63 / 144
62 もう少しで夏休み
しおりを挟む
▫︎◇▫︎
「夏だ!海だ!自由だー!!」
「………何言ってんの?」
「うぐっ、冷たい声が辛い」
夏休みに学生に向けて配られるパンフレットの、海水浴場面を描いたページを見ながら叫んだ立花に、心菜は冷めた目を向けた。
「………今年の夏休みは、『夏だ!塾だ!勉強だー!!』でしょう?」
「………………塾のこと考えないようにしてるのに、やめてくれない?」
机に突っ伏して呻き声を上げた立花に、心菜は夏休みの課題用に配られたえげつない量のテキストと格闘する。例年よりも3倍以上に膨れ上がった宿題に、夏休み初日までに全ての宿題を終わらせる心菜は悲鳴をあげかけていた。
「いいえ、現実を叩きつけてどん底の気分に叩き落とすことこそ、この遊びのない、地獄の勉強詰め夏休みにとっての唯一と言っていいほどの楽しみよ」
「………おーい、高梨ー、久遠がぶっ壊れたぞー!!」
「失礼ね。せめて病みかけていると言ってちょうだい」
「………どっちも一緒じゃね?」
ピタッと手を止めて立花の方を向いた心菜は、むうっとくちびるを尖らせてぐっと背伸びをした。
「はあー、勉強合宿とか、馬鹿げてるよね」
「あぁ、それは同感。携帯持ち込み禁止で2日間勉強詰めとか、マジで死ぬ」
心菜と立花は同じ会社が運営する塾へと通っていた。ちなみに、教場は正反対と言っていうほどに真逆にある塾だ。だが、イベントという名の地獄のテストや勉強会は合同で行われるため、心菜と立花は毎度共に愚痴っていた。
「………タブレット持ち込みたい。Wi-Fiがある教場希望」
「それな。というか、お前携帯持ってないんだっけ?」
「うん、連絡手段もね」
来年にならないと手に入らない携帯と流行りの連絡ツールに思いを馳せた心菜は、ほうっと本日何度目かも分からない盛大なため息をついた。
「はあー、ほんっとうに、もう今から合宿嫌なんだけど」
「………俺はそこまで嫌じゃないぞ。ただ、順位が出るのが嫌なだけで」
「私は、順位が出るのは嫌じゃないけれど、勉強詰めがイヤ」
「順位がいい人が植える暴論」
「………ちなみに、あなたが言ったのは、勉強好きだけが言える暴論よ」
2人して顔を見合わせ、大きなため息をこぼした2人は、授業が始まるまでの間、永遠と塾への愚痴をだらだらとこぼし続けるのだった。
7月の後半、あと数日で夏休みだ。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「夏だ!海だ!自由だー!!」
「………何言ってんの?」
「うぐっ、冷たい声が辛い」
夏休みに学生に向けて配られるパンフレットの、海水浴場面を描いたページを見ながら叫んだ立花に、心菜は冷めた目を向けた。
「………今年の夏休みは、『夏だ!塾だ!勉強だー!!』でしょう?」
「………………塾のこと考えないようにしてるのに、やめてくれない?」
机に突っ伏して呻き声を上げた立花に、心菜は夏休みの課題用に配られたえげつない量のテキストと格闘する。例年よりも3倍以上に膨れ上がった宿題に、夏休み初日までに全ての宿題を終わらせる心菜は悲鳴をあげかけていた。
「いいえ、現実を叩きつけてどん底の気分に叩き落とすことこそ、この遊びのない、地獄の勉強詰め夏休みにとっての唯一と言っていいほどの楽しみよ」
「………おーい、高梨ー、久遠がぶっ壊れたぞー!!」
「失礼ね。せめて病みかけていると言ってちょうだい」
「………どっちも一緒じゃね?」
ピタッと手を止めて立花の方を向いた心菜は、むうっとくちびるを尖らせてぐっと背伸びをした。
「はあー、勉強合宿とか、馬鹿げてるよね」
「あぁ、それは同感。携帯持ち込み禁止で2日間勉強詰めとか、マジで死ぬ」
心菜と立花は同じ会社が運営する塾へと通っていた。ちなみに、教場は正反対と言っていうほどに真逆にある塾だ。だが、イベントという名の地獄のテストや勉強会は合同で行われるため、心菜と立花は毎度共に愚痴っていた。
「………タブレット持ち込みたい。Wi-Fiがある教場希望」
「それな。というか、お前携帯持ってないんだっけ?」
「うん、連絡手段もね」
来年にならないと手に入らない携帯と流行りの連絡ツールに思いを馳せた心菜は、ほうっと本日何度目かも分からない盛大なため息をついた。
「はあー、ほんっとうに、もう今から合宿嫌なんだけど」
「………俺はそこまで嫌じゃないぞ。ただ、順位が出るのが嫌なだけで」
「私は、順位が出るのは嫌じゃないけれど、勉強詰めがイヤ」
「順位がいい人が植える暴論」
「………ちなみに、あなたが言ったのは、勉強好きだけが言える暴論よ」
2人して顔を見合わせ、大きなため息をこぼした2人は、授業が始まるまでの間、永遠と塾への愚痴をだらだらとこぼし続けるのだった。
7月の後半、あと数日で夏休みだ。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる