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第一章 決起
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夕暮れ前の森の広場で、大勢の人間がざわめいている。その前に立って、蕪雑は移住の説明をおこなっていた。
「このまま、ここで一生を終えるより、いっそのこと移住しちまったほうがいいだろう」
聞いている全員が、蕪雑が移住先を見て来たことを知っている。その土地のことを、戻ってすぐに袁燕が、自慢げに身振り手振りを交えて語っていたので、どういう場所なのかは把握していた。
「たしかに兄ぃの言うとおり、このまま山の中に隠れ住むよりかは、いいかもしれねぇ。けどよぉ」
発言者がうさんくさそうに、蕪雑の横に立っている烏有を見た。濁して終わった言葉の先に共感した視線が、烏有に集まる。それに気づいた蕪雑が、烏有の肩に腕をまわした。
「烏有がいなけりゃあ、俺ぁ移住なんて、ちっとも思いつかなかったんだぜ」
「それは、わかっているさ。けどな、兄ぃ。俺等が府を造るなんざぁ、お天道様を掴むぐれぇに、とんでもねぇんじゃねぇのかい」
いくつかうなずく顔があり、それらを蕪雑が情けなさそうに見回した。
「なんでぇ、なんでぇ。やる前から、あきらめちまってんのかよ」
「そのぐらい、現実味のない話ってことなんですよ。蕪雑の兄さん」
妙齢の女性が、おずおずと発言する。すると蕪雑が「ふうむ」と腕を組んだ。
「現実味ってのが、そんなに大事なモンとは思えねぇけどな。……オメェらは見てねぇから、そう思うのかもしんねぇが、この山を下った先に、見たこともねぇような、でっけぇ川と、だだっぴろい土地があるんだぜ。しかもそこには、誰も住んじゃあいねぇんだ。そこに俺等が、まっさらな国を興すってんだから、奮えるじゃねぇかよ」
歯をむき出して笑う蕪雑に、人々が顔を見合わせ、何事かをささやき交わす。
「そうだそうだ。奮えるじゃねぇか。なあ、俺っちは見たんだよ。こぉんな、でっけぇ川がさ、あったんだよ。魚もいてさ! 捕まえそこねたけど、釣竿がありゃあ、きっと大漁だったろうぜ。そんで朝、こっちに帰ろうとしたら、家よりデッケェ船が、流れてきたんだよ。手を振ったら、振り返してくれてさぁ……。あんなのを毎日、見られるなんて面白いだろうなぁ」
煮え切らない態度の皆に発破をかけるためか、袁燕が立ち上がり、幾度も話した光景を、うっとりと語った。
「それはようっくわかったけどよ、袁燕。そんなにいい土地だってんなら、ほかにそう考えて、住みつく連中がいそうじゃねぇか。それがないってことは、なんか理由があるんじゃねぇのか」
「そうだ。恐ろしい獣が出るとか、川にはとんでもねぇバケモノが住んでいるとか。人が住まない原因が、あるに決まってらぁな」
袁燕はフンッと鼻を鳴らした。
「そんなのがいたら俺っちたちは、無事に帰ってこられなかったぞ。ひと晩グッスリ眠っていたけど、なぁんの危険もなかったんだから、大丈夫さ」
「その、でっかい船ってのは、どこからどこへ行く船なんだ。あの土地を管理している豪族が、調査のために動かしていたらどうする」
「それは……」
袁燕が目線で烏有に助けを求める。
「あの船は、上流の府から下流の府へと、人や荷物を運んでいるんだ。流通の便を考えれば、あの場所は未来の展望を描きやすくて、便利な土地だよ」
「だから、どうしてそんな場所に、誰も住んでいないんだ。そんな場所なら、とっくにどこかの豪族が、自分の土地にしていてもいいんじゃないか」
