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ハッピーハッピーバースデー2
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それからも遠慮してなかなか注文しない俺に代わって、将仁さんはあん肝、中トロ、いくらなど高級なネタを次々頼んだ。
出されたもの全て美味しくいただき、満足した俺があがりのお茶を飲んでいると、将仁さんが「お会計」と後ろに控える従業員に言った。
俺は将仁さんの黒いポロシャツの袖をひいた。
「将仁さん。俺にも少し払わせてください」
その言葉を聞いた瞬間、将仁さんが憤怒の表情になった。
「お前どこの世界に誕生日の主役から金取る奴がいるんだよ。いいから黙っておごられとけ」
キレ気味にそう言われ、俺は首をすくめた。デートの時の食事だって、いつもほとんどだしてもらっているのに申し訳ないと思ったが、誕生日と言われたらそれ以上しつこくするのも気が引けて、結局お会計は全て将仁さんが支払った。
寿司屋の暖簾をくぐるともう夕方だった。
夏の夕暮れは明るくて、俺は将仁さんに指先を絡めると、聞いた。
「お腹もいっぱいだし、ちょっと散歩でもして帰りませんか?」
「ああ。俺この近くの店で買いたい物があるんだ。付き合ってくれないか?」
「いいですよ」
手を引かれて、15分ほど歩くと、誰もが知っているジュエリー店の前で将仁さんが立ち止まる。
高級な入口に気後れすることなく、将仁さんがその扉を開いた。
「ここで何買うんですか?」
俺の問いを無視して、将仁さんが指輪のコーナーに向かった。
シンプルな銀のリングを一通り見て「これは、まだ早いか…」とぼそりと呟いた。
続いて、腕時計のコーナーで将仁さんが足を止める。
「すみません。この文字盤が薄紫の見せてください」
将仁さんが指さした時計の値札を俺は何気なく見て、驚き、もう一度数えた。
桁を一つ間違えたかと思う金額で、俺はごくりと唾を飲んだ。
「春」
将仁さんに呼ばれ、近づくと、俺の手首に出してもらった高級腕時計を押し当ててくる。
「うん、いいな。お前は色が白いから紫が映える。すみません、これ…」
「ちょ、ちょ、ちょ、待って」
俺は将仁さんの腕をつかむと、店の隅っこに引きづって行った。
出されたもの全て美味しくいただき、満足した俺があがりのお茶を飲んでいると、将仁さんが「お会計」と後ろに控える従業員に言った。
俺は将仁さんの黒いポロシャツの袖をひいた。
「将仁さん。俺にも少し払わせてください」
その言葉を聞いた瞬間、将仁さんが憤怒の表情になった。
「お前どこの世界に誕生日の主役から金取る奴がいるんだよ。いいから黙っておごられとけ」
キレ気味にそう言われ、俺は首をすくめた。デートの時の食事だって、いつもほとんどだしてもらっているのに申し訳ないと思ったが、誕生日と言われたらそれ以上しつこくするのも気が引けて、結局お会計は全て将仁さんが支払った。
寿司屋の暖簾をくぐるともう夕方だった。
夏の夕暮れは明るくて、俺は将仁さんに指先を絡めると、聞いた。
「お腹もいっぱいだし、ちょっと散歩でもして帰りませんか?」
「ああ。俺この近くの店で買いたい物があるんだ。付き合ってくれないか?」
「いいですよ」
手を引かれて、15分ほど歩くと、誰もが知っているジュエリー店の前で将仁さんが立ち止まる。
高級な入口に気後れすることなく、将仁さんがその扉を開いた。
「ここで何買うんですか?」
俺の問いを無視して、将仁さんが指輪のコーナーに向かった。
シンプルな銀のリングを一通り見て「これは、まだ早いか…」とぼそりと呟いた。
続いて、腕時計のコーナーで将仁さんが足を止める。
「すみません。この文字盤が薄紫の見せてください」
将仁さんが指さした時計の値札を俺は何気なく見て、驚き、もう一度数えた。
桁を一つ間違えたかと思う金額で、俺はごくりと唾を飲んだ。
「春」
将仁さんに呼ばれ、近づくと、俺の手首に出してもらった高級腕時計を押し当ててくる。
「うん、いいな。お前は色が白いから紫が映える。すみません、これ…」
「ちょ、ちょ、ちょ、待って」
俺は将仁さんの腕をつかむと、店の隅っこに引きづって行った。
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