偽姫ー身代わりの嫁入りー

水戸けい

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「リューイは、どうして私にこうして、かまってくれるの?」

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 料理が運ばれ、食事を始める。一通りの作法は身に着けているフェリスだが、常にこういう食事を行うわけでは無い。慣れた様子のリューイを見ながら食事を勧めつつ、彼は何者なのかと問いたくなった。

「ねえ、リューイ」

 とりとめのない会話が途切れ、鮮やかなデザートが運ばれ良い香りのお茶が注がれる。

「リューイは、どうして私にこうして、かまってくれるの?」

「アレスも、フェリスに会いに来ているでしょう」

「そうだけど……。じゃあ、どうして二人は私に会いに来てくれるの?」

 問いに、人差し指を口元にあてたリューイが

「まだ、秘密」

 片目をつむってみせた。

「いつか、きちんと話すから」

 それ以上、食い下がれそうになく頷けば、ごめんねとつぶやかれた。デザートを食べ終え、ほっと一息ついたあとに、リューイがそろそろ帰るよと立ち上がる。

「明日、もし天気が良かったら、庭で食事をしよう」

「いいの――?」

「もちろん。フェリスが嫌では無かったら」

「庭に、出てみたいわ」

「それじゃあ、約束」

 フェリスの手を取り甲に口づけて、じゃあねと大きく手を振りながらリューイが去っていく。それを見送るフェリスに

「何か、不足などはございませんか」

 メイドが声をかけた。

「何も無いわ。ありがとう」

「それでは」

 一礼をして、食器を片づけたメイドたちが部屋を出る。ふう、と息を吐いてソファに座り、することもないので二人が何者なのかを、考えてみることにした。

(王子かもしれないわよね)

 それ以外で、他に何か考え付くものは無いだろうか。

(私の護衛? なんて、城内にいたら必要ないわよね。単に、様子を見に来るだけならメイドでもよさそうなものだし)

 ふとアレスティが国に好きな男を残してきたのか、と聞いてきたことを思いだす。
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