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112 ケンカップルの去った後
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怒鳴り合い掴み合い、取っ組み合いしか起こらないケンカップルのデートを見つめ続けていた心菜は、帰り際には、もう意気消沈してしまっていた。
「あちゃー、久遠には刺激が強すぎたかー!!」
「う~ん、………ここながうぶなのは知っとったけど、ここまでとは………」
「………2人して、ちょこちょこディスるのやめてくれる?」
はあーっというため息をついて床にしゃがみ込んだ心菜は、今日だけで早10回の喧嘩を止めていて、もう正直に言って歩いて帰る気力すら残っていなかった。
「ゆーなちゃん、今日は先帰っといて。もう何だか、色々疲れた………」
「ん、了解」
去っていくケンカップルの背中を見つめた心菜は、公園のベンチに背中を預けて座り、目の上に手を置きながら、小さな吐息をこぼす。
「………“恋”って本当に、わからない」
無意識のうちの呟きは、空中に浮かんで、はらはらと桜の花びらのように散っていく。
だからこそ、心菜は次の瞬間、肩を大きく上下させた。
「マジでそれな~」
「!?」
聞きなれた声優顔負けの澄んだ声に、心菜はばっと起き上がる。
「ど、どどど、どうしてここにいるのよ!?」
「ん?ここにいるから?」
「いや、答えになってなくない!?」
ケラケラと軽快に笑っているのは、立花 颯。優奈のつい先日までの、恋のお相手だ。本当に、恋多き優奈にしては珍しく、3年近く好きなままで追っかけてきたとは思えない切り替えの速さで、優奈は立花ではなく大鷹に告白した。
「………寂しそうじゃないんだね」
「ん?まあね」
「ずっと好きでいてくれた子に対して、ちょっと冷淡すぎない?」
「………じゃあ、久遠は友だちだって思ってたやつにいきなり好きだって言われて、好きになれる?」
「いや?多分、………ううん、分かんないや。だって私、恋愛経験ないし」
立花が差し出してきた冷たい缶のココアを受け取りながら、心菜は困ったように笑った。
中学3年、普通の子ならば恋の1つや2つ。挫折の3つや4つしているくらいの年齢であろうが、心菜は未だかつて、“恋”というものを体験したことがなかった。
(恋なんて必要ない。必要なのは、信頼のおけるお友だちだけ。私には、“恋”なんて要らないの)
心の中で言い聞かせて、心菜は立花の方を向く。
最近、気になって仕方がない、彼の方を。
********************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「あちゃー、久遠には刺激が強すぎたかー!!」
「う~ん、………ここながうぶなのは知っとったけど、ここまでとは………」
「………2人して、ちょこちょこディスるのやめてくれる?」
はあーっというため息をついて床にしゃがみ込んだ心菜は、今日だけで早10回の喧嘩を止めていて、もう正直に言って歩いて帰る気力すら残っていなかった。
「ゆーなちゃん、今日は先帰っといて。もう何だか、色々疲れた………」
「ん、了解」
去っていくケンカップルの背中を見つめた心菜は、公園のベンチに背中を預けて座り、目の上に手を置きながら、小さな吐息をこぼす。
「………“恋”って本当に、わからない」
無意識のうちの呟きは、空中に浮かんで、はらはらと桜の花びらのように散っていく。
だからこそ、心菜は次の瞬間、肩を大きく上下させた。
「マジでそれな~」
「!?」
聞きなれた声優顔負けの澄んだ声に、心菜はばっと起き上がる。
「ど、どどど、どうしてここにいるのよ!?」
「ん?ここにいるから?」
「いや、答えになってなくない!?」
ケラケラと軽快に笑っているのは、立花 颯。優奈のつい先日までの、恋のお相手だ。本当に、恋多き優奈にしては珍しく、3年近く好きなままで追っかけてきたとは思えない切り替えの速さで、優奈は立花ではなく大鷹に告白した。
「………寂しそうじゃないんだね」
「ん?まあね」
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「………じゃあ、久遠は友だちだって思ってたやつにいきなり好きだって言われて、好きになれる?」
「いや?多分、………ううん、分かんないや。だって私、恋愛経験ないし」
立花が差し出してきた冷たい缶のココアを受け取りながら、心菜は困ったように笑った。
中学3年、普通の子ならば恋の1つや2つ。挫折の3つや4つしているくらいの年齢であろうが、心菜は未だかつて、“恋”というものを体験したことがなかった。
(恋なんて必要ない。必要なのは、信頼のおけるお友だちだけ。私には、“恋”なんて要らないの)
心の中で言い聞かせて、心菜は立花の方を向く。
最近、気になって仕方がない、彼の方を。
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