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51 水族館へ

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 神社へのお参りが終わったら、次は水族館へ向かう。やっぱり心菜と優奈は行くまでの道のりでもはしゃいでしまい、なんだか幼い印象を周りに抱かせてしまう。

「久遠って案外子供っぽい?」
「ん?あぁ、そうだな。久遠はしっかりとしている印象が強いけど、基本は怖がりだし、幼いぞ。ちなみに、小学校の頃の自然の家で、脅かし役の先生に驚かされて、思いっきりギャン泣きしたこともある。俺ははんが違ったけど、ありゃあ、大変そうだったわー」
「うわー、」

 小学校時代の黒歴史を掘り返されていることに気がつかない心菜は、水族館で見られるイルカショーに思いを馳せる。どんなショーなのかは想像がつかないが、水族館によって全く異なる演出をするイルカショーが、心菜は小さい頃から大好きだった。大体の記憶には迷子も付属してしまうが、それでも楽しかったと思える演出が多いショーは、心菜がイルカショーを好きでいられる所以なのかもしれない。

「おっ、着いたねー。案外早かった」
「そうだね。早くお魚さんみたいな!!」

 心菜は目を輝かせて、前に並んでいる生徒の隙間から、水族館の風景を楽しむ。

(チンアナゴに、くらげさん、サメに貝類なんかも見たいな………)

 壁に貼られている写真をじーっと見つめていると、隣の優奈の不穏な気配に心菜は頬を引き攣らせた。

「そうだねー、じゅるり」
「………………食べられないよ」
「うん、知ってる」

 残念そうに頷いた優奈に、心菜は胡乱げな視線を向けてしまう。なんというか、水族館のお魚さんさえも食事にしようとするのは、食べることが大好きな優奈らしいと思ったのだ。

「まあ、のんびりと鑑賞しよう。ここなら、迷ってもあんまり困らないはずだし」

 心菜の言葉に、新谷がピクっと片眉を上げて立花の肩に自分の身体を乗せながら、立花の隣に立っていた心菜を覗き込んできた。なんだかホラー映画のようで地味に怖い。

「おいおい、久遠さーん、迷う前提で話してません?」
「いえいえ、新谷さーん、私、一応迷う気はないよ?」

 そのあと、心菜はふっと誰もいない方向に視線を外した。

(迷う気はなくても、迷うだろうけどね)

 長年の感から、心菜はイヤなことを思ってしまったが、今日こそはみんなに迷惑をかけてしまうが、手を繋いでもらってでも迷子になるまいと深く決意をした。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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