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「100万だぞ?100万。毎月それだけ稼げれば、どれだけ生活が楽になると思ってんだよ。仕事選べるような身分じゃねえだろ?」
俺がそう言うと、渋々硝はスマホを取り出し、電話を掛け始めた。
「先ほど、名刺を貰った硝ですが…」
ぼそぼそと覇気のない声で会話をし、電話を切る。
「三枝さんちょうどこの近くにいるんだって」
硝がそう言った時、道路の向こうからシルバーのベンツが猛スピードでこちらにやってくるのが見えた。
硝と俺の隣で車は止まると、運転席のガラスが下がり、三枝の顔が覗いた。
「やあ、硝君。早速連絡もらえて嬉しいよ。立ち話もなんだから、とりあえず車に乗って」
硝は三枝の提案を聞いて俺の顔をじっと見た。
このタイミングの良さ。
もしかしたら三枝は俺達の後を個展会場からずっとつけていたのかもしれない。
最寄りの駅で降りた後、誰かに自分の車を持ってこさせて…。
その想像にはゾッとしたが、100万に目が眩んでいた俺は、硝に乗ってやれと頷いた。
硝が車の後部座席の扉を開け、乗り込む。
俺も続こうとしたが、車は扉を半ドアにしたまま来た時と同じ勢いで走り去っていった。
俺はしばし呆然としたが、慌ててスマホを取り出すと硝に電話をかけた。
「海?」
「お前大丈夫か?」
「うん。三枝さんが仕事の話聞いて欲しいだけだって言ってる」
背後で何か喚いているような声が聞こえた。
「だからって俺を置き去りにする必要ないだろ?」
硝に言っても仕方のないことだが、俺は心配と怒りでつい声が刺々しくなった。
「うん。三枝さんがごめんって伝えてくれって。話し合い、長くかかりそうだし、早く俺と話がしたくて気が急いてしまったって。あんな風に急発進して悪かったって。これから三枝さんの事務所行って俺、話、聞いてくるよ」
硝の声は落ち着いていた。変なことにはなっていないのだろう。
「分かった。やばそうなら連絡いれろよ」
「うん。ありがとう」
通話が終わり、俺はほっと息を吐いた。
とにかく硝が無事で良かった。
家に帰ったら、今日はあいつの好物のグラタンでも作ってやるかと俺は大きく伸びをした。
しかしその夜、硝は家に戻らなかった。
俺がそう言うと、渋々硝はスマホを取り出し、電話を掛け始めた。
「先ほど、名刺を貰った硝ですが…」
ぼそぼそと覇気のない声で会話をし、電話を切る。
「三枝さんちょうどこの近くにいるんだって」
硝がそう言った時、道路の向こうからシルバーのベンツが猛スピードでこちらにやってくるのが見えた。
硝と俺の隣で車は止まると、運転席のガラスが下がり、三枝の顔が覗いた。
「やあ、硝君。早速連絡もらえて嬉しいよ。立ち話もなんだから、とりあえず車に乗って」
硝は三枝の提案を聞いて俺の顔をじっと見た。
このタイミングの良さ。
もしかしたら三枝は俺達の後を個展会場からずっとつけていたのかもしれない。
最寄りの駅で降りた後、誰かに自分の車を持ってこさせて…。
その想像にはゾッとしたが、100万に目が眩んでいた俺は、硝に乗ってやれと頷いた。
硝が車の後部座席の扉を開け、乗り込む。
俺も続こうとしたが、車は扉を半ドアにしたまま来た時と同じ勢いで走り去っていった。
俺はしばし呆然としたが、慌ててスマホを取り出すと硝に電話をかけた。
「海?」
「お前大丈夫か?」
「うん。三枝さんが仕事の話聞いて欲しいだけだって言ってる」
背後で何か喚いているような声が聞こえた。
「だからって俺を置き去りにする必要ないだろ?」
硝に言っても仕方のないことだが、俺は心配と怒りでつい声が刺々しくなった。
「うん。三枝さんがごめんって伝えてくれって。話し合い、長くかかりそうだし、早く俺と話がしたくて気が急いてしまったって。あんな風に急発進して悪かったって。これから三枝さんの事務所行って俺、話、聞いてくるよ」
硝の声は落ち着いていた。変なことにはなっていないのだろう。
「分かった。やばそうなら連絡いれろよ」
「うん。ありがとう」
通話が終わり、俺はほっと息を吐いた。
とにかく硝が無事で良かった。
家に帰ったら、今日はあいつの好物のグラタンでも作ってやるかと俺は大きく伸びをした。
しかしその夜、硝は家に戻らなかった。
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