小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

文字の大きさ
4 / 144

3 ぶつかった男の子

しおりを挟む
 放課後、心菜はこっそり体育館に向かった。今日のバレー部の部活は、バレー部のクラスメイトが基礎練だけだと言っていたのを小耳に挟んだが、それでもやっぱり優奈のことが心配だ。ドジをやらかして怪我をしないとも限らない。今日は部活がお休みな心菜は、こっそり体育館内を覗き込んだ。

「ゆーなちゃんは………、大丈夫そうね」

 必死になって走っているが、異常なまでにばてたりはしていない。ま、まあ、ついて行けてすらいないが、問題は無さそうだ。
 心菜は、そっと息を吐いて立ち上がった。あまり長い間覗き見をするのもよろしくない。

「わぷっ!」
「わあ!」

 振り返った瞬間、なんだかちょっとだけ大きな人にぶつかった。なかなか綺麗な声をした驚き声に、心菜は一瞬息をつめた。声優を目指せるんじゃないかというくらいに、本当に綺麗な声だ。

「ご、ごごご、ごめんなさい!!」
「いや、気にするな。つーか、前見てなかった俺も悪いし」
「えっと、」

 心菜はびっくりしていた。何故ならそのぶつかった男の子というのが、優奈の恋のお相手、立花颯だったからだ。こんなに綺麗な声をしているのか、呆然と眺めていると、遠くから『立花ー!!』と彼を呼ぶ声がした。

「あ、呼ばれてますよ。それじゃあ私はこれで」
「待って。なんで俺の名前知ってんの?」

 心菜は自分の失態に気付き、内心冷や汗を流した。

「………向こうの男の子、貴方のほう向いてお名前を呼んでいたので。分からない方がおかしいと思いますよ」

 冷ややかに言って立ち去ると、心菜は校門前まで早足で向かった。
 あんな綺麗な声、反則だ。
 心菜はそっと溜め息をついて、優奈の恋をお手伝いすることにした。

▫︎◇▫︎

「あれ?立花、それどうしたんだ?生徒手帳?」

 心菜が去った体育館前では、立花颯が生徒手帳片手ににんまり笑っていた。

「さっきの子が落としてった。………久遠心菜くおん ここなだってさ」
「あぁ、あいつ確か高梨の幼馴染だぜ。高梨に渡しとけば?」
「へえ、だからあいつ俺の名前知ってたのか」

 立花颯は緊張した顔をしている写真の貼り付けられた生徒手帳を片手に、興味を失ったような顔をした。おもちゃが手に入ったと思ったが、実はそれがつまらないおもちゃだった時のような、そんな反応だ。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

好きだから傍に居たい

麻沙綺
恋愛
前作「ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)」の続編です。 突如として沸いた結婚話から学校でのいざこざ等です。 まぁ、見てやってください。 ※なろうさんにもあげてあります。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...