《完》ようこそ、願い叶える『あやかし書堂』へ

桐生桜月姫

文字の大きさ
11 / 19

1人目のお客様 11

しおりを挟む
「……。これである程度納得してもらえたかしら?」

 雅楽は感傷に浸っているかのような揺尾に対して平坦な感情の感じられない冷たい声音で話しかけた。手を重ねて真っ直ぐに姿勢良く立つ姿は育ちの良さを強調していた。

「あぁ、だが我はそなたに対しては好意的だが、未だにニンゲンが嫌いだ。それは変わらない。だが、初めから攻撃的な態度で接しないないということだけは、説得してくれたそなたに免じて約束するとしよう。」

 揺尾は不機嫌を隠さない表情でだけれど、堂々と宣言した。

「誓約書でも書きます?」

「はぁー!?…ーーか、書かんわー!!というか、そもそも誓約書なんかそんなもの要らんわー!!」

 名案と言わんばかりにポンと手を叩きながら雅楽が提案したこと揺尾は怒鳴りながら一蹴した。

「あら、酷い。」

「そなた全く酷いと思っておらぬだろー!!」

 キーン、クラクラとするような凄い叫び声に雅楽は思いっきりぎゅぅっと顔を顰めた。

「……うるさいわね。その無駄口しか叩けない能無しのお口を縫い付けて差し上げましょうか?」

「結構だ!!」

「………ふふふ、はは、あはははあ………!!」

 雅楽はついに耐えきれなくなったと言わんばかりに爆笑し始めた。口元にてを当てて笑い転げる姿はとても可愛らしかった。

「そなた、こ、この、この知を司る賢き我を図ったな!?」

「……あなた賢い?」

「はぁー!?あまりにそれは酷くないか?」

 揺尾の悲痛な声が『あやかし書堂』にこだまして響き渡った。
 ビクッと本が怖がるように震えて、揺尾から逃げるためか雅楽の後ろにみんな隠れた。ふわふわビクビクと不安気にふりぇたり、揺れたりする本達は何故かとても庇護欲をそそる光景だった。

「……うるさいからいい加減に叫び倒すのをやめてくれるかしら?不愉快だし、何よりあなたの部下たる本達が相当に怯えているわ。あー、あと、私の会話の意図と裏について気が付けなかった時点で私にとってあなたはお馬鹿さんよ。」

 手をパッと広げて本を庇いながら雅楽は美しい眉を顰めて揺尾を見やった。

「な!!我は感情の機敏に疎いだけだ!決して馬鹿ではない。」

 少し落ち着きを取り戻した揺尾は、動揺を隠せない様子ながらも叫ぶことはやめた。

「あ、そ……。」

「……そなたは本当に我に興味が無いのだな……。」

「……それが何?
 ……ーーー……ーーーーーーー……。」

 雅楽の後半の言葉は、全て本の立てた雑音と、不可思議なモヤによって揺尾には一切聞き取れなかった。

*******************

読んでいただきありがとうございます♪♪♪

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

身分違いの恋

青の雀
恋愛
美しい月夜の晩に生まれた第1王女ベルーナは、国王と正妃の間に生まれた初めての娘。 権力闘争に巻き込まれ、誘拐されてしまう。 王子だったら、殺されていたところだが、女の子なので、攫ったはいいものの、処理に困って、置き去りにされる。 たまたま通りすがりの冒険者家族に拾われ、そのまま王国から出る。 長じて、ベルーナの容姿は、すっかり美貌と品位に包まれ、一目惚れ冒険者が続出するほどに 養父は功績を讃えられ、男爵の地位になる。 叙勲パーティが王宮で開かれ、ベルーナに王子は一目ぼれするが、周囲は身分違いで猛反対される。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

断罪された薔薇の話

倉真朔
恋愛
悪名高きロザリンドの断罪後、奇妙な病気にかかってしまった第二王子のルカ。そんなこと知るよしもなく、皇太子カイルと彼の婚約者のマーガレットはルカに元気になってもらおうと奮闘する。  ルカの切ない想いを誰が受け止めてくれるだろうか。  とても切ない物語です。  この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。   

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

処理中です...