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2 立花颯は至って普通

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 次の日の朝も、幼馴染の優奈は恋で頭がいっぱいいっぱいだった。

「あのね、それでね、立花颯さまは私のことを助けてくれて、クラスの雰囲気を明るくしてくれたの!!」
「へー、そーなんだー」

 どうやら彼女は入学早々、昨日の国語の初授業で先頭の席で爆睡をかまし、その際優奈の恋のお相手たる立花颯という男の子に助けられたらしい。

(いや本当に、ゆーなちゃんあんた何やらかしてんの!?初回の授業で寝るか?普通!!)
「本当にカッコよかったんだから!!」
「そ、そうなんだ。今日は寝ないようにね」

 心菜は小学校の頃からのねぼすけを肘で突きながら、思いっきり苦笑した。どちらかというと真面目に分類される心菜には考えられない失態だが、優奈にとって授業中の爆睡はありふれたことだ。………そう、ありふれたことなのだ。

「あ、あれ、立花颯さまだ!!」

 学校到着間際、優奈がはしゃいだ声でちょっとヤンチャっぽ漢字なのに生真面目な印象を与える男の子のことを指差した。

(………ゆーなちゃんが好きそうな感じ)

 心菜は内心優奈を泣かせたら許さんと言いながら、立花颯という男の子を観察した。男友達に囲まれている彼は至って普通で、なんならちょっと容姿がいい以外には特出する点もない。今まで優奈が惨敗してきた男の子とは違う印象だが、優奈が小学校の頃に恋慕していた男の子と似た雰囲気だ。

「じゃあ、また放課後に」
「あ、ごめん。私今日から部活」

 小学校の頃からのお決まりの台詞セリフで去ろうとしたら、優奈が合掌して軽く頭を下げてきた。あぁ、もうそんな時期か。心菜はそっと息を吐いて首を傾げた。

「あ、そっか。ゆーなちゃんはバレーだっけ?」
「ん、そう。運動に挑戦してみたくって!!」

 ちょっとぽっちゃりした優奈は運動が苦手というか、嫌いだったはずだ。だが、どうゆう心の変化からか中学からはバレーボールを始めることしたらしい。
 心菜は、ちょっと走るだけで息が切れ切れで動けなくなり、ちょっと筋トレするだけで全身筋肉痛になり、ちょっとボールを投げるだけでボールが明後日の方向に飛んでいく優奈のことが、心底心配になった。

(私もバレーにした方が良かっただろうか)

 心菜はそんな心情を首を振って追い出し、自分はボール競技が壊滅的ではないかと言い聞かせた。
 だがやっぱり、運動音痴な幼馴染のことが心菜は心配だ。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

明日からは気ままに不定期更新です。
書き溜めはしているので、ご希望のお時間を感想欄からお知らせくださる方がいらっしゃいましたら、そのお時間で更新します。

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