くんにも感謝してる!私が知らないことをたくさん教えてくれるし、一緒にいて楽しいって思う!…た、たまに距離感がおかしいこともあるけど…」

「夏菜お前…」



「湊くん…?いつからそんな呼び方をしてるの…?それに距離感がおかしいって…具体的に何をされたの…?」

「まあまあ!キレ散らかすのは一旦後にしましょうよお!」

自分の心のうちをさらけ出すことで精いっぱいで、唯の地雷を踏んでいることに全然気付かなかった。
八神くんが身体を張って唯を止めてくれている間に、私は言葉を続ける。

「わ、私二人にたくさん迷惑かけてるし、これからも迷惑かけちゃうけど、私も二人の支えになれるように頑張るから!えと、だから…これからもよろしくお願いします!」

…言い終わって、結局二人には感謝を伝えただけで、仲良くしてほしいって伝えるのを忘れたことに気付いた。
だけど、二人はため息をついて微笑んでいる。
なんとか伝わったの、かな?

「あの夏菜がここまで頑張ってるのに、アタシだけいつまでも意地張るわけにはいかないね」

「俺は別にどっちでも良かったんだぜ?阿佐ヶ谷が何かと敵視してくるからさ」

「アンタが夏菜に変なことばかりするからでしょ…!」

「証拠がないなあ?」

「ころ「ダメ―――っ!!」

駄目だ…
相性が悪すぎる…!
さっきまでの微笑ましい雰囲気はどこへやら、またバチバチと火花が飛び始めて涙目になっていると、急に八神くんがパンケーキを私の口に押しつけてきた。

実はずっと食べたいと思っていたこのカフェのパンケーキ。
目の前に現れて抗えるはずがなく、私はそれを口に含んだ。

間接キスが…とか考える前に口の中にほうじ茶の旨味が広がってきて思わず綻んでしまう。
ああ、私は正解一の幸せ者だあ…

「ふわふわ…おいひ…」

「ほら、この笑顔を見なよお。戦意喪失するでしょ?」

「「たしかに」」

パンケーキを堪能し、飲み込む頃には何故か喧嘩が収まっていた。
よくわからないけど、その後も唯と湊くんから代わる代わるパンケーキを与えられ、結局みんなのパンケーキをほとんどいただいてしまった。
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