そうだそうだと声が上がる。不安と不満にさざめく人々に、蕪雑があきれた。
「おいおいおいおい。なんだよ、オメェら。そんなら、死ぬまでここで、こっそり生きてくつもりかよ」
「それは……」
「いつか甲柄に戻れるとでも、考えてんのか? そっちのほうが、よっぽど夢物語だろうよ。――なあ、オメェら。おなじ現実味のねぇ話をするんなら、後戻りをしてぇと望むより、前に進む道を行こうじゃねぇか」
満面の笑みを浮かべて、蕪雑は皆の顔をひとりずつ、確認するように見た。
「亜月よぉ。ここに来たとき家なんざなくってよぉ、デッケェ木の下で雨露を凌いでいたよな。そん時のことを、覚えているか。オメェが小枝を集めてきて、でっけぇ枝に乗せて屋根を作ったのにゃあ、感心したぜ」
「そんな、兄ぃ。あの程度のことは、誰だって思いつくぜ」
「思いついたって、しねぇ奴がたんといるもんだ。その上、オメェは草に詳しい。薬になるモンや食えるモンを見つけては、教えてくれたよな。――箕搗。オメェが器用に、あれこれ道具を作ってくれたから、ずいぶんと暮らしやすくなった」
「だって俺ぁ、道具師だからよぉ。ほかにできるこたぁ、なんもねぇんだもんさ」
「翌毘に苔珂。なんもねぇ山ん中に、家をこさえてくれたよな。笈燵は、獣を仕留める罠を作った。それから――」
蕪雑は次々と名を挙げて、それぞれが得意とし、ここに住んでから成したことを端的に、思い出のように語った。それが進むごとに、疑心と不安に満ちていた空気が、ゆったりとしたやわらかなものに変わっていく。烏有は蕪雑がなぜ、彼等の中心にあるのかを悟った。
「なあ、オメェら。そんだけ、いろいろなことができる奴等が集まってるんだ。新しい国を造るなんざ、わけねぇだろう? そうなりゃあ、こっそり夜中に甲柄に戻って、残っている家族なんかとコソコソ会うなんてこたぁ、しなくてよくなる。そいつらを呼びよせちまえば、いいんだからな。どうでぇ、この話、乗ってみねぇか。なぁんもねぇ山ん中に、こうして住処を造れたんだからよぉ。できるに決まってんじゃねぇか」
楽観すぎると非難が起きそうなほど、明快な調子で移住の説得をする蕪雑に、剛袁がポツリと後押しの言葉を加えた。
「国を造るとなれば大げさですが、ここの集落のように、もっと住みよく畑も作れる土地に行くと考えてみれば、いいのではありませんか。そこで村を作って、甲柄にいる者たちと共に、堂々と暮らすと思えばどうでしょう」
「なるほど、村か。それなら、まあ、できそうな気がするな」
「ここだって、はじめは何もなかったんだっけ」
否定的な雰囲気が肯定的なものとなり、あちらこちらで、かつてここにはなかったものを、誰がどのようにして作ったのかという話が起こる。
「なあ、オメェ等。ここで隠れ住むよりも、お天道様の下で、甲柄にいたころのように暮らそうじゃねぇか」
明るい顔が満ちたところで、蕪雑が声をかけた。
「俺ぁ、乗ったぜ」
「俺も」
「私もだ」
「そういうことなら、賛成だ」
「オイラも」
次々に賛同の声が上がり、どんな暮らしをしてみたいかの言い合いになる。その光景に、蕪雑が満足そうな顔をして、烏有を見た。
「どうでぇ。心配なかったろう?」
「正直、驚いているよ。もっと揉めるかと思っていたんだけれどね」
フフンと得意げに鼻を鳴らした蕪雑が、これからどうするかは、後日に決めようと皆に声をかけると、未来への展望に顔を輝かせた人々が、三々五々と散っていく。
「さぁて。明日からなにをどうするか、飲みながら作戦会議といこうじゃねぇか」
