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71 悪夢からの目覚め

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 その甲斐あってか、それからは告白してきた男の子関連の嫌がらせは受けなくなったが、それでも揉めることは多々あった。心菜はこの時思った。

(人間なんて、誰も信用できない)

 と。
 この時はだいぶ疲れていたのであろう。なんて言ったって、何人かの友人はいじめられるのを恐れて、心菜から離れていったのだから。心菜は当時結構傷ついた。
 そして、もう男の子に告白されるのはごめんだと思った。特に、イケメンや人気の高い男の子はいらないと思った。だってそういうのは、妬みや嫉みの原因なのだから。平和に生きたい心菜には、まったくもって必要のないことなのだから。

(最悪な夢)

 あまりの夢見に大きく溜め息をつくと、今にも泣き出しそうな顔をしてぐずぐずとしている幼き頃の自分の姿がぼやぼやと歪み始める。

(あぁー、本当に、要らない夢)

▫︎◇▫︎

 目が覚めると見慣れない天井があって、心菜はぐっと眉間に皺を寄せる。

「………さいあく」

 ゆっくりと起き上がって、ひっそりと部屋を出る。ルームメイトの3人はぐっすりと眠っている。先程まで部屋が妙に明るかった気がするが、それも無くなっている。隣のベッドに眠っている女の子の手元に携帯があることから、多分先程まで遊んでいたのだろう。というか、持ち込み禁止だったはずなのだが………。このままではバレそうだと肩をすくめた心菜は、すっと布団を上げて携帯を覆い隠した。これで先生の見回りが来ても大丈夫だろう。
 心菜はのんびりと歩みを進めて、談話室へと足を向けた。
 暖かなオレンジに光に包まれた談話室はじっとりと熱い廊下に比べて涼しくて、ほうっと溜め息をこぼしてしまう。じっとりとかいてしまった悪夢による汗が気持ち悪かったが、涼しくなるだけで楽になって心菜はどさっとソファーに腰掛ける。寝巻き用に持ってきた着なれないジャージは、着心地が悪くて違和感だ。運動ばかりで他のことに使っていなかったこの服は、とても綺麗だが、周りの子は着古したジャージの子が多くて、心菜は自分が少し浮いてしまっていた気がした。

「はあぁー、………なれないことなんてするんじゃなかった………………」

 靴を脱いでぎゅっと蹲ると、びっくりするくらいに安心して、心菜は丸まったままメソメソとしてしまう。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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