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「春、京極さんは許したじゃないか。真司と寝たって言った春を許すって京極さんそう言ったんでしょ?」
「でも俺はその手を拒んだ」
「もう一度許してくれるか聞けばいい」
「そんな厚かましいことできるわけない。これで良かったんだよ。将仁さんはこれで幸せに」
「そこまで言うなら京極さんが幸せになったところ、見届けてきなよ。連絡をとって、もうお前なんて要らない。俺はお前が居ないほうが幸せなんだって京極さんから直接言われておいでよ」
俺は目を瞑って首を振った。
「そんなことできない」
「なんで?京極さんがもし今不幸だったら、自分のやったことの意味がないから?」
「違う。……将仁さんに幸せになって欲しいって願ってはいるけど、でも俺がいないところで幸せそうにしているあの人を今はまだ見る勇気ない。忍、俺は元気そうに見えるかもしれないけど、ぎりぎりなんだ。できることなら今すぐ死にたいと思う時だってある」
俺は歪んだ笑みを浮かべながらそう言った。忍は俺の言葉を聞いて眉を顰めた。
忍に言ったことは本心だった。
毎日、眠れても眠れなくても朝が来て、会社に行って、仕事を終えて帰宅する。将仁さんと別れて二週間程経つが、今の俺には仕事しかなかった。休日にわざと大量にアポイントをいれ忙しくしてみたりもしたが、ふと空いた時間に考えてしまう。
彼を失ってなんの面白みも興味ももてないこの世界に、生きる価値はあるのだろうかと。
そういう考えに捕らわれる時は実家の母に電話して、世間話をするようにしていた。
近所の人から大量にみかんをもらったから送るねとか、寒いけど風邪ひいてない?とか。
話の端々に母は将仁さんのことを聞きたがったが、俺は別れたことをどうしても話せず、その度に適当な嘘をついた。
もし俺が死んだらこの人が悲しむ。
それを確認するためだけに母に電話をかけているようなものだった。
「春、京極さんに連絡取ってみなよ。絶対にその方がいい」
俺の話を聞いていなかったんだろうか。俺はまだ言い募ろうとする忍に緩く首を振った。
「でも俺はその手を拒んだ」
「もう一度許してくれるか聞けばいい」
「そんな厚かましいことできるわけない。これで良かったんだよ。将仁さんはこれで幸せに」
「そこまで言うなら京極さんが幸せになったところ、見届けてきなよ。連絡をとって、もうお前なんて要らない。俺はお前が居ないほうが幸せなんだって京極さんから直接言われておいでよ」
俺は目を瞑って首を振った。
「そんなことできない」
「なんで?京極さんがもし今不幸だったら、自分のやったことの意味がないから?」
「違う。……将仁さんに幸せになって欲しいって願ってはいるけど、でも俺がいないところで幸せそうにしているあの人を今はまだ見る勇気ない。忍、俺は元気そうに見えるかもしれないけど、ぎりぎりなんだ。できることなら今すぐ死にたいと思う時だってある」
俺は歪んだ笑みを浮かべながらそう言った。忍は俺の言葉を聞いて眉を顰めた。
忍に言ったことは本心だった。
毎日、眠れても眠れなくても朝が来て、会社に行って、仕事を終えて帰宅する。将仁さんと別れて二週間程経つが、今の俺には仕事しかなかった。休日にわざと大量にアポイントをいれ忙しくしてみたりもしたが、ふと空いた時間に考えてしまう。
彼を失ってなんの面白みも興味ももてないこの世界に、生きる価値はあるのだろうかと。
そういう考えに捕らわれる時は実家の母に電話して、世間話をするようにしていた。
近所の人から大量にみかんをもらったから送るねとか、寒いけど風邪ひいてない?とか。
話の端々に母は将仁さんのことを聞きたがったが、俺は別れたことをどうしても話せず、その度に適当な嘘をついた。
もし俺が死んだらこの人が悲しむ。
それを確認するためだけに母に電話をかけているようなものだった。
「春、京極さんに連絡取ってみなよ。絶対にその方がいい」
俺の話を聞いていなかったんだろうか。俺はまだ言い募ろうとする忍に緩く首を振った。
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