小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

文字の大きさ
125 / 144

124 疲れ切った2人

しおりを挟む
▫︎◇▫︎

『生徒会は、これより、文化祭の開催を宣言します!!』

 ひび割れたスピーカーから響く声に、クラス中、否、学校中から歓喜の声が上がった。ものすごい音量に、心菜は耳を押さえてぎゅっと目を瞑った。耳がキーンとしてしまって、とてもうざったい。
 心菜は目の下の隈をごしごしと擦ってあくびをしながら、隣に座っている彼に話しかけた。

「いよいよ、か………」
「死ぬほど疲れたな」
「同感」

 そんな中、心菜と立花は、げっそりとした顔で教室の端で椅子に腰掛けていた。眠たい2人の声は、心なしかとても穏やかだ。けれど、言葉や言動には、苦々しいものが混ざっている。

「足りない準備物に、計算の合わない予算のレシート。アクリル絵の具で汚してしまった教室の床の地獄の清掃に、間違えまくっていた色々な準備物。死ぬほど後処理で頭を下げまくったわね」

 文化祭の裏で毎年起こる、子供たちのいろいろな準備物の買い忘れや、買い物班がこっそりと買ったおやつによって合わなくなった予算の返金、工作によって起こる教室汚しや、備品の破壊。今年文化祭の実行委員に入ってしまった心菜は、ここ数日で、いろいろな人間の雑な行動やルール違反な行動によって、ひたすらいろいろなところに謝罪に回っていた。

「はははっ、昨日の夕方だけで10人の先生に頭下げにいったよね~」
「えぇ、お金はちゃんとどうにかなったけれど、備品を壊しちゃったのがやばかったのよね………」

 今年は、まさかの備品壊しでやばいものを壊してしまったのだ。せめて、自分の時ではない時に壊して欲しかったとため息を吐きながら、心菜は無惨に壊れてしまった糸鋸を思い出す。ぽっきりと刃が折れてそれをどうにかしようとした糸鋸はもう修繕不可能なレベルだった。
 学校にたったの5台しかない糸鋸の破壊は、先生だけでなく、他のクラス全部にも謝罪に行かないといけなくなってしまった。なぜなら、どのクラスも糸鋸を使いたくて、順番待ちをしていた中で5台しかない糸鋸のうちの、1番の最新式で切れ味が良いものを壊してしまったからだ。これが、学校創設時近くからあるオンボロ号なら壊しても怒られなかっただろうが、今回壊してしまったのは立ったの3年前に入ってきた、超新品の品だ。

********************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

会長にコーヒーを☕

シナモン
恋愛
やっと巡ってきた運。晴れて正社員となった私のお仕事は・・会長のお茶汲み? **タイトル変更 旧密室の恋**

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...