烏有の肩を上機嫌に叩いて、自分の小屋へと戻る蕪雑を袁燕が追う。烏有は振り向き、剛袁に笑いかけた。
「後押しをしてくれるとは、思ってもみなかったよ」
「俺は、貴方の後押しをしたわけではありません。蕪雑兄ぃがヤル気になっていますし、ここで集落を広げるよりも、あの場所で生活をするほうが、畑もできるし住み心地もよさそうだと、現実的に判断したまでです」
「現実的、か。なるほどね」
「なんです?」
憮然とした剛袁に、なんでもないよと烏有は首を振る。
「たしかに、国を造ると言えば途方もないけど、この集落のような村を造るとなれば、現実味が増すね」
「からかっているんですか」
「感心しているんだよ。彼等に伝わりやすく、蕪雑が説得のしやすいように、さりげなく言葉を差し挟んだ手腕にね」
「すこしも、うれしくはありませんね」
「そうか。それは残念だ」
剛袁がにらむと、烏有は怒りを制するように片手を挙げた。
「僕はどうやら、うかれているらしい」
「うかれている?」
「どだい無理だと思っていた夢が、かなうかもしれないからね」
「……そのために、蕪雑兄ぃを利用するんですね」
「人聞きが悪いな。まあ、見方によっては、そうなるんだろうけれど。利害が一致したと、言ってほしいな」
「どちらにせよ、遊びではすまされないんです。貴方の持てるもの、すべてを蕪雑兄ぃに捧げていただきますよ」
念押しをするように、剛袁が目に力を込める。
「おおい、早く来いよぉ。話をすんなら、中でやろうぜ」
「兄さん、烏有。早く早く」
烏有は剛袁の視線を、軽い笑顔で受け止めた。
「呼んでいるよ」
「わかっています」
剛袁が大股で歩きだす。その背に向かって、烏有はつぶやいた。
「もちろん、持てるすべてを差し出すさ。夢物語だと思っていた国を、この目で見るためなら、なんだってするつもりだよ。父さんや母さんの理想が、間違っていなかったと証明をするために」
その声を聞いたのは、烏有の傍にある草木のみだった。
「このまま、ここで一生を終えるより、いっそのこと移住しちまったほうがいいだろう」
聞いている全員が、蕪雑が移住先を見て来たことを知っている。その土地のことを、戻ってすぐに袁燕が、自慢げに身振り手振りを交えて語っていたので、どういう場所なのかは把握していた。
「たしかに兄ぃの言うとおり、このまま山の中に隠れ住むよりかは、いいかもしれねぇ。けどよぉ」
発言者がうさんくさそうに、蕪雑の横に立っている烏有を見た。濁して終わった言葉の先に共感した視線が、烏有に集まる。それに気づいた蕪雑が、烏有の肩に腕をまわした。
「烏有がいなけりゃあ、俺ぁ移住なんて、ちっとも思いつかなかったんだぜ」
「それは、わかっているさ。けどな、兄ぃ。俺等が府を造るなんざぁ、お天道様を掴むぐれぇに、とんでもねぇんじゃねぇのかい」
いくつかうなずく顔があり、それらを蕪雑が情けなさそうに見回した。
「なんでぇ、なんでぇ。やる前から、あきらめちまってんのかよ」
「そのぐらい、現実味のない話ってことなんですよ。蕪雑の兄さん」
妙齢の女性が、おずおずと発言する。すると蕪雑が「ふうむ」と腕を組んだ。
「現実味ってのが、そんなに大事なモンとは思えねぇけどな。……オメェらは見てねぇから、そう思うのかもしんねぇが、この山を下った先に、見たこともねぇような、でっけぇ川と、だだっぴろい土地があるんだぜ。しかもそこには、誰も住んじゃあいねぇんだ。そこに俺等が、まっさらな国を興すってんだから、奮えるじゃねぇかよ」
歯をむき出して笑う蕪雑に、人々が顔を見合わせ、何事かをささやき交わす。
