春に落ちる恋

まめ太郎

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 真司さんと俺、そして真美ちゃんとの間に起った長い話を俺はつっかえながらも、何とか全て将仁さんに話すことができた。
 その間、将仁さんは一度も口を挟まなかった。
 そして話が終わり、俺は緊張と話し過ぎたせいで乾いた喉を、紅茶で潤した。
 将仁さんはじっと前を見つめたまま、微動だにしない。

「あの、俺からの話は終わったんですけど…」
 俺がぴくりとも動かない将仁さんに不安を感じそう言うと、将仁さんは一言「で?」と言った。
 俺の方に体を向け、急にまくしたてるように話し始めた。

「俺、最後に会った時言ったよな?今出て行ったらお前とは別れるって。それでもお前はこの部屋から去った。何があったとしてもそれがお前の答えなんじゃないのか?」
 将仁さんにそう言われ、俺は悲痛な顔で言葉を詰まらせた。
「第一、やましいことがないなら何故、真司に再会したことを俺にずっと隠してたんだ?そこからもう信用ができない」
「そっ、それは、将仁さんに嫌われたく…」
「ああ、もういい。話は終わりだ。俺は一度出した結論を変えるつもりはない。疲れてるんだ。早く帰ってくれ」
 立ち上がり、背中を向ける将仁さんの足に俺は必至でしがみついた。

「ごめんなさい。俺が本当に悪かったです。許してくれるなら、どんなことだってします。どんなことだって誓います。だから別れるのだけは、考え直してください」
「しつこい。俺はお前と恋人に戻るつもりはない」
「なっ、なら、恋人じゃなくていい。ただの便利な家政婦としてでもおいてくれませんか?傍にいたいんです」
「家政婦?料理もろくにできないお前が?」
 将仁さんが言いながら鼻で笑う。

「俺、一生懸命頑張ります。将仁さんの言うことに逆らわないって約束します。今度こそ絶対に隠し事なんてしないからっ」
 足元に這いつくばる俺を将仁さんがじっと見つめる。

「本当にどんなことでも俺の言うとおりにするのか?」
「はい」
 俺は将仁さんの問いに間髪入れずに答えた。
「ふん。そうだな」
 将仁さんは少し考えるそぶりを見せると言った。
「分かった。恋人でなくても構わないって言うなら、傍においてやるよ」
「本当ですか?ありがとうございます」
 俺はとりあえず追い出されなかったことにほっとして、笑顔で頭を下げた。

「ついて来い」
 そう言って将仁さんは寝室に入っていった。俺も慌てて後に続く。
「脱げ。下だけでいい」
 そう言われて俺は呆然と立ちすくんだ。
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