凪の潮騒

水戸けい

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 私に通じているのかどうかを確かめるように、言葉を切って目を覗き込んでくる。頷けば、言葉が続いた。

「だが、俺を相手にしているわけでは無い。俺を俺として扱うは、伊佐のみだ」

 意味が、わからなかった。それをそのまま顔に上せれば、諦めるように宗也が息を吐く。

「俺では無い、本来の血筋の誰かに接するつもりでいることは、子どもの代わりに人形を可愛がるのと同じこと――――見ているのは、目の前にあるものではない。心の中にある、別のものだ」

 ああ、と頷く。宗也は、宗也という個人として見られたことは無いと、言っているのだ。伊駒家の、いずれは帰ってくるであろう当主の――また、その子どもの代わりとして扱われてきた。それはつまり、宗也という人間を誰も見てこなかったと言うことだ。だからこそ宗也はこのような、世の隙間に漂うあやかしのような雰囲気となってしまったのだろう。だからこそ私は、宗也を受け入れることに決めたのだ。私が、宗也という存在を証明し、家中のものたちに知らしめることが出来る唯一であることを、宗也を宗也として扱える人間だと言うことを、知ったから――幸正へ向ける想いとは違う、別の愛おしさを――情愛を浮かべたからだ。

「私には、宗也を何かの代わりにする必要など、無いからな」

 私の身代わりとして扱われてきた、宗也。そのために、自分の存在が不確かだと思い続けてきた宗也。

「だが、これからは代わりではなく、伊駒家の正統なる当主として、宗也という存在として、受け入れられるだろう?」

 白い頬に手を伸ばして撫でる。

「奥村の爺様も、宗也を不憫に思っているからこそ、私との婚儀を勧めたんじゃないか?」

 私が帰ってきたことで、宗也の居場所がなくなることを危惧したのではないか。武家としての教育の一切を知らない私を当主にすることを、危ぶんだということもあるだろう。けれど、それだけではないように思えるのは、私が爺様をよく思いたいからなのだろうか。

 宗也の顔が、近づいてくる。そっと唇を重ねあい、褥に横になる。衣を剥いで肌の上に手を乗せられて撫でられるのは、何かの儀式のようだ。私という存在を確かめるように、私を通して自分を確かめるように、宗也はゆっくりと肌の上を探り、唇を寄せ、ふと胸の間にある痕が胸乳の尖りよりも赤いことに目を細めた。――宗也が付け、幸正が塗りなおしたそれに、宗也が舌を這わせる。両の乳房を包むように掴まれ、揉まれながら舌先で痕をなぞられ、くすぐったさに身を捩った。乳房を包む宗也の指が、その頂にある尖りを弾き、弄び始める。

「ふ――ぅん」
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