小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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「いや、お小遣いは貯めといていざという時に使うものでしょ」
「それは必要経費が請求制の人間だけが言える理論ー!!」

 優奈が月給制なのに対し、心菜は請求制のお小遣いを引いている。優奈は多めの金額をバンッ!と毎月渡されて、その中で友人の誕生日プレゼントやおやつ、文具をやりくりしなければならない。だが、心菜はご褒美で何かが起こるごとに細々としたお金をもらって、必要経費、つまり友人の誕生日プレゼントやお菓子、文具、友人と遊ぶときに必要なお金は全て請求制だ。心菜が欲しい物を買うには、何かを頑張らなければならない。優奈のように自由気ままにお買い物できない心菜はいざという時に使うため、基本お金を貯めている。

「私はゆーなちゃん家の精度が羨ましいけどなー。だって好きな時に好きなようにものが買えるじゃん」
「………カフェ行ったらすぐブッ飛んじゃうような金額しかもらってないんだけどー!!」
「………………毎日行こうとするからでしょう」

 心菜は呆れて溜め息を漏らす。お布施に毎月大部分を突っ込んでいるこの友人は、贅沢三昧をしようとして、毎月月終わりが金欠なことが多い。今月も見事にやらかしている。

「ほらほら喧嘩しない。着いたぜ?メスゴリラに………。立花、久遠になんかニックネーム付けてー」
「んー、りょ~かい。………おじょーさま、『お嬢さま』はどうだ?」
「お、いいね~。高嶺の花な久遠にぴったりだ」
「じゃ、決定!!」

 心菜はむうぅっと眉間に皺を寄せた。そして、ほっぺたをぷくぅーっと膨らませた。

「私はお嬢さまなんかじゃないわ」
「………そーいえば、昨日はお前夜食に何食べたんだ?」

 中学3年生の受験生になり、心菜は今年度の春から週3で塾に通っている。平日2日1時間ずつの単科と、土曜日に3時間の県立高校の受験対策講座をとっていることもあり、どうしても夜眠る時間が遅くなり、お夜食が欲しくなってしまうのだ。

「お夜食?えーっとね………、林檎とキウイフルーツに、あとルイボスティー」
「ほーら、『お嬢さま』だ。」

 心菜は意味が分からず首を大きく傾げる。何故この会話で『お嬢さま』と評されるのか、心菜には分からない。

「じゃあ久遠、あれ、なんて言うんだ?」

 立花の指す先には、1輪の何のお花か分からないお花が美しく凛と咲いている。

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