小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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39 着替えと放課後の道

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 それからしばらくして、心菜と立花は更衣室に向かった。だいぶ遅れてしまったが、クラスメイトたちはまだみんな興奮がおさまらないからか、おしゃべりにお花を咲かせて全く着替えが進んでいなかった。

「おかえり、ここな」
「………ただいま、」

 優奈の様子が、少しだけおかしかった。心菜は不安になって気づかれない程度に優奈の事をそれとなく観察した。けれど、違和感の正体には辿り着けない。心菜はずっと人のことを観察し続けてきた。だからこそ分かる。優奈は今心菜に踏み込んでほしくないのだと。
 心菜はそっと息を吐き出して、いつも通りに接することにした。否、いつも通りではない。少しだけ明るく接することにした。

「クラスマッチ疲れたね。私、もうくったくたー!!でも、打ち合げは楽しみかも!!ゆーなちゃん、何買う?」
「ーー、うーん、私は炭酸とスナック菓子かなー。ここなは?」
「私?私は、」

 心菜は食べたいお菓子を片っ端から頭に思い浮かべた。けれど、やっぱり食べたなと思うのは、頭に真っ先に思い浮かんだお菓子だった。

「………桃の炭酸とチョコレートがかかってるポテトチップスかなー」
「えぇー!もったいなーい!!もっと豪勢なもの食べようぜー」
「えー、それ炭酸とスナック菓子買うって言ったゆーなちゃんが言う?」

 心菜は優奈と笑い合う。
 違和感なく、いつも通りに笑い合う。
 けれど、心菜には少しだけ距離が遠くなっている気がした。
 心の距離が開いた気がした。

 着替えを済ませてホームルームにテキトーに参加して、心菜と優奈と立花、有栖川と新谷と門川は近くのスーパーに向かった。最初はコンビニで買い揃えようという話だったが、オタクですぐにグッズを買い漁る優奈が金欠であるということで、特売品や安売りの品を求めて、コンビニに比べると幾らか安価なスーパーに向かうことにしたのだ。

「おいおい高梨、お前結構な金額のお小遣い貰ってるんじゃなかったのか?」
「ゆーなちゃんは無駄なところにガンガン突っ込んじゃうからねー」

 立花の言葉に、心菜は思いっきり苦笑した。そして、優奈の肩に自身の手をそっと乗せた。

「うぅっ、おが布施だよ、お布施!!推しにお布施して何が悪い!!っていうか、お小遣いって使った物がちでしょ!?」

 優奈の言葉に、心菜はあははと乾いた笑いをこぼした。

*******************

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