「そうだそうだ。奮えるじゃねぇか。なあ、俺っちは見たんだよ。こぉんな、でっけぇ川がさ、あったんだよ。魚もいてさ! 捕まえそこねたけど、釣竿がありゃあ、きっと大漁だったろうぜ。そんで朝、こっちに帰ろうとしたら、家よりデッケェ船が、流れてきたんだよ。手を振ったら、振り返してくれてさぁ……。あんなのを毎日、見られるなんて面白いだろうなぁ」
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「それはようっくわかったけどよ、袁燕。そんなにいい土地だってんなら、ほかにそう考えて、住みつく連中がいそうじゃねぇか。それがないってことは、なんか理由があるんじゃねぇのか」
「そうだ。恐ろしい獣が出るとか、川にはとんでもねぇバケモノが住んでいるとか。人が住まない原因が、あるに決まってらぁな」
袁燕はフンッと鼻を鳴らした。
「そんなのがいたら俺っちたちは、無事に帰ってこられなかったぞ。ひと晩グッスリ眠っていたけど、なぁんの危険もなかったんだから、大丈夫さ」
「その、でっかい船ってのは、どこからどこへ行く船なんだ。あの土地を管理している豪族が、調査のために動かしていたらどうする」
「それは……」
袁燕が目線で烏有に助けを求める。
「あの船は、上流の府から下流の府へと、人や荷物を運んでいるんだ。流通の便を考えれば、あの場所は未来の展望を描きやすくて、便利な土地だよ」
「だから、どうしてそんな場所に、誰も住んでいないんだ。そんな場所なら、とっくにどこかの豪族が、自分の土地にしていてもいいんじゃないか」
そうだそうだと声が上がる。不安と不満にさざめく人々に、蕪雑があきれた。
「おいおいおいおい。なんだよ、オメェら。そんなら、死ぬまでここで、こっそり生きてくつもりかよ」
「それは……」
「いつか甲柄に戻れるとでも、考えてんのか? そっちのほうが、よっぽど夢物語だろうよ。――なあ、オメェら。おなじ現実味のねぇ話をするんなら、後戻りをしてぇと望むより、前に進む道を行こうじゃねぇか」
満面の笑みを浮かべて、蕪雑は皆の顔をひとりずつ、確認するように見た。
「亜月よぉ。ここに来たとき家なんざなくってよぉ、デッケェ木の下で雨露を凌いでいたよな。そん時のことを、覚えているか。オメェが小枝を集めてきて、でっけぇ枝に乗せて屋根を作ったのにゃあ、感心したぜ」
「そんな、兄ぃ。あの程度のことは、誰だって思いつくぜ」
「思いついたって、しねぇ奴がたんといるもんだ。その上、オメェは草に詳しい。薬になるモンや食えるモンを見つけては、教えてくれたよな。――箕搗。オメェが器用に、あれこれ道具を作ってくれたから、ずいぶんと暮らしやすくなった」
「だって俺ぁ、道具師だからよぉ。ほかにできるこたぁ、なんもねぇんだもんさ」
「翌毘に苔珂。なんもねぇ山ん中に、家をこさえてくれたよな。笈燵は、獣を仕留める罠を作った。それから――」
蕪雑は次々と名を挙げて、それぞれが得意とし、ここに住んでから成したことを端的に、思い出のように語った。それが進むごとに、疑心と不安に満ちていた空気が、ゆったりとしたやわらかなものに変わっていく。烏有は蕪雑がなぜ、彼等の中心にあるのかを悟った。
「なあ、オメェら。そんだけ、いろいろなことができる奴等が集まってるんだ。新しい国を造るなんざ、わけねぇだろう? そうなりゃあ、こっそり夜中に甲柄に戻って、残っている家族なんかとコソコソ会うなんてこたぁ、しなくてよくなる。そいつらを呼びよせちまえば、いいんだからな。どうでぇ、この話、乗ってみねぇか。なぁんもねぇ山ん中に、こうして住処を造れたんだからよぉ。できるに決まってんじゃねぇか」
