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再会した時以来、将仁さんが俺を寝室に呼ぶことはなかったし、俺の体にもあれから一切触れようとはしなかった。
俺は毛布を一枚だけ借りて、リビングのソファで寝泊まりしていた。少し寒いし、寝返りもうてないが文句は言えない。
「おやすみなさい」
寝室に向かう将仁さんに声をかけるが、返事はなく、ばたんと扉が閉まる。
いつまでこんなことが続くのか。将仁さんはもう俺を一生許さないつもりなんじゃ…。
俺はそんな自分の考えを頭を振ってはらうと、肩まで毛布をかぶり、眠ろうと強く目を閉じた。
仕事の方も将仁さんのいない支店業務は相変わらずきつくて、深夜帰宅は当たり前だった。
そんな俺よりも後に帰ってくる将仁さんの仕事は、きっと想像以上の激務なんだろう。
どういう環境の中働いているのか、いつ支店に戻れるのか。
そんな世間話をしてみたいという誘惑に駆られることもあるが、将仁さんの雰囲気がそれを拒絶していた。
それでもどんなに遅くなっても以前のように会社に泊まるということはないようで、明け方でも一応は帰宅しているところをみると、一時期よりは将仁さんの仕事も落ち着いたのかもしれない。
そんなある晩。
今まで帰宅して、シャワーを浴びると寝室に直行していた将仁さんが、珍しくリビングのソファに座り、テレビをつけた。
レンタルしてきたDVDを見るつもりらしく、リモコンを片手に操作している。
俺はそろりと近づくと、将仁さんの前にコーヒーのマグを置き、少し離れて同じソファに座った。
将仁さんがそのカップに手を伸ばし、コーヒーを飲む。
俺は心の中でガッツポーズをした。
「何のDVD借りてきたんですか?」
無視されるのを覚悟で聞いてみる。
「今、一緒に働いている上司から勧められたやつ」
返事をしてくれたことが嬉しくて、俺は「そうですか」とにっこり笑った。
将仁さんの借りてきたDVDは海外のサスペンスドラマだった。
心理分析官の女性が、様々な凶悪犯と対峙しながら、事件を解決していくという一話完結のストーリーのようだ。
最初の話は子供を誘拐する犯人の話。子供が殺される直前で、主人公の女性が間に合った瞬間、俺はほっと息を吐いた。展開から目が離せず、俺はドラマにすっかり夢中になった。
二話目は、女性を強姦して殺すという犯人を追い詰める話だった。
犯人から逃げ出した被害者の女性が、どんな目に合ったかを泣きながら主人公に語るシーンを見ていた時、突如俺の心臓が早鐘をうち始めた。
あれ、俺、ちょっとやばいかも。
いつもテレビドラマの中で主人公がレイプされたり、殴られるところを見ても、フィクションと思っているから平気だった。
ただ今回はドラマと分かっていても、被害者役の女性の演技が真に迫りすぎていた。
いつの間にか、自分が野間たちに無理やり犯された映像が脳内に垂れ流され、俺は浅い呼吸をくりかえした。
二の腕がふいに強く掴まれる。
「おい、大丈夫か」
将仁さんが俺の目を覗きこんでいる。
俺はようやく正気に戻ると、がくがくと頷いた。
「俺、ちょっと風呂入ってきます」
変なことを口走りそうで、俺は立ちあがると浴室に向かった。
体と頭をさっと洗い、ぬるめのお湯に浸かる。
ふうと息を吐いた。
恐怖がまたぶり返しそうになり、俺は目を閉じると、大きく頭を振った。
目を開けると、俺の足首を掴む手が見えて……。
「うわああああ」
俺は叫んで立ち上がった。
俺は毛布を一枚だけ借りて、リビングのソファで寝泊まりしていた。少し寒いし、寝返りもうてないが文句は言えない。
「おやすみなさい」
寝室に向かう将仁さんに声をかけるが、返事はなく、ばたんと扉が閉まる。
いつまでこんなことが続くのか。将仁さんはもう俺を一生許さないつもりなんじゃ…。
俺はそんな自分の考えを頭を振ってはらうと、肩まで毛布をかぶり、眠ろうと強く目を閉じた。
仕事の方も将仁さんのいない支店業務は相変わらずきつくて、深夜帰宅は当たり前だった。
そんな俺よりも後に帰ってくる将仁さんの仕事は、きっと想像以上の激務なんだろう。
どういう環境の中働いているのか、いつ支店に戻れるのか。
そんな世間話をしてみたいという誘惑に駆られることもあるが、将仁さんの雰囲気がそれを拒絶していた。
それでもどんなに遅くなっても以前のように会社に泊まるということはないようで、明け方でも一応は帰宅しているところをみると、一時期よりは将仁さんの仕事も落ち着いたのかもしれない。
そんなある晩。
今まで帰宅して、シャワーを浴びると寝室に直行していた将仁さんが、珍しくリビングのソファに座り、テレビをつけた。
レンタルしてきたDVDを見るつもりらしく、リモコンを片手に操作している。
俺はそろりと近づくと、将仁さんの前にコーヒーのマグを置き、少し離れて同じソファに座った。
将仁さんがそのカップに手を伸ばし、コーヒーを飲む。
俺は心の中でガッツポーズをした。
「何のDVD借りてきたんですか?」
無視されるのを覚悟で聞いてみる。
「今、一緒に働いている上司から勧められたやつ」
返事をしてくれたことが嬉しくて、俺は「そうですか」とにっこり笑った。
将仁さんの借りてきたDVDは海外のサスペンスドラマだった。
心理分析官の女性が、様々な凶悪犯と対峙しながら、事件を解決していくという一話完結のストーリーのようだ。
最初の話は子供を誘拐する犯人の話。子供が殺される直前で、主人公の女性が間に合った瞬間、俺はほっと息を吐いた。展開から目が離せず、俺はドラマにすっかり夢中になった。
二話目は、女性を強姦して殺すという犯人を追い詰める話だった。
犯人から逃げ出した被害者の女性が、どんな目に合ったかを泣きながら主人公に語るシーンを見ていた時、突如俺の心臓が早鐘をうち始めた。
あれ、俺、ちょっとやばいかも。
いつもテレビドラマの中で主人公がレイプされたり、殴られるところを見ても、フィクションと思っているから平気だった。
ただ今回はドラマと分かっていても、被害者役の女性の演技が真に迫りすぎていた。
いつの間にか、自分が野間たちに無理やり犯された映像が脳内に垂れ流され、俺は浅い呼吸をくりかえした。
二の腕がふいに強く掴まれる。
「おい、大丈夫か」
将仁さんが俺の目を覗きこんでいる。
俺はようやく正気に戻ると、がくがくと頷いた。
「俺、ちょっと風呂入ってきます」
変なことを口走りそうで、俺は立ちあがると浴室に向かった。
体と頭をさっと洗い、ぬるめのお湯に浸かる。
ふうと息を吐いた。
恐怖がまたぶり返しそうになり、俺は目を閉じると、大きく頭を振った。
目を開けると、俺の足首を掴む手が見えて……。
「うわああああ」
俺は叫んで立ち上がった。
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