春に落ちる恋

まめ太郎

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 結局それからもう一戦交え、また風呂に入ると、時刻は16時を過ぎていた。
 ベットで大きなあくびをする俺の傍に将仁さんが座る。
「春、頼みがあるんだ」
 硬い表情でそう言われ、俺も正座をして向き合った。
「考えたんだが…やっぱり陽子には俺達の関係を話さないか?」
 将仁さんの言葉に俺の表情は自然と曇った。
「もちろん陽子には口止めはするぞ」
 将仁さんが慌てて言う。
 そして俺の手を掴み、俯いた。
「だっておかしいだろ?俺たちはちゃんと愛し合っている恋人同士なのに、あいつの前で俺はお前のこと野々原って呼んで、ただの上司と部下の演技をする…。一度しか会わない相手ならそれでもいいさ。だがあいつとは今後も付き合いがある。ずっと嘘をつき続けるなんて、俺は耐えられない。春も、そんなの嫌だろ?」
「そうだけど……」
 俺はどうしても素直に頷けなかった。
 久世さんに嘘をつかれたことが、まだ俺の中にわだかまりとして残っていた。
 将仁さんがそんな俺に微笑みかける。
「もしお前がカミングアウトするのが気まずいっていうなら、俺が一人で行って話してくる」
「だめ」
 気が付いたら叫んでいた。
「あ……」
 自分がとてつもなく我儘に思えて、口を手で覆い、俯いた。

 将仁さんがそんな俺を抱きしめた。
「うん。できれば俺もお前についてきて欲しい。カミングアウトなんて初めてだからな。これでも緊張してるんだ」
 おどけたように将仁さんが言う。
 俺は小さく笑うと、頷いた。
「分かりました。一緒に行きます」
 俺がそう言うと、将仁さんが俺の両肩を強く掴んだ。
「本当か?本当に一緒に行ってくれるのか?」
「はい」
「ありがとう。春。愛してる」
 将仁さんが再び俺を抱き締め言う。
「俺も愛してます」 
 そうだ、俺達は大丈夫だ。
 さっきだってあんなにお互いの想いを確かめあったじゃないか。
 俺は将仁さんのことを信じてる。
 そっと将仁さんの背中に触れながら、強く思った。
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