春に落ちる恋

まめ太郎

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同窓会

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 マンションのエントランスに続く階段を昇りながら、京極は物思いに耽っていた。
 危うく、足を踏み外しそうになりドキリとする。
 胸に手を置き、ふうと息を吐いた。
 京極が暗い気分を引きづったまま、玄関を開けると「おかえりなさーい」という声と共に、春が抱きついてきた。
 驚きのあまり、もやっとしていた気分までも吹き飛ぶ。

「タイミングいいな」
 京極は片手で春の腰を支え、そのままリビングまで運んだ。
「だってさっき駅前だってメッセージくれたでしょ。そろそろかなって玄関で待ってた」
 春は屈託のない笑顔を浮かべながらそう言った。

「馬鹿。風邪ひいたらどうする。部屋の中に居ろ」
「大丈夫ですよ。最近暖かいもん。あっ、ご飯すぐできるから」
 春は口うるさい京極を黙らせるようにキスをすると、キッチンに向かった。
「今日の夕飯はスパゲッティです。ソースはレトルトだけど」
 そう言いながら真剣に麺を茹でる春を見ていると、愛しくて、可愛くて、そのまま床に押し倒しそうになる。そんな欲望を封じ込め、京極は着替えようと寝室に向かった。

 寝室で一人になった途端、大きなため息が京極の口をつく。
「今週か……」
 つい独り言さえ漏れる。
「将仁さん、できたよー」
「今行く」
 春の呼びかけに大声で応えながら、また京極はため息を漏らしてしまった。
  
 グレーのスエット上下に着替え、リビングの椅子に座ると、春が目の前に白いソースのかかったパスタを出してくれる。
 隣に不格好な形に切られたトマトの載ったミニサラダも置いてあった。
 春は少しづつだが、料理のレパートリーが増えてきていた。
 なにより自分も残業で疲れているだろうに、自分より遅く帰ってくる京極の為、欠かさず夕飯を作ってくれるその気持ちが嬉しかった。

「いただきます」
 京極はフォークを持つと、パスタを巻きつけ口に入れた。
「うん。美味い」
 笑顔でそう言うと、食べずにこちらを見ていた春がほっとしたように息を吐く。
「よかった」
 春も微笑むと、自分もパスタを食べ始めた。
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