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113 心菜は傷つかない

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「へえ?意外」
「そう?結構有名だと思うんだけど」

 小学校の頃から、男子には興味がなくて、常に女の子のみのところで行動していた。男の子なんて信用ならない。そういう思考を持っていた心菜は、優奈が男の子とつるむ時以外は、極力男の子と関わらないようにしてきた。
 小学校の低学年で、告白されたからという理由でいじめられ、中学年の時に、誰だったかは覚えていないが、心菜のことが好きだと大量に噂を流してきたお馬鹿がいて、高学年の時には、中学年の頃にあったことがぐしゃぐしゃに絡まり合って、男好きとまで言われるようになってしまった。実際にそう言っていたのは、心菜に意地悪をしてくる連中だけだったが、お陰で告白すれば誰とでも付き合う女というレッテルをいつ間にか貼られてしまっていた。
 まあ、結局心菜は誰とも付き合わなかったが故に、噂はデマであったと、すぐに周知の事実になったわけだが。

「………小学校の久遠の噂?」
「そう。やっぱり知ってるんだ」
「………一時期大量に流れてた」
「へえ?やっぱり、まだそういうこと言う子、残ってるんだ」

 ショックも何も感じなかった。中学3年になって2人はふったから、そういうことをそろそろ言われる頃合いではないかと疑ってもいた。だからこそ、あぁ、やっぱりねとしか思わなかった。思えなかった。

「………傷つかないのか?」
「傷つくなんて段階、もうとっくの昔に終わっているわ。だって、慣れてるもの」

 ーーーカコっ、

 夕焼けに染まった真っ赤な空を見上げて脚をぶらぶらとさせた心菜は、もらったココアの缶を開けて、1口のココアで喉を潤した。

「………あまいな」
「? 甘いの、好きじゃなかったか?」
「大好きだよ。でも、なんとなく、今は苦い心情だから、いつもよりもあまく感じるのかも」

 くあっとあくびをして、ふわっと立花に笑いかける。

「ありがとう、ココア。私、ココア大好きなんだ」
「ここなだけに?」
「あれ?私の名前知ってたの?」
「いや、逆になんで知らないと思うわけ?」

 キョトンとした表情をした立花に首を傾げ返した心菜は、至極当然のことを述べるかのように、スラスラと言葉を発す。

「だって、呼ばれたことないもん」

 絶句した立花になおのこと首を傾げた心菜は、不思議そうに問いかける。

「どうしたの?立花たちばな そうくん」
「………いや、なんでも。そろそろ帰ろうぜ。暗くなる」
「ん、そうだね」

 のんびりと立ち上がった2人は、隣り合った影を移しながら、各々の家に帰宅した。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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