楽観すぎると非難が起きそうなほど、明快な調子で移住の説得をする蕪雑に、剛袁がポツリと後押しの言葉を加えた。
「国を造るとなれば大げさですが、ここの集落のように、もっと住みよく畑も作れる土地に行くと考えてみれば、いいのではありませんか。そこで村を作って、甲柄にいる者たちと共に、堂々と暮らすと思えばどうでしょう」
「なるほど、村か。それなら、まあ、できそうな気がするな」
「ここだって、はじめは何もなかったんだっけ」
否定的な雰囲気が肯定的なものとなり、あちらこちらで、かつてここにはなかったものを、誰がどのようにして作ったのかという話が起こる。
「なあ、オメェ等。ここで隠れ住むよりも、お天道様の下で、甲柄にいたころのように暮らそうじゃねぇか」
明るい顔が満ちたところで、蕪雑が声をかけた。
「俺ぁ、乗ったぜ」
「俺も」
「私もだ」
「そういうことなら、賛成だ」
「オイラも」
次々に賛同の声が上がり、どんな暮らしをしてみたいかの言い合いになる。その光景に、蕪雑が満足そうな顔をして、烏有を見た。
「どうでぇ。心配なかったろう?」
「正直、驚いているよ。もっと揉めるかと思っていたんだけれどね」
フフンと得意げに鼻を鳴らした蕪雑が、これからどうするかは、後日に決めようと皆に声をかけると、未来への展望に顔を輝かせた人々が、三々五々と散っていく。
「さぁて。明日からなにをどうするか、飲みながら作戦会議といこうじゃねぇか」
烏有の肩を上機嫌に叩いて、自分の小屋へと戻る蕪雑を袁燕が追う。烏有は振り向き、剛袁に笑いかけた。
「後押しをしてくれるとは、思ってもみなかったよ」
「俺は、貴方の後押しをしたわけではありません。蕪雑兄ぃがヤル気になっていますし、ここで集落を広げるよりも、あの場所で生活をするほうが、畑もできるし住み心地もよさそうだと、現実的に判断したまでです」
「現実的、か。なるほどね」
「なんです?」
憮然とした剛袁に、なんでもないよと烏有は首を振る。
「たしかに、国を造ると言えば途方もないけど、この集落のような村を造るとなれば、現実味が増すね」
「からかっているんですか」
「感心しているんだよ。彼等に伝わりやすく、蕪雑が説得のしやすいように、さりげなく言葉を差し挟んだ手腕にね」
「すこしも、うれしくはありませんね」
「そうか。それは残念だ」
剛袁がにらむと、烏有は怒りを制するように片手を挙げた。
「僕はどうやら、うかれているらしい」
「うかれている?」
「どだい無理だと思っていた夢が、かなうかもしれないからね」
「……そのために、蕪雑兄ぃを利用するんですね」
「人聞きが悪いな。まあ、見方によっては、そうなるんだろうけれど。利害が一致したと、言ってほしいな」
「どちらにせよ、遊びではすまされないんです。貴方の持てるもの、すべてを蕪雑兄ぃに捧げていただきますよ」
念押しをするように、剛袁が目に力を込める。
「おおい、早く来いよぉ。話をすんなら、中でやろうぜ」
「兄さん、烏有。早く早く」
烏有は剛袁の視線を、軽い笑顔で受け止めた。
「呼んでいるよ」
「わかっています」
剛袁が大股で歩きだす。その背に向かって、烏有はつぶやいた。
「もちろん、持てるすべてを差し出すさ。夢物語だと思っていた国を、この目で見るためなら、なんだってするつもりだよ。父さんや母さんの理想が、間違っていなかったと証明をするために」
その声を聞いたのは、烏有の傍にある草木のみだった。
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