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青野 史美子(あおの ふみこ)編
#2 直人くんがやってきた
しおりを挟む新しく入園した直人くんがやってきた。
直人くんのお母さんが
「先生のいうことしっかり聞いて良い子にしてるのよ」
と言って額から汗を垂らした。
外はとても気温が高いのに自転車に子供を乗せて来ていた。
「うっ…う…うぇーーん!!」
直人くん急に泣き出した。困惑してるんだろうなー。
よし、先生頑張るぞー。
「なおとくん、ママはお仕事に行っちゃうから先生とみんなで遊ぼうね!」
なんて嫌そうな顔しているの。可愛いっ。
「なおとくん」
「…なぁに?」
「先生とブロックして遊ぼうよっ」
満面の笑みで直人くんがこっちを振り向く。
ブロックが好きみたいだね。よかった。
「うん!あそぶ!」
「じゃあいっしょに取りに行こっか」
「はーい!」
お母さんにとても愛されてる子なんだろうな…。
私も負けないくらい頑張らないとっ。
「いっしょに運んでくれてありがとぉ~なおとくん力持ちだね」
「えへへ、いつもママのお手伝いしてるもん」
この子はお母さんの事が好きで
自分からお手伝いする子だ。
私なんかよりずっとしっかりしてる子。
「センセ~もうつくっていーい~?」
「うん、いいよ~」
作り始めて5分くらいして周りの子供達が群がってきた。
「ぼくもつくるー!」
「わたしもおうちつくるー!」
あ、直人くんの表情が曇った。
さあ、どんな反応するかなー?
「まって!これぼくがあそんでるの!とらないで!」
あら、ケンカになりそう。
せっかくだからみんなと仲良くなるキッカケを作ろっと。
「ねー!みんな!なおとくんね今日、初めてここに遊びに来たんだよ~」
「ほら、なおとくんもまずはあいさつからだよっ」
「あいさつー??」
挨拶を掛け合うだけでも
お互いコミュニケーションを
とれるような気がしてる。
私がとても大切に心がけていること。
これだけでもできれば相手との距離感が縮まるの。
「あいさつって言うのはお友だちと仲良くなるための魔法だよっ。まずはみんなから言ってみよっか」
「は~~い!」
みーんな、元気な子達。
ものすごく元気をもらえる。
「せーのっ」
「なおとくん、こんにちはっ!!」
直人くん、すごくびっくりした顔してる。
見てるみんなはニヤニヤしながらも暖かい視線を送る。
「ほらっ、なおとくんも言ってみて」
さあ、勇気を振り絞って…。
「こんちにはっっ!!」
よく出来ました!えらい。
「なおとくん、がんばったね」
「なおとくん、これでみんなとお友だちになったからみんなであそんでみたらどう??」
「…うん!」
これでみんなと打ち解けられたかな?
キッカケを作った私。ナイスっ。
「なおとくん、いっしょにあーそぼっ!」
「いいよー!」
直人くんの周りにブロックで遊びたがってた弘樹くんと美雪ちゃんが話しかけていた。
“やんちゃな男の子”と”可憐な美少女”に囲まれる”優しい男の子”。
なんて三角関係になりそうな3人なんだっ!
「なおとくんって、なにつくれるのー?」
「おしろ!!」
「すごーい!わたしもいっしょにつくってもいーい?」
「うん!いいよー!」
3人共もう打ち解けた感じだね。
もう先生の出番はないかな?
子供は純粋ですぐなんでも吸収するし、
なんでも挑戦する。
今の大人が見習わないといけない精神。
精進。私も精進しないと!
「センセー!いっしょにあそぼー!!」
「先生も一緒に遊んでいいのー?」
「うん!おしろつくろー!」
「じゃあお手伝いするねっ」
子供達に呼ばれ一緒に作ることになった。
初めて子供達と遊ぶなぁ。
今日入社したばかりなのにもう子供達に虜になった。
「かんせい!!」
子供達の発想は凄かった。
しっかりと間柱を立て壁を作り屋根がバランス良く付いている。
見た目はお城ではなくカラフルな小さなお家だった。
「なおとくんはいろー!」
「うん!」
ブロックのほぞ穴同士で組み立てているので
お城の外からでも隙間から子供達の姿が確認できる。
直人くんを中心に座って両脇の2人は満足そうな笑みを浮かべている。
そんな中、直人くんは2人に尋ねた。
「ふたりのおなまえはなんていうの??」
「ぼくは こばやし ひろき です!!」
「わたしは さとう みゆき です!!」
「ぼくは さえき なおと です!!」
「よろしくね!」
将来この子達はずっとお友達でいるんだろうなぁ。
私も混ぜて欲しい。
でも、私はこれ以上は深入りしない。
子供達には子供たちの世界があるんだから、
私は私の世界で生きなきゃ!
よーし、がんばるぞー!
海が峰保育園 新人
青野史美子
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