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「また焦げた」
俺はひっくり返したオムレツの、真っ黒になった部分を見つめながら呟いた。
今日の夕飯はスペイン風オムレツというレシピにチャレンジしてみたのだが、何度やっても焦げてしまう。
「ああ、もう将仁さん帰って来ちゃうじゃん」
俺は慌てて、残った卵で何を作ろうと考え始めた。
将仁さんと恋人関係ではなくなったが、傍にいてもいいと言ってもらった日から、なるべく俺は将仁さんのマンションを訪れ、家事を行うようになった。
洗濯や掃除は得意分野だったが、料理は半月たった今も上手くいかないことの方が多い。
それにどうせ成功したって、将仁さん俺が作った料理は食べてくれる気ないみたいだし。
俺は卵をボウルに割りいれながら、ため息をついた。
少しでも長い時間近くに居れば、またいつか恋人同士に戻れるはずだと俺は考えていた。ただ最近の将仁さんの態度を見てると、それは甘い考えだったのではと思うようになった。
玄関の扉が開く音が聞こえ、俺は出迎えに走った。
「おかえりなさい」
満面の笑みでそう言う俺に、将仁さんは目も合わせないし「ただいま」も言わなかった。
もう毎度のことなので、今更傷ついたりはしない。
ネクタイを緩めながらリビングに向かう将仁さんに後ろから声をかける。
「夕飯すぐに食べられますよ」
俺の言葉を聞いた将仁さんが食卓に載った皿を見た。
目玉焼きの隣にはスクランブルエッグ。それだけが乗った皿が一枚。我ながら酷いメニューだと思う。
「あの…ご飯は炊きたて用意してます…」
せめて味噌汁とサラダくらい作っておけば良かったと思いながら、小声でそう付け加える。
「いらない」
将仁さんはそう言うと、着替えるために寝室に消えてしまった。
俺はがっくり肩を落とし、明日こそもっと食欲をそそるメニューにしようと誓った。
グレーのスエット上下に着替えた将仁さんはキッチンに立つと、お湯を沸かし、手早くパスタをゆで始めた。
ニンニクと唐辛子を刻み、オリーブオイルで炒め、パスタと絡める。
あっという間にペペロンチーノができあがり、美味しそうな香りが部屋中に満ちた。
大量のスクランブルエッグをご飯の上に載せ食べている俺の目の前で、将仁さんはフォークに麺を巻きつけ、口に入れている。
美味そうだなあ、食べたいなあ。
物欲しそうな俺の視線を無視して、将仁さんはあっという間に完食すると、皿を手に持ち立ち上がる。
「あっ、洗い物は俺やります」
そう言うと、将仁さんはようやく俺をちらりと見た。
久々に目が合い、どきりとする。
将仁さんはすぐに目を逸らし、皿をそのままにして浴室に向かった。
俺は止めていた息を吐き、ぼそぼそした卵をまた食べ始めた。
俺はひっくり返したオムレツの、真っ黒になった部分を見つめながら呟いた。
今日の夕飯はスペイン風オムレツというレシピにチャレンジしてみたのだが、何度やっても焦げてしまう。
「ああ、もう将仁さん帰って来ちゃうじゃん」
俺は慌てて、残った卵で何を作ろうと考え始めた。
将仁さんと恋人関係ではなくなったが、傍にいてもいいと言ってもらった日から、なるべく俺は将仁さんのマンションを訪れ、家事を行うようになった。
洗濯や掃除は得意分野だったが、料理は半月たった今も上手くいかないことの方が多い。
それにどうせ成功したって、将仁さん俺が作った料理は食べてくれる気ないみたいだし。
俺は卵をボウルに割りいれながら、ため息をついた。
少しでも長い時間近くに居れば、またいつか恋人同士に戻れるはずだと俺は考えていた。ただ最近の将仁さんの態度を見てると、それは甘い考えだったのではと思うようになった。
玄関の扉が開く音が聞こえ、俺は出迎えに走った。
「おかえりなさい」
満面の笑みでそう言う俺に、将仁さんは目も合わせないし「ただいま」も言わなかった。
もう毎度のことなので、今更傷ついたりはしない。
ネクタイを緩めながらリビングに向かう将仁さんに後ろから声をかける。
「夕飯すぐに食べられますよ」
俺の言葉を聞いた将仁さんが食卓に載った皿を見た。
目玉焼きの隣にはスクランブルエッグ。それだけが乗った皿が一枚。我ながら酷いメニューだと思う。
「あの…ご飯は炊きたて用意してます…」
せめて味噌汁とサラダくらい作っておけば良かったと思いながら、小声でそう付け加える。
「いらない」
将仁さんはそう言うと、着替えるために寝室に消えてしまった。
俺はがっくり肩を落とし、明日こそもっと食欲をそそるメニューにしようと誓った。
グレーのスエット上下に着替えた将仁さんはキッチンに立つと、お湯を沸かし、手早くパスタをゆで始めた。
ニンニクと唐辛子を刻み、オリーブオイルで炒め、パスタと絡める。
あっという間にペペロンチーノができあがり、美味しそうな香りが部屋中に満ちた。
大量のスクランブルエッグをご飯の上に載せ食べている俺の目の前で、将仁さんはフォークに麺を巻きつけ、口に入れている。
美味そうだなあ、食べたいなあ。
物欲しそうな俺の視線を無視して、将仁さんはあっという間に完食すると、皿を手に持ち立ち上がる。
「あっ、洗い物は俺やります」
そう言うと、将仁さんはようやく俺をちらりと見た。
久々に目が合い、どきりとする。
将仁さんはすぐに目を逸らし、皿をそのままにして浴室に向かった。
俺は止めていた息を吐き、ぼそぼそした卵をまた食べ始めた。
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