超有名歌い手の私は静かに暮らしたい

サラダ菜

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15.スマホって難しい

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「ねえねえ唯ちゃんRINE交換しようよお」

「嫌だ」

「なんでえ!?」

「必要性を感じないから」

「辛辣!!」

いつの間にか唯と八神くんは仲良くなっているみたいだ。
…多分。
微笑ましくそれを眺めていると、目の前にスマホがずいっと現れて驚いた。

「ひゃいっ」

「くく、なんだよその驚き方」

「み、湊くんがびっくりさせるからでしょ…!」

「夏菜、スマホ出せ」

「なんで?」

「RINE交換するから」

交換しよう、じゃなくて交換する、と言い切っているところが湊くんらしい。
中々伝える機会がなかったけど、実は自分も交換したいと思っていたところだった。

かばんの中を漁っていると、八神くんの突然の大声でまた驚いてしまった。

「あ!!そうだあ!グループRINE作ろうよお!」

「「…」」

「そこの二人!露骨にいやそうな顔しないの!それに夏菜ちゃんだって今後僕がいた方がいいでしょ?」

「?」

「僕がいなかったら二人の仲裁をするのは君だよお?」

さーっと血の気が引いていく。
二人には仲良くしてほしいけど、そのうち殺傷事件が発生しかねないのもまた事実だ。
この場も八神くんがいるからまだ無血で済んでいる、と言っても過言ではない。

「ぐ、グループ作りましょう!!」

「よしきたあ!…ほら、二人も連絡先出して?じゃないと僕と夏菜ちゃんだけが連絡先交換することになっちゃうよお?」

「待て!夏菜と最初に交換するのは俺だ!」

「もおーお子様なんだからあ」

連絡先を交換するだけなのにかなり揉めたけど、なんとか無事4人のグループができた。
八神くんがゆるゆるとした猫のスタンプを送ってきて、それに対抗した湊くんがお寿司がけたたましく動き回るスタンプを投稿する。
その掛け合いが面白くてまた笑ってしまった。



帰宅してからもRINEでのやり取りは続いていた。
議題は「次どこに行くか」というもの。

八神くんが率先してカラオケや駅前のお洒落なカフェなどを提案してくれて、それに対して主に湊くんがコメントをしている。
たまに唯が絵文字のない簡潔な返事をする。
私はそこに交じるだけの会話力がないので、すごいスピードで動いていく画面を見つめるしかなかった。
でも、見てるだけですごく楽しい。

しばらくするとチャットの速度が遅くなった。
そろそろみんなお風呂に入る時間なのかな。
私もお風呂の用意をしようと頭で考えていたそのとき、個人チャットが動いた。
対して考えもなく画面を開いて、そして驚きすぎてスマホを放り投げてしまった。

『大丈夫か?』

湊くんからだった。
まさか湊くんから連絡がくるとは全く思ってなかったから、心臓がバクバクしている。
しかも大丈夫ってなんのことだろう。

どう返事したらいいかわからず、スマホを両手で握り締めたままうんうんうなり続け、最終的に送った内容が『大丈夫です』という簡素なものだった。

『適当に返事してんなよ』

「ひぃ!」

文面だけであの圧が自分にのしかかってくる。
『すみません』と返事をする。

『あのグループだよ。夏菜、既読つけてるくせに全然返事しねえから』

そういうことか。
私はまたうーんとうなりながら、文面を打っては消し、打っては消しを繰り返して、『見てるだけで楽しいの』と送った。

『変なやつ』

絵文字もなくそう言われると少し傷つく。

『何か言いたいことあったら直接俺にメッセージしてこい』

立て続けに連絡がきて驚いた。
…獅童、私がコミュ障だからグループチャットに入れないと思って気にかけてくれたのかな。
そうだとしたら嬉しい。
『ありがとう』と送ったら、例のお寿司スタンプが送られてきて笑ってしまった。

ちょっと大変だったけど、唯と湊くんは少しだけ仲良くなったし、八神くんともお友達になれたし、たくさん笑って楽しい一日だったな。

私は鼻歌を歌いながら一日を終えた。
この後訪れる厄災のことなんて微塵も気付かないまま。
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