小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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114 地獄の準備

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▫︎◇▫︎

 文化祭。
 それは怒涛の忙しさを誇る、学校行事の1つであり、生徒に最も人気がある行事と言っても過言ではないほどの楽しさを誇る、学校行事である。

「ここな!!そっちの準備終わった!?」
「ま、まだあ!!ゆーなちゃんは?」
「こっちもまだ!!」

 悲鳴のような怒声が響き渡る教室。心菜のクラスでは、出し物で簡単なゲームを行うことが決定していたのだ。その名も的当てゲーム。ただ単に、的に柔らかいボールを当てるだけの、いたって簡単すぎるゲームだ。だが、だからこそ奥深いということを、心菜は子の準備期間で嫌というほどに理解、実感していた。

「的のサイズ小さすぎない!?もっとおっきくしたほうがいいと思うよ!!」
「いやいや、デカすぎんだろ!?もっと小さくしようぜ!!」

 この通り、的のサイズ1つで喧嘩が起きるほどに、この的当てゲーム、奥が深いのだ。

「だーかーら!クズな男子どもは黙れっつってんだろ!?不器用なくせして出しゃばってくるとか、何様のつもり!?」
「あぁん?そっちこそ、『いやぁ~ん。重いものなんて、もちたくなぁ~い!!』とか可愛い子ぶって、重いもの運ぼうとしてねーだろーが!こんの、貧弱女子どもが!!」
(………面倒くさい)

 奥深いゲームゆえに起こる討論、そして、どうでもいい言葉の応酬。心菜はげっそりとした心地で息をつきながら、学級委員になってしまったが故にやらなくなってしまった、まとめ係として喧嘩の仲裁に入っていく。

「………時間がないから、今現在適材適所で動いているのです。喧嘩をしている暇があるのならば、その喧嘩時間で、的の1つや2つ。作っっていただけると嬉しいのですが」

 にっこりと笑って言った途端に、逃げるように作業に戻っていく人たちの背中を眺めながら、初日に思いっきり怒鳴っておいた効果があったと、小さくため息をつく。

「よっ!。ご機嫌麗しゅうございますか?」
「全く麗しくないわね。というか、いい加減その呼び方やめてくれる?壊滅的な不器用さん」
「うわっ、酷い言いよう」

 早くも的を5つはダメにした立花を軽く睨みつけた心菜は、もう起こるのも疲れたとばかりに、次の瞬間には脱力した。

(あぁー、お風呂に入りたい)

********************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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