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食堂にはいると色んな方向からの視線を感じた。
大学の食堂に赤ん坊が来るなんて珍しいのだろう。
適当な席に座った俺の膝に唯希を置くと、樹は食事を買いに行った。
「パパぁ」
唯希が樹の背中に手を伸ばす。
「パパはね、ご飯を買いに行ったんだよ」
そう教えても唯希の視線はずっと樹をむいていた。
それに気づいた樹がこちらに手を振ると、唯希も両手をぶんぶんと振り回す。
俺は苦笑すると、唯希の頭をゆったりと撫でた。
戻って来た樹のトレイには空の小さな器とうどん、すき焼丼、ミックスサンドイッチが載っていた。
樹は自分の食事には手を付けず、唯希を自分の膝に乗せると、俺の前にサンドイッチを置いた。
うどんを空の器に取ると小さく切って、唯希に与え始める。
「樹、俺がやるよ。お前これから授業あるだろ?」
「午後の授業、教授の都合で休みになったから大丈夫。俺も図書館で本を借りたら、真達と一緒に帰るよ」
ハフハフとうどんを食べる唯希がもっとくれとばかりに机を叩く。
食欲旺盛な唯希は未熟児で産まれたとは思えないほど、大きく成長していた。
「分かったよ。今あげるから待っててな」
樹は苦笑すると切ったうどんにふうふうと息を吹きかけ、せっせと唯希の口元に運んでいる。
ようやく唯希が食べ終わると、俺が唯希を預かり、樹はすっかり冷えてしまった残りのうどんとすき焼丼を食べ始めた。
「ええ、この子、成澤君の子供?」
樹の友達だろうか。綺麗にカールさせた髪を耳にかけながら、立ったまま女の子が尋ねる。
「ああ」
「そうなんだ。全然似てないね」
女の子は俺の膝に座った唯希をじっと見つめる。
「俺の祖父母に似たから」
いつもの言い訳を口にすると、女の子が納得したように頷いた。
俺と視線を合わせ女の子がにっこり微笑む。
「突然ごめんなさい。私成澤君と同じゼミの月村って言います。初めまして」
月村さんに自己紹介され、俺も慌てて頭を下げた。
「成澤真です。よろしく」
「やっぱ、お前の子供だったの?」
月村さんが俺の隣に座ったのを皮切りに、樹の知り合いと思われる大学生がわらわらと集まり始めた。
大学の食堂に赤ん坊が来るなんて珍しいのだろう。
適当な席に座った俺の膝に唯希を置くと、樹は食事を買いに行った。
「パパぁ」
唯希が樹の背中に手を伸ばす。
「パパはね、ご飯を買いに行ったんだよ」
そう教えても唯希の視線はずっと樹をむいていた。
それに気づいた樹がこちらに手を振ると、唯希も両手をぶんぶんと振り回す。
俺は苦笑すると、唯希の頭をゆったりと撫でた。
戻って来た樹のトレイには空の小さな器とうどん、すき焼丼、ミックスサンドイッチが載っていた。
樹は自分の食事には手を付けず、唯希を自分の膝に乗せると、俺の前にサンドイッチを置いた。
うどんを空の器に取ると小さく切って、唯希に与え始める。
「樹、俺がやるよ。お前これから授業あるだろ?」
「午後の授業、教授の都合で休みになったから大丈夫。俺も図書館で本を借りたら、真達と一緒に帰るよ」
ハフハフとうどんを食べる唯希がもっとくれとばかりに机を叩く。
食欲旺盛な唯希は未熟児で産まれたとは思えないほど、大きく成長していた。
「分かったよ。今あげるから待っててな」
樹は苦笑すると切ったうどんにふうふうと息を吹きかけ、せっせと唯希の口元に運んでいる。
ようやく唯希が食べ終わると、俺が唯希を預かり、樹はすっかり冷えてしまった残りのうどんとすき焼丼を食べ始めた。
「ええ、この子、成澤君の子供?」
樹の友達だろうか。綺麗にカールさせた髪を耳にかけながら、立ったまま女の子が尋ねる。
「ああ」
「そうなんだ。全然似てないね」
女の子は俺の膝に座った唯希をじっと見つめる。
「俺の祖父母に似たから」
いつもの言い訳を口にすると、女の子が納得したように頷いた。
俺と視線を合わせ女の子がにっこり微笑む。
「突然ごめんなさい。私成澤君と同じゼミの月村って言います。初めまして」
月村さんに自己紹介され、俺も慌てて頭を下げた。
「成澤真です。よろしく」
「やっぱ、お前の子供だったの?」
月村さんが俺の隣に座ったのを皮切りに、樹の知り合いと思われる大学生がわらわらと集まり始めた。
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